Luby Sparksインタビュー「ファッションやアートワークでも音楽性を表現したい」 | Numero TOKYO
Interview / Post

Luby Sparksインタビュー「ファッションやアートワークでも音楽性を表現したい」

英語詞によるオルタナ/インディーポップ/シューゲイザーサウンドをベースに、ボーダーレスな活躍をするバンド 、ルビースパークス(Luby Sparks)。2ndアルバム『Search+Destroy』は、多彩なサウンドに溢れ、とてもキャッチーに開けた意欲作だ。MVやジャケット等のヴィジュアルもセルフプロデュースするなど、音楽のみならず、トータルの表現を通し意図的にカルチャーを発信する彼らに、新作のことからルーツ、ヴィジュアル制作におけるこだわりまでさまざまなことを聞いた。

左からNatsuki (ba/vo)、Shin(dr)、Sunao(gt)、Erika(vo)、Tamio (gt)
左からNatsuki (ba/vo)、Shin(dr)、Sunao(gt)、Erika(vo)、Tamio (gt)

壁を壊して前へ。全員で作り上げた2ndアルバム

──4年3カ月ぶりとなるアルバム『Search + Destroy』。このタイトルにはどんな思いを込めましたか。

Natsuki「最後にタイトルトラックが収録されているんですが、この曲を作る前にアルバムタイトルを『Search+Destroy』にすることは決めてたんです。探究と破壊っていう意味なんですけど、まさにルビースパークスの現状を表した言葉で。新たな世界を探究していき、なおかつ過去の自分たちの壁を壊して前に進むという意味を込めました」

──まさに、ファーストアルバムに比べ、すごく多彩でキャッチーに開けたアルバムになっていますよね。

Natsuki「これまではほとんどの曲を僕が作ってたんですが、今回は僕とErikaとTamioの3人で作った曲が半分くらいを占めているのが大きな変化ですね。これまでのイメージを一新するよう意図的にキャッチーに仕上げました。収録されている曲の半数以上は、コロナ禍に入ってから作った曲です。ライブができなくなってしまって、外出することも控えるようになりました。曲を作るのも、それまでのスタジオ制作ではなく、部屋にひとりでこもってデータを送り合ったりするようなやり方で作ることが増え、内に向かっていくような状況がありました。でも、それと相反するようにテンションはものすごく外に向かったアルバムです。そういう時代だからこそ、外への爆発力を出していきたいというパワーが込められた気がしています」

Erika「個人的にはNatsukiの心境が大きく変わったと思っています。今まではNatsukiの曲作りのセンスを信頼してついていく感じだったんですが、ライブができなくなって話し合うことが増えたのもあり、Natsukiもほかの4人の嗜好やセンスにかなり積極的に歩み寄ってくれたし、お互いインプットし合う機会がすごく増えたなと思いました」

Natsuki「みんなで一緒に作るスタンスに自然と変わっていった気がします。それで楽曲制作の流れとして多かったのが、まずTamioがリフを作り、それを元に僕が全体のアレンジメントを作ってErikaに渡して、Erikaがメロディと歌詞を落とす。最後にスタジオでみんなで合わせて、ShinやSunaoがアレンジメントを加えていって仕上げるんです」

Tamio「自分で作ったギターのフレーズを弾くようになり、すごく楽しかったです。Erikaさんも自分で作ったメロディを楽しそうに歌っていて。各々そういう感じで前よりも和やかな雰囲気になったのかなって感じています」

Sunao「今回は時間もあったので、自分が考えたギターフレーズを入れる余裕があった。例えば、僕が作ったのだと『Don’t Own Me』のリフとかですね」

──「Don’t Own Me」は、これまでになかったグランジーなアプローチですよね。

Tamio「僕のギターのルーツにはレッド・ツェッペリンジミ・ヘンドリックスがいるんですけど、この曲のリフにはそういった影響が出ていると思います。ギターを半音だけチョーキングさせてブルース感を出したり。だから70年代回帰的な部分もあります。リフの構造的な部分はクラシックロックっぽいんですけど、質感はグランジ。良い感じでマッチできた曲だと思います」

Natsuki「この曲に限らず、打ち込みと生ドラムを組み合わせたり、シンセをふんだんに入れたり。ひとつひとつの音の質感は、スマッシング・パンプキンズホールのような、元はインディーロックだけどグランジの時代にはメインストリームにいたバンドを参考にしました」

Shin「打ち込みがこれまでより増えたことで音楽的にはインディー感が薄くなって、音量が大きくなりました。だからドラムの僕としては、全体的に力強くドラムを叩くことを意識したのが一番の変化です(笑)」

──Shinさんのルーツはどういった音楽性なんですか?

