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松居大悟監督・高良健吾インタビュー「台本を読んだ直後、“これは名作になる”と直感した」

気鋭の若手俳優とタッグを組んで数々の作品を生み出してきた松居大悟監督。5月12日(水)からテアトル新宿ほかにて公開予定の映画『くれなずめ』は主宰を務める劇団「ゴジゲン」で2017年に上映された舞台を前身とし、高校時代の帰宅部仲間である6人の“再会”を描いた物語。劇団を主宰する欽一役を演じるのは、日本の俳優界で確固たるポジションを築く高良健吾。監督が作品に託した想いや、高良健吾が本作を通して感じたこととは。

「会えなくなった友人に向けて作ったパーソナルな物語」(松居監督)

男の友情物語と簡単な言葉で本作を表現できないのは、友達を持つ全ての人の心のひだに触れるようなストーリーがこの作品の根底にあるから。高校卒業から12年の月日が流れた頃に、友人の結婚式に参加するため、当時の気のおけない友人6人が再会。彼らは卒業後も折にふれてバカ話に興じる仲だったが、そのうちの一人がこの世から去った日を機に、疎遠になっていたのだ。そんな彼らの心情の機微をこまやかに描いたのが『くれなずめ』。

──この物語が生まれた経緯を教えてください。

松居「本作はもともと舞台で劇団員のみの公演でしたが、身内ならではの込み入ったものを作ろうとして、自分なりに死生観を描いた作品です。と言うのも、大学時代からの友達に、ある日突然会えなくなった。その経験を経て不思議だったのが、“彼が居る”という感覚が僕の中に強くあったことでした。むしろ彼が生きていた頃以上に彼の存在を感じ、ソイツに『俺の中にお前は生きてるよ』と言いたい一心で、この物語を作りました。だから普遍的な物語と呼べるものではなかったのですが、舞台を観に来てくれた和田大輔プロデューサーが映画化を持ちかけてくれたんです」

──さまざまな縁があって誕生した本作。高良さん、オファーが来た時の第一印象はどのようなものでしたか。

高良「率直に『面白い!』と感じました。松居監督のこれまでの作品を観てきたから余計に、これは絶対に面白くなると確信できました。松居監督の作品はノリや勢いを生かして表現を通して遊びながらも、監督の中には他の人には分からない確固たるルールがあると思う。そこを形にできたら二つと無い作品になりそうだと、台本を読んだ時点で感じました」

松居「読んですぐハマケン(浜野謙太)に電話をしたんだよね」

高良「速攻かけましたね。これはフォーマルな順序ではないのですが(笑)。でも台本を読んで『これは名作だ。絶対やりたい!』と勢いづいて、浜野(謙太)さんにすぐ電話をかけました」

──主演の成田凌さんをはじめ、そうそうたるメンバーが出演しています。キャスティングをする上で松居監督が意図したことは?

松居「そうですね……。個人的な感情で挑んだ作品でしたから、キャスティングを考えるうえでは、今までご一緒したことがないもののずっと一緒にやりたかった人というのが念頭にありました。つまり、友達になってみたいと思っていた人」

──松居監督の心に寄り添ってくれそうという意味での“友達”ですか?

松居「いえ、むしろ俳優さんたちにはその人が思うまま、好きなように演じてもらえたら、それで十分だと思ってました。何なら僕もこの作品の人物たちがどういう人なのか分からないので、台本という設計図のうえで、鮮やかに生きてくれたらと。結果的に、とてつもなく芝居に対して誠実な人が集まってくださいました」

「友達とは、楽しさから淋しさまで共有できる人のことだと思う」(高良)

──松居監督が欽一役を演じる高良さんに期待したことは何でしたか。

松居「高良くんは『シン・ゴジラ』や『万引き家族』などたくさんの作品に出演していて、ものすごく恐い人やとても優しい人などいろんな役柄を演じてますよね。今回高良くんに演じてもらった劇団主宰の欽一は、難しいことを考えていそうだけど魂が熱いヤツにお願いしたくて、適任でした」

高良「松居監督に唯一言われたのは、リハの時に『欽一は自分勝手なヤツだよ』ということでしたね」

松居「撮影を終えて編集しながら、改めてそう思いました。周囲が見えているようで、好きな友人の前では、人一倍気を許してしまうようなタイプ」

──欽一を演じる中で、高良さんが大切にしていたことは?

