ちゃんみな インタビュー「アルバム『Naked』ができたことは私のなかで信頼が生まれた証」 | Numero TOKYO
Interview / Post

ちゃんみな インタビュー「アルバム『Naked』ができたことは私のなかで信頼が生まれた証」

自身初の単独アリーナ公演となる「AREA OF DIAMOND」を横浜アリーナで行ったちゃんみな。ルッキズムについて歌い、同世代のオピニオンリーダーとして広く支持されるきっかけとなった代表曲「美人」のパフォーマンスの際には、多種多様な女性がネイキッドな姿を披露するなか、ちゃんみながメイクを落とすという展開があった。人は飾らなくてもダイヤのように美しい──2018年からスタートしたワンマンライブ「THE PRINCESS PROJECT」を2021年の日本武道館公演で終了させ、横浜アリーナから「AREA OF DIAMOND」をスタートさせたちゃんみなの想いが凝縮された前代未聞の演出だ。4月26日に、新たに立ち上げたレーベル「NO LABEL MUSIC」からルーツでもある韓国語と英語と日本語を織り交ぜたグローバルなアルバム『Naked』をリリース。音楽はあらゆるボーダーを超えるということを体現するちゃんみなに聞いた。

オーディエンスとの絆が深まったアリーナ公演

──初の単独アリーナ『AREA OF DIAMOND』が本当に素晴らしかったです。どんなライブにしようと思っていたんですか?

「2018年から『THE PRINCESS PROJECT』と名付けたワンマンライブを全部で6公演やってきて、2021年の武道館でファイナルを迎えました。そこで、『次はクイーンなのかな』とか私の楽曲のタイトルにもある『キングに行くのかな』と予想していた方もたくさんいらっしゃったんですが、私としてはもっと広い意味を持たせたかったんです。『美人』の歌詞に『ダイヤモンド』っていうワードが入っていますが、私のなかでダイヤモンドってすごくピュアなもの。原石の時点で綺麗だけど、磨かれるとどんどん美しくなっていくところが私が伝えたいメッセージとリンクしていると思いました。あと、ダイヤって運気的に幸せも不幸も二倍になるという意味合いがあるんです。そこからもインスパイアされて『AREA OF DIAMOND』というコンセプトを作り、ライブに臨みました」

──日本でラップをエンターテインメントに昇華するパイオニアとして奮闘されてきたわけですが、初のアリーナ公演を成功させたことでご自身がやってきたことへの確信は強まりましたか?

「終わった直後はこれまでにないぐらいの達成感を感じました。『THE PRINCESS PROJECT 5』のときからコロナ禍になり、オーディエンスが声を出せなくなりました。そのまま武道館を迎え、声を聞けずに終わったことでやり切った感がなかったんですね。横浜アリーナではやっとみんなの声が聞けたことも大きかったです。あと、横浜アリーナが決まったときは正直私も事務所のスタッフも『ちゃんと埋まるのかな』と不安に思ったところもありました。でも、驚くぐらい早いタイミングでチケットが売り切れたんです。直接、私のメッセージを聞きたいと思ってくれる人がこんなに増えていたんだという自信をもらいました。『こんなに人が来てくれるんだったら私は何を伝えればいいんだろう?』というプレッシャーを感じたところもありましたが、そのとき感じた『もっと私のメッセージが心の深い部分まで届いてほしい』という気持ちが達成できたと思います」

──「美人」の演出で、多種多様な体型をした女性がネイキッドな姿を披露するなかでメイクを落とす演出はいつ思いついたんですか?

「『THE PRINCESS PROJECT – FINAL -』のときには思いついていました。今思えば、その流れで『Naked』っていうアルバムが生まれたんだと思います」

──もっと広い世界に行くためには、ネイキッドな表現に進むべきだという想いがあったのでしょうか?

「そうですね。私の中ではオーディエンスとのリレーションシップが深くなった実感がありました。昔から自分のことを理解されないのが嫌で、それに対してすごく敏感に反応する性質があって。母親とのケンカの原因もいつも『本当の私をわかってくれていない』っていう理由でした。その気持ちは少なからずオーディエンスにも向いていました。例えば、曲に落とし込んだメッセージが私の解釈とは違う内容で受け取られていたり、メイクも濃いし髪の毛も派手なので『明るくてノリがいい人でしょ?』というテンションで絡まれたり。高校生ラップ選手権で注目されて“JKラッパー”として現れたので、女子高生というキャピキャピ感とラッパーというイケイケ感が合わさって、ほとんどの人が私をそういうキャラクターとして扱っていたのがすごく嫌でした。例えば、『ラッパーだから歌は下手なんじゃないか』とか、ヒップホップファンの方からは『ラッパーなのになんで歌うんだ』っていうことも言われて、『私は私なんだ』っていう気持ちが人一倍強かったと思うんです。だからトゲトゲしていて、それが『Doctor』という楽曲や、『I’m a Pop』の『私はポップでもあるしロックでもある』っていう歌詞に出ていたと思います。

