カレン・エルソンに独占インタビュー!
「音楽を書く行為は、自分の真実を語ること」
トップモデル、二人の子どもの母親、ミュージシャンとして多忙な毎日を送っているカレンが振り返る時間とは? 38歳になったばかりのカレンに独占インタビュー。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2017年4月号掲載)
仏版Numéro 2000年5月号の表紙。©Thomas Schenk
──子どもの頃からミュージシャンを目指していたのですか?
「少なくともティーンになる頃には、歌い手になりたいと思っていました。でも若くしてモデルとしてスカウトされ、モデルの仕事がマンチェスターの暗い生活から自分を解放してくれたんです。『モデルじゃなかったらミュージシャンになっていたと思う?』と聞かれると、ちょっとおかしな気持ちになるの。だって、モデルにスカウトされなかったらどんな人生になっていたか想像もつかないから…。モデルになることができて、そして、それが自分の人生になった。
プラダの1998年春夏のランウエイ。©Camera Press/Aflo
ただ頭の奥では音楽をやりたくて、ゆっくりと、しかもこっそりと曲を書いたり、歌ったりしていました。書いた曲をみんなと共有したいという気持ちはあったけれど、その前に、ちゃんとスキルがあるということを確信したかった。だって、モデルとしてすでにたくさんのチャンスをもらっていて、自分の恵まれた状況を利用したくなかったの。だから時間をかけて、ちゃんと腕を磨きたかったんです」
ミュウミュウの2017年春夏キャンペーンヴィジュアル。
──そこからどうやって発表する気持ちになったのでしょう?
「ナシュビルで暮らしはじめて、子どもたちが生まれて、モデルの仕事からもお休みをもらっているときに、音楽に集中する時間と余裕ができました。そして前の夫のジャックが、『なんで隠すんだ?』と強く後押ししてくれて…。誰もが音楽を演奏していて、いつもピースフルなナシュビルでの生活が音楽をやろうという心の余裕を与えてくれた。ニューヨークで仕事をしているときとは正反対。ニューヨークにはエネルギーがあふれているけれど、創作活動するには向かない。ナシュビルはとても静かで、何かを作り出すには最適の場所なんです」
──インスピレーション源は?
「映画を見て得た感覚とか、一日が進んでいく感覚とか、インスピレーションはどこにでもあります。折り合いをつけようとする気持ちとかね」
80年代に戻って。
──作曲はセラピーのようなもの?
「どうなんだろう、わからない。折り合いをつけたり、理解したいと思っていることがまだたくさんあるから。きっとセラピーのような意味もあるだろうと思うけれど、表現でもあるし、口に出していない考えを外へ出しているのかもしれない。そう、きっとそうだと思う。とにかく私はイギリス人だから性格が複雑だし、感情的。音楽を書くという行為は、自分の真実を語ることなのだと思うわ」
──音楽的な影響は?
「今でも若い頃と同じものを聴いています。コクトー・ツインズ、キュアー、ニック・ケイブ、スージー・アンド・ザ・バンシーズ…、聴いてるものは変わらない。ロバート・スミスが大好きです」
2010年にテキサス州で行われたフェスでパフォーマンス。©Retna UK/Aflo
──ミュージシャンであることの一番の喜びは?
「一番難しいのは作曲をすること。いい曲なのかはっきりわからないまま曲をスタジオに持っていって、ミュージシャンたちが演奏すると命が吹き込まれて、すばらしい曲に変貌する瞬間に勝るものはない。録音のプロセスすべてが楽しくて、完成した曲を聴いたときに、自分の頭の中に引っかかっていた存在が命を持つこと。それが素晴らしいと思います」
Photo : Alex Cayley
Interview : Yumiko Sakuma
Casting & Edit : Maki Saito