Shin「R&Bやファンクです。今回はこれまでにやってなかったことを色々とやってみたんですけど、例えば『Crushing』のドラムには新しいアプローチがよく出ていると思います」

──Erikaさんは?

Erika「私は昔から女性のシンガーがすごく好きなんです。バンドでも、時代関係なく強いイメージのある女性ボーカルがいるバンドに惹かれます。ジョーン・ジェットアヴリル・ラヴィーンが特に好き。ティーンエイジャーだった2000年代に流行っていたエモやポップパンクに影響を受けていて、メロディを書くときは自然とエモーショナルな展開になることが多いです」

Natsuki「例えば『One Last Girl』はErikaがメロディと歌詞を書いてるんですが、僕からは出てこない、ストレートで一音が割と長めの伸びのあるメロディーがすごく合うなと思いました。そういうメロディーが自然と出てくるのは、やっぱりそういうルーツがあるんだなって改めて感じました」

──Sunaoさんが影響を受けた音楽というと?

Sunao「僕も、はせしん(Shin)と同じでR&B。あとディスコやニューウェーブをよく聴いてました。ギターを始めたときはザ・スミスデュラン・デュランXTCのコピーをしていましたね。周りにそういう友達が多かったこともあり、80年代の音楽に影響を受けています」

──ギタリストのおふたりの嗜好からして全然違うんですね。

Natsuki「演奏スタイルも全然違いますね」

Sunao「Tamioはさっき出たツェッペリンやジミヘン、あとはジョン・フルシアンテとかに影響を受けてるよね」

Tamio「Sunaoのほうがちゃんと繊細にギターを弾くんですよ。僕は繊細に弾くこともできるけど、荒々しく弾くほうが好き。そうやってお互い良い感じに差をつけているところはあります。お互いそれぞれのギターの弾き方を教えあったりもしてるんです」

Natsuki「ライブでも右と左の両側にふたりが立って弾くので、ステレオ感みたいなものも楽しめると思います。レディオヘッドもそうですが、全くタイプが違って音像が被らないギタリストが二人いることがどんどんバンドの強みになっていったらいいなと思いますね」

Erika「最近スタジオで休憩の合間にSunaoがメタルのフレーズをよく弾いてるよね(笑)」

Sunao「僕ら最近メタルにめっちゃハマってて、練習してるんです(笑)」

Erika「対決するかごとく、ふたりで速弾きしてる」

Natsuki「今回のアルバムでも『Don’t Own Me』や『Depression』、『Crushing』あたりはファーストだったら考えられないへヴィネスに挑戦してて。そこに至るまでに、シングルでそういう要素を出していったり、アルバムで違和感がないようにストーリーを作っていきました。今回のアルバムで音楽的な探究心がどんどん広がっていったので、次のステージではもっとチャレンジができるようになるんだろうなと。そういう流れの最初の地点みたいなアルバムだと思います」


アートワークやファッションへのこだわり

──MVやアートワークをセルフプロデュースされていますが、そこへのこだわりを教えてください。

Natsuki「アーティスト写真にしてもMVにしても、音楽にちゃんとつながるようなものであるというはすごく大切にしています。例えば今までの音楽性だったら、ドリーミーなものだから写真をフィルムで撮ってみたり。今回はもう少しパキッとした音像になったので、デジタルでコントラスト強めの写真に。ジャケット写真は1stアルバムからNYのフォトグラファーのアニカ・ホワイト(@annikawhite)さんにお願いしていて、今回は僕たちの成長に重ねてアダルティーな雰囲気にしてもらいました。『もしかしたらこういう時代を意識しているのかな』って想像を膨らませて楽しんでもらえたら」

──ヴィジュアルはNatsukiさん主導で考えているんですか?