最近、本当の私の気持ちがようやく届いた実感が得られたんです。そして、私のことをちゃんとアーティストとして見てくれる人が増えた。例えばこうやってインタビューをさせていただいてるときも、昔は私に対して『こうですよね?』っていう少し決めつけたようなアプローチで聞いてくる人が多かったんですけど、今は『どうだったんですか?』っていう風にリスペクトが感じられる聞き方をしてくれる。ありがたさを感じると同時に、その変わり方に気持ち悪さも感じていました。オーディエンスの数によって変わったのか、もしくは私の態度によって変わっているのかわからないなって。今思えば誰だって下積みの時代はあるから仕方ないところもあるし、本当の私が無視されたところから始まったこともあるので、経験して良かったなと思います。そして、昔から私のことを応援してくれていた子たちにとても深い愛を感じたんです。

私はこれまでサマーソニックに何回も出させてもらっているんですが、去年のサマーソニックのステージに上がったときに、たくさんの人が私がステージに上がった瞬間に手のひらを見せてくれました。初めてサマーソニックに出たときは、ちゃんみなっていう存在に対して手のひらを見せることがちょっと恥ずかしかったところもあったと思うんです。でもいまはみんなが何の迷いもなく手のひらを見せてくれている気がして、衝撃を受けました。同時に、昔から私を応援してくれている子たちに対して、私のことを理解していない人たちがいるなかで手のひらを見せ続けてくれたことに感謝の気持ちがこみ上げました。その頃からオーディエンスに心を開くようになったんですよね。武道館のときは元々喋るのが苦手ということもあってMCも堅苦しかったんですけど、横浜アリーナではすべてをさらけ出せました。『Naked』っていうアルバムができたことも、私のなかで信頼が生まれた証だと思っています」

──これまでのライブではゲストを呼ぶことがあまりありませんでしたが、横浜アリーナではSKY-HIさん、ASH ISLANDさん、Awichさんと複数のゲストを招いていたこともオープンな気持ちの表れだと感じました。

「本当にそうだと思います」

お互いに共感し合いリスペクトする
思いから生まれたAwichとのフィーチャリング曲

──Awichさんとは『Naked』に収録されている「美人 (Remix) feat. Awich」をパフォーマンスされていましたが、2年前の曲をAwichさんをフィーチャリングして改めてリリースしようと思ったのは?

「実は最初に『美人』を出すときにお声がけしていたんです。私の最初のアルバム『未成年』に入っている『未成年 Feat.めっし』ではすごく仲の良いラッパーのめっしがフィーチャーされていますけど、あれはメジャーデビュー前からあった曲。SKY-HIとはダブルネームで『Holy Moly Holy Night』を発表しましたけど、フィーチャリングという形は『未成年 Feat.めっし』以来やっていなかったんですよね。つまり、メジャーデビュー以降の最初のフィーチャリング相手としてAwichに声をかけていました。でもその時はタイミングが合わなくて。そのあとふたりで食事に行ったときも、『一緒にやらないっていう選択肢はお互いないよね』『じゃあ、いつにする?』と話し合ったりしてて、今回実現した形です」

──約一年前にリリースされたAwichさんの「どれにしようかな」の歌詞には「世界を目指すちゃんみな」というラインがありました。あの歌詞を聞いたときはどう思いましたか?

「すごく嬉しかったです。日本のヒップホップシーンはすごく狭くて、そのなかで女性である私とAwichは度々比べられてきました。私たちはどっちが勝つとか負けるとかっていう気持ちで音楽をやっていないので、比べられることに対してお互い微妙な気持ちを感じてきたんじゃないかと思うんです。『どれにしようかな』がリリースされたときにはさっきお話しした『一緒にやらない選択肢はない』という気持ちを共有していた。Awichが歌っていることにはとても共感を覚えますし、彼女は深く傷つきながらも戦い、いろんなものを引っ張っていってる。私もそうでありたいと思っています」

──横浜アリーナの本編ラストで披露された「I’m Not OK」について、「コロナ禍になり、私は大丈夫じゃなかった。大丈夫じゃないと言ってもいいと気付いた曲」と説明されていました。この曲をライブの本編ラストとアルバムのラストにしたことについて、どんな想いがありますか?

