SE SO NEON(セソニョン)インタビュー「私たちは音楽で人生のある時間を記録している」 | Numero TOKYO
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SE SO NEON(セソニョン)インタビュー「私たちは音楽で人生のある時間を記録している」

ボーカル・ギターのファン・ソユンと、ベースのパク・ヒョンジンによるSE SO NEON(セソニョン)は、韓国の音楽シーンで最重要バンドのひとつ。昨年のSUMMER SONIC 2022の出演や、今年の3月には自らがキュレーションする『Hello, World!』の東京公演で、Awichをゲストに、国境もジャンルもクロスオーバーしたステージを披露し、日本でも注目されている。そこで、彼らの音楽が生まれる過程や、BTSのRMをフィーチャリングしたSo!YoON!のソロプロジェクトについても聞いた。

人生のある時間を音楽として記憶する

──SE SO NEONの曲は、独自の世界観がありながら、新曲がリリースされるたびに新鮮な驚きがあります。楽曲制作のプロセスやインスピレーション源について教えてください。

ソユン「SE SO NEONは、人生の中のある時間を音楽として記録しているんですね。アルバムに関しては、コンセプトが先行するというよりは、それぞれテーマのある曲が集まって、アルバムとして一つの世界を作るという感じです。曲作りのプロセスについても、セッションから生まれることもありますし、フレーズのスケッチのようなものから編曲していったり、アイデアを積み重ねていったりとさまざまです」

──近年の「자유(Jayu)」や「joke!」は、コロナ以前に比べてどんどん力強さが増している印象があるのですが、どんな変化が?

ソユン「シングル曲に関しては、ある意味、実験ですね。コロナの時期は、まず、伝えたいことを曲に託していたのですが、今はそれよりも強さや重さを表現したいと思い、『자유(Jayu)』や『joke!』はそこを感覚的に広げています。ただ、もっと深いテーマを取り上げるべきなのではないかと悩んだこともありましたが、逆に『joke!』は、そこから離れて、急に投げかけたジョークのような表現をしてみました」

──MVもとてもユニークです。ソユンさんは大学時代に映画の勉強をしていたそうですが、SE SO NEONの世界観を作り上げるためには、映像も重要な要素なんでしょうか。

ソユン「専攻ではなかったのですが、勉強はしていました。デビュー当時から、私が映像やクリエイティブのディレクションを担当しているのですが、やっぱり、アーティストは音楽だけではなく、その時代やイメージ、言葉、ヴィジュアル、アルバムのジャケットも含めて1つの作品だと思うのです。ヴィジュアルも私たちの世界観のひとつですし、映像も音楽と同じように一緒に作っていくものだと思っています」

──「joke!」はベルリンの映像作家であるAnuk Rohdeさんや、「A Long Dream」では日本のアニメーション作家の土屋萌児さんを起用されていますね。

ソユン「世界中から、私たちの音楽に合いそうな方を探して会いに行くのですが、どちらかというと、私たちに合わせて作ってもらうというより、みなさんが持つ世界観と私たちのシナジー効果で、偶然的にすごくいいものが完成するという感じです。予想以上のものが完成したときの喜びは大きいですね」

内気な二人が世界を旅し、共感するミュージシャンと音を奏でる「Hello, World!」

──2022年も、北米やアジアの各都市でライブを行い、Japanese Breakfast、Phum Viphurit(プム・ヴィプリット)、Awich、MEYY(メイ)、など世界各地のアーティストとのコラボレーションもありました。海外での経験は、バンドにとってどのようなプラスになったのでしょうか。

ヒョンジン「海外公演は純粋に楽しいんです。仕事をしているというより、純粋に楽しんでいるというような感覚もあって、僕らの精神状態もよくなるし、いい思い出が増えていきます。それが、単純ですけど、まずプラスになったことです」

ソユン「異なる文化圏で公演をしたり、他のアーティストのライブを見ること自体が私たちの新しい経験になります。それから、私もヒョンジンさんも、実はそんなに活動的ではないし、外交的なタイプでもないんですね。だけど、音楽を通して知り合った方々とは、すごくいい交流ができるというか。例えば、韓国に招待して公演をしてもらったり、私たちがその都市に行ってライブをしたり。そのときに、お互いに街を案内したり、美しい友情のようなものを分かち合うことができるような気がしています」

──ライブがパワフルだったので、内気なタイプとは意外でした。

ソユン「ですよね。実はそうなんです(笑)」

──SE SO NEONが主催するキュレーション公演『Hello, World!』の1月のソウル公演、3月の日本公演にもAwichさんが出演していましたが、Awichさんとの出会い、二人が考える彼女の魅力とは?

