長谷川ミラ & 佐藤マクニッシュ怜子インタビュー「東京の未来は自分たちで考えて、自分たちの手で変えていく」
それぞれモデルとして同世代の支持を得ながら20代前半で起業した長谷川ミラと佐藤マクニッシュ怜子が社会の違和感を話し合う ポッドキャスト番組『Tokyo Young Boss』。若くして自らの道を切り開いてきた彼女たちの対話はさまざまな気づきをもたらす。ボスたちにならって、私たちの手で新しい東京の未来をつくろう。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2022年10月号掲載)
意見は人と違ってもいい
──ポッドキャスト番組を始めたきっかけは。
長谷川ミラ(以下、M)「実は私こう見えて(笑)、自分の考えを伝えるのがあんまり得意じゃなかったんです。でもラジオを始めたことで、言葉だけで伝えるってこんなに面白いんだと虜になりました。それで、もっと自分の本音を話せる場としてポッドキャストをやりたいなと。ボディ・ポジティブ、フェミニズム、働き方……答えのないことをテーマにしたいと思ったから、誰かと話したほうがいろんな価値観や意見が出てくると思って、昔からよく語り合っていた友人の怜子に声をかけたんです」
佐藤マクニッシュ怜子(以下、R)「私はミラと同じく海外で暮らしていた経験があり、二人とも起業家。境遇は近いけど、考え方がまったく一緒というわけではない。そういう二人が話すのがいいなって思ったんです。日本では模範解答以外は話してはいけない風潮があるけど、意見の違う私たちが語り合うことで、人と違ってもいいんだよって感じてもらえたらうれしいですね」
──発信するときに気をつけていることはありますか。
R「誰かを傷つける言い方はしないようにしているけれど、ポッドキャストをやる以上、できるだけ自分たちの本音を言いたい。これは今の二人の課題でもあるんです。どこまで本音を出していくかって」
M「聴いてくださってる方から『ストレートでいいね!』って褒められることがあるんですけど、あれでも抑えてるほう(笑)。日本にいると私たがすごくストレートな物言いをしていると思われるけど、欧米だと普通。逆に自分の意見を言わないと埋もれてしまう。日本では個人を傷つけるために放った言葉ではないのに、攻撃しているように取られてしまうことがありますよね。どんなに気を使って話しても、受け取り方は人それぞれ。だったら、誰かを傷つけないようにきれい事を言うより、仮に傷つけたとしても本音を言ったほうがいいと思うようになりました」
R「私たち、言い方がキツいんじゃなくてリアリストなんだよね」
M「そうそう。だから、番組は親友とリアルに語り合えるような場所にしたい。職場だったらそこまで言わないけど、親友だったらキツイことも深いことも言える。そう切り替えてから、反響が多くなりました」
── 何か思い当たるエピソードが?
M「『保育系の仕事に就きたいけど給与が低い』という悩みに対して、『低賃金だとわかって就職するんだったら、それとは別に稼げる方法も考えてみたらどう?』って答えたんです。もちろん、頑張った分だけ給与がもらえるよう国を変えていくことも大事だけど、今すぐには変わらない。それなら、副業したり、アフィリエイトしたり、自分で今できることに目を向けたほうがお金の面はクリアできますよね。自分が選んだ道だったら、自分を生かしてできることを考えるほうがベストだと思う。やっぱり頑張らないと結果が得られないのが現実だから。この配信の後、20代後半〜30代のバリバリ仕事をしている女性の方からの賛成意見が多く届いて、やっぱり同じように感じている人が多いんだなって思いました」
東京ってかっこよくないのかも!?
──エピソード3ではミラさんが「私って意地悪だった」と過去の自分を省みる場面もありましたね。
M「私こういう性格なんです(笑)。自分の非を認めることにそんなに抵抗がない。人間は毎日成長しているから、昨日言ったことと今日言ったことが違うこともあると思うし。日本では失敗を恐れて、知らないことを話すことはいけないと思われがちだけど、間違ってもいいし、私たちだって間違いだらけだよって見せることもリアルかなって」
──怜子さんは、自分が間違ってたかもと気づいたときどうしますか。
R「私はもともとプライドがすごく高いタイプで、会社を大きくする上で自分が正しいと思わないとできない部分もありました。でも、間違いを受け入れないと成長しないと気づいて。昔は違う意見にいちいち反論していたけど、最近は受け入れられるようになった。それに、海外を行き来していると普通が普通じゃないことだらけ。だから、今は受け入れる強さも大事にしています」
──番組ではウェルネスとセルフラブをコンセプトに掲げていますが、二人は自分を大切にするために日頃からしていることはありますか?
M「私はインスタを見ないようにしてる。友達が遊んでるストーリーズを見ちゃうと『なんで誘われなかったんだろう』って気分が下がるのがストレスだし、ダサいから。あとはおいしいもの食べたり、買い物して気持ちを上げるくらいかな」
R「私も特別なことはしてない。買い物したり、おいしいごはんを食べることで満足できる。それは仕事を頑張った結果でもあるし、単純にうれしいからもっと頑張ろうって思える」
M「努力しているとできることが増えて、勝手にポジティブになれるよね。逆に努力しないとうまくいく根拠がないし、自信が持てない。だから、努力しているとネガティブにならなくて済むと思う」
──タイトルにもある「東京」にはどういうイメージを持っていますか。
M「私は生まれも育ちも東京で『世界の都市ランキング』で常にトップクラスにランクインする東京に誇りを持っていましたが、イギリスに留学したとき、実は東京ってそんなにかっこよくないかもって思ったんです。イギリスの同年代の子たちは政治や社会問題について考えていて、質問するとすぐ意見が返ってくる。でも、東京の子はどうなのかなって。海外の人が持つ東京のかっこいいイメージと中身が伴わない気がして、ちょっと恥ずかしく感じることも」
R「カナダも社会意識の高い子が多かった。同じように話せる子が東京にはあまりいない。これは東京だけじゃなく日本全体の話でもあるけど」
M「そうだね。私たちが発信を続けているのは、声を上げたら日本は変われると思うから。生きづらさや漠然とした不安を感じている人、一人一人が社会問題に向き合って、おかしいことにはちゃんとおかしいと言うことが大事だと思う。誰かがやってくれるわけじゃない。自分で考えて、変えていかないと。私たちが番組を通じて、心のしこりを一緒にひもときながら、聴いている人が言葉にする勇気を獲得したり、行動の後押しができたらいいなって思います」
Tokyo Young Boss
Z世代の長谷川ミラと佐藤マクニッシュ怜子が社会問題、恋愛、ビジネス、生理、セックスなど、さまざまな話題をリスナーと一緒に考えていくポッドキャスト番組。海外の事情にも精通し、会社の経営者としても活躍する“ヤングボス”ならではの幅広い視点にあふれたトークは、同世代にさまざまな気づきを与えてくれる。Apple Podcast,Spotifyほかで配信中。毎週月曜日更新。
spinear.com/shows/tokyo-young-boss
Photos:Kisimari at W Hair & Makeup:Kenji Takagaki(Mila), Keita Iijima(Reiko) Styling:Kana Tanaka Interview & Text:Mariko Uramoto Edit:Mariko Kimbara