「どう聞いても大丈夫じゃない曲を歌っているのに、それまでの私は高らかに『大丈夫じゃない』と言えてなかったんですよね。でも、信頼が生まれたことによって『大丈夫じゃない』と言えるようになったので、ライブの本編はあの曲で締めたかったんです。アルバムは『Good』という曲から始まって、最後が『I’m Not OK』。自分を騙して『大丈夫』と言っていたところから、最終的に素直になって『大丈夫じゃない』という流れになっています。すごく言い方が難しいんですけど、私にとっては大丈夫じゃないことが大丈夫だったんです。何事もなく静かに暮らしてみんなが思うような幸せを掴むことは、24歳の私の性には合わない。アルバムにはいまの私のそのままの姿を詰め込みたかったんですよね。いまの私はほぼ人間性が完成され、向いていることや向いていないことがわかってきている。だけどまだ不器用な部分も残っていて、ときにはヒステリックになることもあります。だからいまの私にとっては『I’m Not OK』の状態でいることが良いことなんです」

──「I’m Not OK」はサウンドとしてはちゃんみなさんの楽曲としては珍しくラウドなロック調です。どんなイメージがあったんでしょう?

「『I’m not ok!』って叫びたかったんです。私は感情に合わせてサウンドの方向性を考えているので、この感情にはこういうラウドなサウンドが合うなと思いました」

本来の音楽性を体現したアルバム『Naked』

──前作の『ハレンチ』は次作が海外に照準を合わせた作品になることを見越して意識的にJ-POPに寄せた作品でしたが、『Naked』はまさにグローバルなアルバムになっていますよね。

「だから『Naked』が私の本来の音楽性ですよね。音の変化に伴い、歌もラップも変わっていきました。おそらく一年前だったら『I’m Not OK』や『Mirror』みたいなロック調の曲は歌えなかったと思うんです。歌唱力がどんどん付いていったので、いまなら歌えると思ってこういう曲をやりました」

──インタールード的な「444」では韓国語と日本語の会話のなかで、「何語でもいいか 音楽だから」というセリフが聞こえてきます。ちゃんみなさんの信念がそのまま具現化されているような気がしました。

「『444』は横浜アリーナでバイオリンを弾いてくれた従姉妹と私の実際の会話が使われているんです。私が久しぶりに韓国に行って従姉妹と再会して、夜中の4時44分に二人で『なんか歌ってみようよ』ということになり、ボイスメモで録った音源そのままです。その従姉妹とは、私が韓国から日本に移り住んで韓国語を忘れていってしまうなかでも、音楽を通してセッションする関係で。『444』では私が韓国語で『何語で歌おうか? 何語でもいいか。音楽だから』って言って歌うやりとりが収められていますが、『何語でもいいから歌って』っていう風に私の歌声を求めてくれるということは、まさに私が音楽に求めていることなんですよね。ここで歌っている曲の歌詞も、英語でも韓国語でも日本語でもなく、何語でもない。このアルバムを物語っていると思いました」

──横浜アリーナ、そして『Naked』から始まった「AREA OF DIAMOND」ではどんなことを成し遂げたいと思っていますか?

「メッセージって鋭いだけじゃなく、刺す意味がないとダメだと思っています。最終的に何をどう伝えて刺すか。私がやっとみんなのことを信頼できて、その私の声をみんなに聞いてもらえるようになったからこそ、どんなことを伝えるかをよりしっかり考えていきたいと思っています」

2021年10月に3rd Full Album『ハレンチ』をリリースし、日本武道館単独公演を成功させ、2022年には“THE FIRST TAKE”でのパフォーマンスが話題となり、同年9月に全編韓国語楽曲「Don’t go(feat. ASH ISLAND)」「Mirror」をWARNER MUSIC KOREAよりリリースした。そして約1年半ぶりにリリースとなる4th Full Albumのタイトルは、ジャケットカバーでも体現されている『Naked』。日本語のみならず、彼女のルーツでもある韓国語や英語を織り交ぜた全17曲を収録しており4月26日(水)にCD&デジタルリリース。

アルバム『Naked』発売中
¥2,750(税込)
URL/https://chanmina.lnk.to/naked


Photos:Takao Iwasawa Stylist:Risa Kato Make:Yuko Nozaki Hair: Yuta Kitamura Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Naomi Sakai

Profile

ちゃんみなCHANMINA 日本語、韓国語、英語を巧みに操るトリリンガルラッパー/シンガー。2017年メジャー・デビュー。2019年 2ndフルアルバム『Never Grow Up』を発売。収録されている「Never Grow Up」は2021年7月に総ストリーミング回数が1億回を超えた。10月には3rdフルアルバム『ハレンチ』をリリースし、同月に日本武道館での単独公演も成功させた。2022年9月には自身のルーツでもある韓国にて全編韓国語楽曲「Don’t go (feat. ASH ISLAND)」をリリース。2023年3月21日(火・祝)には、自身最大規模となる横浜アリーナにてワンマンライブを実施。YouTubeでの全映像の総再生回数は3億回とストリーミング・サービスやSNSでの強さを誇る。10代~20代を中心に圧倒的な支持を受ける、国内外問わず、今最も注目されているZ世代アーティストの一人である。

Magazine

JULY/AUGUST 2024 N°178

2024.5.28 発売

Summer Is Coming!

夏とわたし

オンライン書店で購入する