ソユン「『Hello World!』のコンセプトは、私たちが世界のミュージシャンと出会い、紹介したりされたりするキュレーション公演というものなんですね。ソウル公演は2日間あり、AwichさんやOkay Kayaさん、MEYYさんが韓国に来てくれました。Awichさんとの出会いのきっかけは、日本でMVの制作(公開未定)をした時の堀田英仁監督が、AwichさんのMVも手がけていて。それを見て衝撃を受けたので紹介してもらいました。魅力は、音楽もそうですが、Awichさんそのものがアイコニックであること。ひとことで言えばカッコいい。私たちとジャンルは違うけれど、交差する部分があるんじゃないかと思ってオファーしたら、Awichさんもコンセプトに共感してくださって、快く引き受けてくださったんです」

──ゲスト出演する人のジャンルがさまざまなので不思議に思っていたんですが、その人自身や、その人がもつメッセージが重要なんですね。

ソユン「そうですね。音楽のジャンルがどうかというより、その人が持っている影響力に惹かれたり、私たちが共感することを大事にしています」

──SE SO NEONのライブについて伺います。パフォーマンスは自由でありながら、演奏は完璧にコントロールされていて、観客も盛り上がったり聴き入ったり、それぞれに楽しんでいました。ステージ上での2人の役割は?

ヒョンジン「まず、ライブでは楽しむことを最優先にしています。バックステージに関して言えば、ソユンが他の出演バンドとの外交的な役割を果たしてくれて、それで僕は、えっと、僕は何をしているんだろう(笑)」

ソユン「ちゃんとやってくれてますよ(笑)」

ヒョンジン「とにかく、ソユンはバックステージ全体の雰囲気を良くしてくれます。演奏中は、ソユンがエキサイトし過ぎてテンポが早くなったり、パフォーマンスが過剰になったら、僕が抑えたり、ソユンのちっちゃなミスがあったらフォローしたり。逆に、僕があまりにも緊張して動きがぎこちなくなってるときは、さりげなくソユンがそばに来てくれて、僕がソユンに合わせることでペースを取り戻したり。なんだろうな。ざっくり言うと、僕が演奏の土台を守って、ソユンが自由奔放にパフォーマンスするというか。後ろから、ソユンを見ていると本当に面白いですよ」

RM(BTS)とのコラボレーションは自然な流れで始まった

──ソユンさんのソロ活動、So!YoON! 名義での2ndアルバム『Episode1 : Love』が好評ですが、ソロとバンドとの違いは? また『Smoke Sprite (feat. RM of BTS)』が話題になりましたが、このコラボの経緯は?

ソユン「SE SO NEONは、音楽やその多幸感も含めて、私そのものだと思っています。So!YoON!の方は、バンドのフォーマットを外して、実験的にいろんなことにトライしています。ラップしてみたり。RMさんとのコラボレーションについては、とても自然な流れで始まりました。お会いする機会があって、溜めていたデモ曲を聴いてくださったんですね。その中から『Smoke Sprite』を気に入ってくれたので、もしよければご一緒しませんかと提案をしたら、すぐにやりましょうとお返事をくださって。このアルバムの準備をするときに、とても力になってくれました」

──「Smoke Sprite」だけではなく、アルバム全体も?

ソユン「曲の制作が終わっても交流が続いて、ミュージシャンとしていろいろと応援をしてくれました」

──RMさんの他にも、女優・歌手のパク・チユンさん、Y2K92のjibinさん、キム・ドオンさんなど注目されている面々が参加していますが、このコラボレーションも実験的な挑戦なのでしょうか。

ソユン「このアルバムに関しては、コラボレーションが多いこともキーワードのひとつですけれど、意図的に韓国の音楽シーンの重要人物を集めたとか、実験的にみなさんにお願いしたということではなくて、みなさんと交流をする中で、一緒にコラボレートしようとなったとき、自然にこういったラインナップになりました」

──アルバムから離れますが、『SHOW ME THE MONEY 11』では、優勝したイ・ヨンジさんと「WITCH (feat. Jay Park & So!YoON!)」のパフォーマンスを披露していましたよね。その経緯は?

