ちゃんみなインタビュー「音楽は自分の表現したいものをやっていかないと意味がない」 | Numero TOKYO
Interview / Post

ちゃんみなインタビュー「音楽は自分の表現したいものをやっていかないと意味がない」

日本語と韓国語と英語を自在に操るトリリンガルラッパー/シンガー、ちゃんみなが今夏を目途に韓国での活動を本格化する。常々「音楽に国境はない」と口にし、海外進出を視野に入れた活動をしてきたちゃんみなに、今後のヴィジョン、そして、昨年リリースした「美人」でルッキズムについて歌い、同世代のオピニオンリーダーとしてより支持を集めるようになった現在地について、訊いた。

幼少期から描いていた海外進出への思い

──昨年リリースしたサードアルバム『ハレンチ』は意識的にJ-POPに寄せた作品でした。それは海外進出への布石だったのでしょうか?

「海外進出に対して動き始めていた時期だったので、あえて新曲を全部日本語タイトルにしたり、J-POPに寄り添ったものをやりたいと思ったんです。前からJ-POPはやりたいと思ってたんですけど、本当にやりたいと思えるぐらいのリスペクトを持てるタイミングでやろうと思っていて、その時期が来たという感じでした」

──ちゃんみなさんは韓国で生まれて、アメリカに住んだこともありますが、いつ頃から海外での活動について考えていたんでしょう?

「今まで私が心を打たれた作品はすべて私の血となり肉となって私を作り上げていると思うんですが、そういう作品は圧倒的に韓国やUSの作品が多いので必然だと思っています。小さい頃から歌手になりたくて、小学校一年生の頃にたくさん時間があったこともあって、『どうしたらなれるんだろう?』『どういう活動をしたいんだろう?』ってことを突き詰めて考えて、死ぬまでの予定表を作ったんです(笑)。そこからはその予定表を大事に守るのが習慣になって、いつの間にかそれが人生になっていった。その予定表に武道館が終わったら海外に行くっていうのも入っているんです。なので、昨年の武道館の後は海外だと自然と思ってました」

──まず高校生ラップ選手権で注目されたわけですが、そこからメジャーアーティストとなって、順調にステップアップすることができた理由を自己分析すると?

「客観視できてるっていうところと先を見ながら生きてるっていうところですね。私は『どうやって死にたいか』っていうことをテーマに生きてるんです。『どうやって生きていきたいか?』っていう質問があまり好きじゃなくて。生き方って変えられるから迷いも出てくる。でも『どうやって死にたいか』を最終目標にするとそこから逆算すると色々見えてきて迷わない。そうすると客観的に自分を見れるようになるし、『待てよ』ってなった時も、『そういえば私ってこういう風に死にたいんだった。じゃあこんなこと気にしないでいいや』っていう判断ができるんです」

──今夏を目途に韓国でリリースが予定されているそうですが、どういうふうに活動したいと考えていますか?

「今まで通り自分に正直に、自分の最終的な死を信じて進んでいきたいと思ってます」

“一人じゃない” ファンは何にも代えられない存在

──同世代のオピニオンリーダーとしての支持もどんどん強まっています。実感はありますか?

「でも街で私みたいな子見ないですけどね(笑)。それこそ昔のアムラーとかみたいな空気感はないので」

──ちゃんみなさんのファッションとかに影響を受けるというより、「好きにやればいいんだ」という精神性にエンパワメントされているんだと思います。

「あ、そうですね。精神的な部分が多いかもしれないです。私もみんな好きにやってほしいと思ってるし。私のファンの子でも見た目とかは私を無視してる子も多いです(笑)。ライブにもいろんな子が来てくれてるので不思議な感覚です。でもライブでみんなの顔を見ると、多分その子が他の誰にも見せたことないであろう顔を私には見せてくれてるって感じるんですよね。『あ、この子が思ってることを私はわかってあげられてる』って。逆もしかりで、私の音楽ってすごく個人的なもので誰にも見せないようなものを出してるのに、それを泣きながら『わかるよ』って聴いてくれるのが私にとっての救い。だからファンは何にも代えられない存在だなと思います」

──最初にそういう感覚を強く持ったのはいつですか?

