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People Interview

サムライギタリストMIYAVI「固執や執着は壊し続けていきたい」

4月にデビュー15周年記念ベストアルバム『ALL TIME BEST “DAY 2”』をリリースし、現在ワールドツアー真っ只中のMIYAVI。さらには公開中の木村拓哉主演映画『無限の住人』の主題歌を手がけるなど、世界を舞台に挑み続けるMIYAVIというアーティストの魅力をひも解く。

Photos:Mayumi Taka
Styling:Tsuyoshi Takahashi
Hair & Makeup:Dai Michishita
Interview & Text:Atsuko Udo
Edit:Masumi Sasaki、Saori Asaka

ステージ上で見せる熱いパフォーマンスとは裏腹に、素顔の彼には凛とした静けさが漂う。非常にロジカルで、頭の良さは1分も話せばよくわかる。スタイルは狂気でも、本人はごく正気。いや、狂気の真裏にある正気か、狂気があればこその正気なのか。とにかく、そんな危ういバランスが美しい。世界を舞台に活躍し、今年デビュー15周年という節目を迎えた、サムライギタリストMIYAVIという人物に迫る。
※「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2017年1・2月合併号掲載記事より

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反抗する理由はなかった

──MIYAVIさんというと、常に熱いイメージがありますが、小さい頃はどんな子どもでした?

「僕はね、反抗期と呼べる時期がほとんどなかった」

──それは驚きです。

「反抗する理由がなかった、というのかな。音楽も始めていたし、学校も適当にサボっていて、やりたいことはやっていたので。しいて反抗といえるのは、一度家出をしたくらい。それも親への反抗心ではなく、日常と違うことをしてみたかったから。15歳の時にはすでに音楽で食べていくと決めていたんだけど、学校では進学クラスに在籍していて、クラスには東大とか京大を目指すヤツらばかり。勉強は好きだったけど、今いる環境は自分の望む未来にはつながらないな、全部捨ててどっかいっちゃおうか、なんてことを考えていたときに、仲のいい同級生と授業が終わって会ったら、髪の毛が真っピンクになっていて『俺、家出するんだ』って(笑)。シンクロニシティだったんでしょうね。それなら、と二人で四国や神戸、和歌山と、時に野宿しながら1カ月以上、旅しました」

──帰った時、お母さんの反応は?

「探していたようですが、怒りはしませんでした。夜行バスで上京すると突然決めた時も、直前に電話で話した母親は『気ぃつけや』と言うものの、止めはしなかった。めちゃめちゃ心配してたと思いますが、何より僕の意思を尊重してくれていた。そんな背景から、子どもに対する寛容さ、子どもを一人の人間として尊重する姿勢は学んだ気がします」

ジャケット/Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン クライアントサービス) リング/本人私物

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アーティストに向いてない!? 

──お嬢さんたちと接する時も、しっかりコミュニケーションを取りますか? 

「はい。甘えさせる時は、100%甘えさせますけど、しつけや規律はそれと同様に重要だと考えます。僕が特に、親としてやってはいけないと思うのは、大人の都合で、会話を投げ出してしまうこと。子どもいっても一人の人間です。なので、理由をとことん説明します。夜の8時にベッドに入らないといけない理由として成長ホルモンの話もしますし、それでも聞かない場合は『起きててもいいよ』と言います。夜遅くまで起きていれば、翌朝は当然、眠いでしょ? 子どもの体は、大人と違って成長するためにたくさんの睡眠を必要としていること。眠いと感じながら学校に行く子どもたちに『毎日眠いと感じながら学校に行き、体も脳も成長しなくてもいいのなら、寝なくてもいいよ』と。そこまで説明すれば理解してくれますよ。これは、どんな局面においてもやってます」

──今、コミュニケーションを面倒くさいと感じる人は多いのかも…。

「世の中を見ていて、なんのために子育てをしているのか。その根本の部分が、麻痺せざるを得ない社会になってしまっているのかな?と感じる時があります。今この国に欠けているのは、きちんとした倫理観の育成・教育のような気がします」