高良「うーん、僕は他の5人のことを好きという想いだけを大切にしていました。実際、現場が本当に楽しかったんです。『くれなずめ』の共演者には、芝居中であれカメラが回っていない時であれ、『この人たちの前では自然体でいい』『白黒つけなくてもいい』と感じられる部分がとても多かった。監督の演出も素晴らしい。今まで経験したことのない現場で、『何でこの人たちのことがこんなに好きなんだろう?』と常々思っていました」

──そのような現場のムードが本作の随所からうかがえます。家族とも恋人とも違う、友達ならではの空気感の特別さが色濃く出た本作。改めて、二人にとって友達とはどんな存在ですか。

松居「想像ですけど、高良くんは数少ない友達を大事にしていそう」

高良「さすが! 数は多くなくてもいいと考えているかもしれないです。楽しさや嬉しさを共有できる人ほど、淋しさや悲しみも分かち合える人は少ないと思うんです。僕は、後者も含めた人こそ友達と呼べる気がして」

──『くれなずめ』のように団体で集まった時には、どんな立ち回りをするタイプですか?

高良「どちらかというと誰かをいじるよりは、いじられる側かな。地元の友人の間では『またなんか言っているよ〜』って笑われるタイプ(笑)」

──松居監督にとって友達の定義とは?

松居「ゴールがない関係。人によってゴールの定義も違うはずですが、親子であれば親孝行する形で恩を返すこと、恋人であれば家族になることがゴールかもしれない。でも友達にはそういう一般的なゴールがなくて、何かあればすぐに駆けつけられる一方で、手術中などであれば面会を断られることもある。法的に守られていないこともあってものすごく曖昧だけど、友達のためなら見返りなど求めずとも頑張れるし、いつ何時も“そばに居る”と感じさせてくれるのは友達だという気がします。考えれば考えるほど、不思議な存在ですね」

『くれなずめ』

ある日突然、友人が死んだ。 僕らはそれを認めなかった。

優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、既婚者となったソース(浜野謙太)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹)、高校時代の帰宅部仲間がアラサーを迎えた今、久しぶりに友人の結婚式で再会した。この物語は、結婚式の披露宴と二次会の間に起こる短いお話。泣きたいのに笑えて、笑いたいのに泣ける。“狭間”の時間に起こる奇跡とは……。

監督&脚本/松居大悟
出演/成田 凌、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹/飯豊まりえ 内田理央 小林喜日 都築拓紀(四千頭身)/城田 優 前田敦子/滝藤賢一 近藤芳正 岩松 了/高良健吾
主題歌/ウルフルズ「ゾウはネズミ色」(Getting Better / Victor Entertainment)
配給・宣伝/東京テアトル 
制作プロダクション/UNITED PRODUCTIONS 
製作/「くれなずめ」製作委員会
©2020「くれなずめ」製作委員会

衣装(高良健吾):ブルゾン¥86,900 シャツ¥42,900 パンツ¥39,600 スニーカー¥63,800/すべてTOGA VIRILIS(トーガ 原宿 03-6419-8136)

Photos:Asuka Ito Hair & Makeup:Kohei Morita(TETRO)(Kengo Kora) Styling:Shinya Watanabe(Koa Hole inc)(Kengo Kora) Text:Nao Kadokami Edit:Risa Yamaguchi

Profile

松居 大悟Daigo Matsui 1985年11月2日生まれ。福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰、全作品の作・演出を担う。2012年、『アフロ田中』で長編映画初監督。その後『スイートプールサイド』(14)、『私たちのハァハァ』(15)、『アズミ・ハルコは行方不明』(16)、『アイスと雨音』(18)、『君が君で君だ』(18)など。枠に捉われない作風は国内外から評価が高い。20年に自身初の小説『またね家族』を上梓。映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』も現在公開中。
高良 健吾Kengo Kora 1987年11月12日生まれ、熊本県出身。2006年『ハリヨの夏』で銀幕デビュー。近年の出演作品には、『狼煙が呼ぶ』(19)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19)、『カツベン!』(19)、『おもいで写眞』(21)、『あのこは貴族』(21)など。現在、NHK大河ドラマ『青天を衝け』出演中。

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