「初めてのワンマンライブの時です。あの時生まれて初めて『一人じゃないんだ』って思いました」

──2021年にリリースしたEP『美人』で支持が一気に高まったところもあると思いますが、その動きについてはどんなことを考えましたか?

「こんなことを言うとかわいくないかもしれないんですけど予想はしてました。あの曲で書いたことは私の実体験ですけど、込められた思いが強ければ強いほど共感者も多くなるって思ってるし。話題になる/ならないは別に考えてなくて、ルッキズムに悩んでいる方にとって少しでも救いになればいいなっていう気持ちがすごく強かったんです。女性は全員美しいし、見た目を批判する権利は誰にもない。女性だけじゃなく、男性でもルッキズムに対して劣等感を抱いている方もたくさんいますし、LGBTQの方もそう。嫌な気持ちになっている人が多いことはもうみんながわかってる。だから『林檎って赤いよね』って言うぐらいの気持ちで出しました。ただ、MVで首吊りのシーンを入れたんですけど、それに対する反応は予想できてませんでした。もしかしたらすごく批判されるかもしれないし、テレビにも出づらくなるかもしれないし、活動自体ができなくなるかもしれない。でも私自身ルッキズムによってああいうシーンがよぎったし、実際に命を失ってる人もいる。そういう事実があることに対する私なりの主張として入れました。これから先もたくさんの人を救えるような曲になってくれたらいいなと思ってますね」

──結果的に報道番組で取り上げられたりもしたわけですが、それについてはどう思いましたか?

「ああいう広がり方はすごく予想外でした。これは私の偏見だったのかもしれないですけど、煙たがられる楽曲になるだろうって少し思ってたんです。だけどそれは私の勘違いでしたね。もっと世界は優しいし、もっと人間は優しいって思えたきっかけでもあります。あれで超批判されてたら、『あ、もう終わりだ、この世界は』って思っててもおかしくなかった。確実に変わってきてはいますよね」

──改めてご自身の「好きなようにやる」という軸が確認できたところはありましたか?

「ありますね。でもあの曲を書けたのも今の私の周りの人たちがいるからだと思います。ありのままの自分を愛してくれる人たち。例えば、今私は武道館が終わって気が抜けて不健康に食べ過ぎちゃってるんですけど(笑)、それでも愛は変わらないしっていう。私の主義として、私は勝手に好きなことをするんで周りにも勝手に好きなようにしていてほしいんです。その上で関わる/関わらないかを選択し合おうよっていう。私は人の見た目とかファッションとか全然気にしないし、別のものが奥にあるって知っている。だからみんなもっと深い部分にフォーカスしてほしいなって思う。少しでもそうなってほしいから『美人』を書いたのかなって思います」

──「美人」はルッキズムというテーマを持ってはいますが、その奥には「やりたいようにやる」という信念があるわけですよね。

「そう。だから結局自己救済なのかなって思います。強制的に私のことを好きになって欲しいとは思わない。ついていきたい人だけついてきてくれればいいって思います。音楽ってリスナーが求めるものを与えるものじゃないと思いますし。『こういうのみんな好きだろうな』って思うものをMVに取り入れたりすることはあるかもしれないけど、基本的には自分の表現したいものをやっていかないと意味がないと思います」

──最近はどんなことを考えていますか?

「ああ、男性が女性に言うルッキズムより女性が男性に言うルッキズムの方が厳しいし細かいなって。ネイルに行くと隣の部屋にいる人の声が聞こえるんですけど、『あの俳優って、顔のここが残念だよね』って女性が言っててすごく嫌な気持ちになったんです。男性が女性に『デブ』って言ったらダメだけど、女性が男性に『ハゲ』とか『デブ』とか言うのは許されるみたいな傾向は無理だなって。フェミニズムがねじ曲がってるような状況は変ですよね。平等を求めるなら、平等な考えであるべきだと思います。」

後悔したくない、過去一番こだわり抜いた映像作品

──今は3月にリリースされる初の映像作品『THE PRINCESS PROJECT』と『THE PRINCESS PROJECT – FINAL – 』の監修をやられているそうですが、どんなところにこだわって作っていますか?