ソユン「ヒップホップの番組だから私はジャンルが違うんじゃないかと思いましたし、オファーも突然だったので、実は最初は出演するか迷いました。でも、イ・ヨンジさんは韓国でとても活躍されてるラッパーで、私はファンのひとりでもあったので、イ・ヨンジさんのこれからの飛躍になにかお手伝いができるならという気持ちで参加を決めました」

──なるほど。SE SO NEONは韓国の音楽番組など、テレビにも積極的に出演していますが、これは韓国のバンドシーンではよくあることなんでしょうか。

ソユン「韓国でも珍しいかもしれません。私たちの目標が、自分たち自身が音楽を最大限に楽しみながら、たくさんの人に知ってもらうことなので、私たちが楽しんでメディアに登場できる機会があるなら、参加したいと思っています」

「ファッションはヴィンテージ派。ステージでアイコニックになれるから」(ソユン)

──ファッションについてお伺いします。ライブではヴィンテージ風のスタイル、MVではモードなスタイルがとても素敵ですが、ファッションポリシーは?

ソユン「MVではファッションは表現手段のひとつとして考えていて、『joke!』はコスチュームを着ていますし、『자유(jayu)』はTシャツを作りました。雑誌ではハイファッションを着たりしますが、プライベートではほとんどヴィンテージです。ステージでもヴィンテージが多いですね。その方がアイコニックになるような気がするし、私も着慣れているので自然体でいられます。といっても、特別にファッションのこだわりがあるわけではないです」

──日本にも古着屋がたくさんありますが、行かれることはありますか?

ソユン「それはヒョンジンさんの方が知っているかも。私は日本に来ると、メガネをよく買いますね」

ヒョンジン「名前は忘れたんですけど、以前、キャットストリートの有名なヴィンテージショップを教えてもらいました。でも、僕はソユンとは違ってヴィンテージがよくわからないので、新品の服を買っています(笑)」

──最後に、SE SO NEONの活動には、人々を勇気付けたり、現代を生きる人々の苦しみを和らげようとする課題意識みたいなものがあるのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。

ソユン「いや、特にそういうこともなく(笑)。楽曲は私自身が本当に深く考えて考えて制作しているので、私自身の中では課題というか、大きなテーマはあるんですけども、ただ、それを言葉にして、誰かに向けたメッセージとして発信しようという気持ちはなくて。聴く人が救済だと感じたなら、そうだと思いますし、そうではなければ、それはそれで。聴く人に委ねます」

──そうなんですね(笑)。なんで、そんなことを聞いたかというと、そろそろ次のアルバムが出るんじゃないかと。

ソユン「それは今、まさに、次のアルバムを制作しているところです。次のアルバムも、みなさんが自由に楽しんでくださったらいいなと思っています」

Photos: MELON Interview & Text: Miho Matsuda Edit: Yukiko Shinto

Profile

SE SO NEONセソニョン フロントパーソンであるファン・ソユン(ボーカル/ギター)が作ったバンドで、パク・ヒョンジン(ベース)とのメンバー構成となっている。SE SO NEONとは韓国語で「新しい少年」または「鳥少年」という意味。 2016年にソウルで結成、2017年6月にシングル「長い夢」でデビュー。同年10月EP『夏の羽』で、 韓国大衆音楽賞「今年の新人」「最優秀ロック歌」を受賞。2020年にはFenderのグローバルアーティストへの選出をはじめ、米国の音楽メディア『Pitchfork』や『Paste』のベスト・ロック・アルバムの1枚に選ばれ、2021年にはYouTube Musicの『2021Foundry』で唯一の韓国チームとして選ばれるなど、継続的に海外から高い評価を受けている。 日本においてはAwich、 YOGEE NEW WAVES、CHAI、iriなど多くのアーティストとの対バンを行い、2019年と2022年のサマソニに出演。

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