Tamio「そうですね」

Erika「でも決める前にみんなに提案してくれるので、それに対してそれぞれが意見を言いながら決めていく感じです」

Natsuki「衣装はまずErikaが『こういう服が着たい』っていうイメージを出して、そこにどうメンズが合わせていくかっていう決め方をすることが多いです」

Erika「やっぱり音楽とアートワークは切っても切り離せないですよね。自分もほかのアーティストのアルバムのことをタイトルよりもジャケット写真や衣装で覚えていることも多いですし。ヴィジュアルもセルフプロデュースすることでイメージ通りのものができると思うので、そこはこれからもこだわっていきたいです。ジャケットにこだわればこだわるほど、作品に込めた思いも伝わると思っています」


──5人で集まったときのファッションのバランスが絶妙ですが、ルビースパークスのときと私服は何か区別していたりするんですか?

Erika「このふたり(NatsukiとErika)はいつもとそんなに変わらないです」

Natsuki「3人(Tamio、Sunao、Shin)は切り替えてるよね」

Shin「でも、今日の服は私服のままですね(笑)」

Erika「徐々に私服が変わってきた気がしてる」

Sunao「前はファッションにあまりこだわりがなかったんですが、撮影の経験が増えていくなかで、どういうファッションがいいかが見えてきたところはあるかもしれないですね」

Erika「最近、撮影用の服を買うためにメンバー5人でお買い物に行くこともあって。そうすると、Natsukiが他のメンバーに『こういうの似合うんじゃない?』と勧めてくれたり、メンバーそれぞれも意外とこれまで着てなかったようなものを着たくなったり、ファッションへの興味が全体的に高まってきた気がしています」

Natsuki「アーティスト写真とかのファッションを見て、音楽性が想像できることで説得力が出ると思うんです。厚みが加わる部分というか。そのために作品ごとにファッションの方向性を変えてみたりもする。そういうことを積み重ねて、5人それぞれが決まったスタイルを持ち始めてる感じもしてます。それぞれの好きなスタイルを取り入れつつ、ルビースパークスっていうバンドのイメージを作っていけたらいいなと。『こういう音楽でこういうファッションやってることが新しいな』って思ってもらいたい」

──コロナ以前のように、海外アーティストとのライブでの交流も増えていくと思うんですが、これからはどんなヴィジョンを描いていますか。

Erika「ずっと英語で歌ってきているので、やっぱり海外での活動を広げていきたいですね。いろんな国でファンと触れ合う機会を作っていけたらいいなと思っています」

Takumi「国境とか日本人とか関係なく、普遍的な音楽として、アジアだけじゃなくて欧米にも広がっていったらいいなと思っています」

Luby Sparks『Search + Destroy』
各種配信URL/ssm.lnk.to/SD_LS

バンド初のワンマン・ライブが開催決定!
Luby Sparks Presents「Search + Destroy Live」
日時/2022年6月4日(土)18:00〜(オープンは17:00)
料金/前売り¥3,500、当日¥4,000(※別途ドリンク代)
会場/WWW X www-shibuya.jp/schedule/014476.php
チケット購入URL/eplus.jp/lubysparks0604

 

Photos:Anna Miyoshi Interview & Text:Kaori Komatsu Edit:Mariko Kimbara

Profile

ルビースパークスLuby Sparks 2016年3月結成されたロックバンド。現在のメンバーはNatsuki (ba/vo)、 Erika (vo) 、Sunao (gt) 、Tamio (gt)、 Shin (dr)の5人。17年7月に「Indietracks Festival 2017 (UK)」に日本のバンドとして唯一出演。18年1月、ロンドン出身のインディー・ロックバンド、ヤック(Yuck)のメンバーであるマックス・ブルームと全編ロンドンで制作したデビューアルバム『Luby Sparks』を発売。同年11月、4曲入りのEP『(I’m) Lost in Sadness』、19年9月にシングル楽曲「Somewhere」を、22年5月にマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、シガー・ロス、リナ・サワヤマなどの作品で知られるアンディ・セイヴァーズを共同プロデュースに迎えた4年3カ月ぶりのセカンドアルバム『Search+Destroy』をリリースした。これまでにザ・ヴァクシーンズ、ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートなど海外アーティストの来日公演のフロント・アクトも数多く務めるなど、グローバルでの活躍が期待されている。Instagram:@lubysparksband Twitter:@lubysparksband

Magazine

JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

Future Vision

25年未来予報

オンライン書店で購入する