「もうバカみたいにこだわりました。6日間ぐらい連続で編集室にこもって夜中まで監督と作業してたんですよ。合宿みたいで楽しかったですね。編集室にこたつまで買って貰っちゃって。もう本当にカット1秒1秒も、音の聞こえ方も0.1デシベルに至るまでこだわりました。作品に対するこだわりはめちゃくちゃ強い方なんですけど、今回過去一でそれが出たと思います。『THE PRINCESS PROJECT』を5年くらいやってきて、代官山UNITから始まって、Zepp Tokyoをやって武道館をやった。ちゃんみなのキャリアの中でそういう大事な過程を追った作品が出せるのは1回か2回だと思うので、絶対後悔したくないと思ったんです。ちゃんみなとして発表する作品を最後まで責任を持って作るというのは一番守らなきゃいけないところで。そこは受け手への誠意でもあるし、自分の誠意でもあると思って、時間が許す限りやろうと思ってます」

──ラップを軸に歌もダンスもやって、映像やビジュアルもトータルプロデュースするということを10代からずっとやられてるわけですが、そのスタイルのまま武道館という大きな舞台も成し得たことについてはどう思いますか?

「周りにただただ感謝ですね。でも私が幼い頃から観てたK-POPは全部自分でやるアーティストが多いので当たり前だと思ってたんです。むしろ、『全部自分でやらなきゃいけないんだ? だる!』って(笑)。でもそれが普通だと思ってやってたらいつの間にか日本のアーティストの中では強みになっていた感じですね」

──例えば周囲から「全部やるんだ?」みたいなことを言われたりは?

「なかったですね。最初は結構突っ走ってて『付いてこい!』ぐらいの感じだったので言えなかったのかもしれない(笑)。でも全部をやらせてもらって感謝してます。だって10代のアーティストに任せるのって怖いことだし、勇気がないとできないと思いますし。でも、例え間違っていたとしても、人を納得させられれば正解だと思うんですよね。人を納得させることが人間として成長することに繋がる。私は時には暴走しちゃう時もありますけど(笑)、納得のさせ方をたくさんの先輩たちから学んでこれた。やっぱり人との出会いに感謝ですね」

──人を納得させるために一番大事にしていることは?

「正直であることですね。回りくどい言い方はしない。でもそこで『いや、でもこうだよ』って言ってくれる人ももちろん必要です。そこで何度もぶつかって、信頼関係を築けて一緒に成長していけたから今があるんだと思っています」

「THE PRINCESS PROJECT」
Blu-ray 3枚組 ¥12,980(税込)
DVD 3枚組 ¥11,550(税込)

「THE PRINCESS PROJECT – FINAL – 」
DVD 1枚 ¥4,950(税込)

ともに2022年3月23日(水) 発売

https://chanmina.com/news/detail/502

ダウンジャケット¥140,800 ※裏地の色が異なります オールインワン¥135,300(全てEMILIO PUCCI/エミリオ・プッチ ジャパン) ピアス¥49,500 ブレスレット¥47,300(共に SWAROVSKI JEWELRY/スワロフスキー・ジャパン) シューズ¥240,900(Gianvito Rossi/ジージーアール ジャパン)

Photos:Takao Iwasawa Stylist:Risa Kato Make:Yuko Nozaki Hair: Yuta Kitamura Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Naomi Sakai

Profile

ちゃんみなChanmina 1998年、韓国生まれ。韓国人の母親と日本人の父親の間に生まれ、日本語、韓国語、英語の3ヶ国語を話せるトリリンガル。幼少期より、ピアノ、バレエ、ダンス、歌を始め、作詞作曲のみならず、トラック制作、ダンスの振り付けなど全てをセルフ・プロデュースで行い、アーティスト活動をスタート。2017年、高校在学中に「FXXKER」でメジャー・デビュー。2018年9月、ワーナーミュージック・ジャパンへ移籍。YouTubeでの総再生回数、TikTokでのハッシュタグ視聴回数ともに1億回を超える、今最も注目すべき若手アーティストの一人である。

Magazine

MAY 2024 N°176

2024.3.28 発売

Black&White

白と黒

オンライン書店で購入する