──娘さんだけでなく、こんなご主人で奥さまがうらやましいです。

「もちろん意見の相違もあるし、時にはお互い感情的になることもあるけど、でも、うちはちゃんと会話をします。話したら、どんなことでもまずは理解し合える、それが何より大事な事だと思っています」

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──自己表現の源は、パンクのような体制への反抗とか怒り、フラストレーションとは対極にあるものですか? いつも冷静な視線を持っているので…。

「まさに最近、そんなことを考えてます。そういう意味では、僕、アーティストに向いてないのかなと思う(笑)」

──結論づけるの、早い(笑)。

「僕が音楽をやってる理由は、自分はここにいるという存在証明の意味もあるけど、音楽を通して伝えたいものがあるから。今日よりも明日、明日よりも未来が良くなるために、創作を続けている。そこで伝えたい究極のメッセージは『明日を幸せに生きようよ』になる。でも、アートって結論じゃなく、そこに行き着くまでの、もがきにも似た過程なんだよね。人としての不完全さをいかに楽しむか。つまり、結論が見えてることは、必ずしも正解ではないんです」

──早くも悟ってしまった…と?

「いや、まだまだ知らないことはたくさんある。とはいえ『何があっても笑って死ねればいいね』という境地と、対極にあるパンク的プロセスを、どう持ってくるのか。そこは物事を創作するにあたって、すごく大事なので、特に最近、よく考えています」

(写真上)パンツ/Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン クライアントサービス) リング/本人私物
(写真下)ニット/Beachme(MATT.) パンツ/Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト プレスルーム)

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尊厳を守り、執着を壊す

──少し概念的な質問を。MIYAVIとして活動を始めてから、失ったものと得たものを教えてください。

「失ったものは…ないかもしれない。いや、もしかすると、失うという概念をすでに失っているのかもしれない。例えば、友人と距離を置いたことで、友情を失ってしまったと感じる、その感覚・概念をすでに失っているのかも。例えば、気の合う友人とただ一緒にいる、なんてことに対する価値観自体も変わったので」

──では、得たことは?

「ひとくくりにすると、人生の楽しさすべて。ビートの楽しみ方、演技の楽しさ、創る楽しさ…。様々なものに対する精度というか、センサー、感度が上がっているような気がします。自分の体の声、心の声を聞けるようになってきたのは、これまでの活動を通して得たことかもしれない」

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──最後に。自分が守りたいものと、壊したいものを教えてください。

「守りたいものは、家族、周りの人たちですね。ファンの皆さんも含めて」

──自分の内面に焦点を当てると?

「ディグニティ(尊厳)、自分であることの誇り。人は、環境によってすごく変わります。なので、どんな状況においても、他者に対して、自分という人間としての尊厳は守りたいですね。決して偉ぶるという意味ではなく。壊したいものは…そのことに固執しそうになる瞬間、かな。プライドを持つことで、こうでなくちゃいけないという考えも生まれてきます。固執や執着は壊したいし、これまでも壊してきたつもりですし、これからも壊し続けていきます」

(写真上)ニット/Beachme(MATT.) パンツ/Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト プレスルーム) リング/本人私物
(写真下)ガウン/Beachme(MATT.)

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Profile

MIYAVI(みやび) アーティスト / ギタリスト。 エレクトリックギターをピックを使わずに全て指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、約 30 カ国 300 公演以上のライブ、5 度のワールドツアーを成功させた。2015 年にアルバム『The Others』、16 年に 8 月には Lenny Skolnik をプロデューサーに迎え『Fire Bird』を発表。また、映画『Unbroken』(アンジェリーナ・ジョリー監督/16年2月 日本公開)では俳優としてハリウッドデビュー。他にも、映画『Mission: Impossible ‒Rogue Nation』日本版テーマソングのアレンジ制作をはじめ、さまざまなアーティスト作品へ参加。最新作は、ベストアルバム『ALL TIME BEST “DAY 2”』、映画『無限の住人』(三池崇史監督)の主題歌。

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