注目株のソウルフルなポップアイコン、イジー・ビズ
ソウル界のノラ・ジョーンズとも称される、ロンドン出身の22歳の実力派の新星シンガーソングライター、Izzy Bizu(イジー・ビズ)。2017年1月にライブ公演で初来日した、キュートでソウルフルな新世代アイコンにインタビュー。
ロンドン出身、伸びやかな歌声とポップなソングライティングでいま注目されている22歳のシンガーソングライター、イジー・ビズ。ステージでは美しいハスキーボイスで魅了し、素に戻ると自然体の佇まいがチャーミングな彼女に、デビューまでのいきさつ、2016年にリリースした1stアルバム『A Moment Of Madness』、初めて訪れた東京の印象やお気に入りのファッションについて聞いた。
オープンマイクで掴み取った音楽への道
──ロンドン出身ですが、もう一つのルーツであるエチオピアから影響を受けていることは?
「まずは即興を重んじるところね。それに、リズムを身体で感じながら音楽を楽しむこと。あとは日々の料理かしら(笑)」
──映像やステージでも、リズムに身を委ね、全身で音楽を表現していますよね。
「音楽自体が私をリラックスさせてくれるしね。たとえ不安や心配があったとしても、音楽やダンスが気持ちを和らげてくれるの」
──美しい声、ソウルフルでキャッチーな曲を書くセンスなど、シンガーソングライターとしての才能を感じますが、音楽の仕事を意識したのはいつですか?
「16歳の頃だと思う。それまでは趣味として音楽と向き合っていたけれど、詩を書くようになってからは作品を人と共有したくなって。実は一度、ガールズ・グループでデビューしたこともあるんだけど、解散後に一人でオープンマイクナイトに出場してみたことで、音楽の道を目指したいと真剣に思うようになったわ」
──詩に興味を持ったきっかけは?
「父の仕事の関係で7歳の頃、中近東に引っ越して。海外を飛び回っていた父とよく過ごすようになったこと、そして新しい環境や出会いについて、自分なりの言葉で表現したくなったの」
──自分の言葉をシェアするチャンス、という意味ではオープンマイクへのチャレンジも怖くはなかった?
「まさか! 出場を決心するまでには半年かかったんだから(笑)。親友や親族に背中を押されて、ようやく出ることにしたものの、出番の直前には不安でたまらなくて、十字架を握りしめて『どうか間違えませんように!』と祈っていたわ。でもいったんステージに上がって歌い始めると喜びしかなくて、素晴らしい瞬間だった。私を含めて10人の参加者が1分の持ち時間でオーディエンスを惹きつけなくちゃならなくて、終了後は参加者が一列に並び、拍手の大きさで勝者が決まるシステムだったから、そこでまたすごくドキドキしたんだけどね。なんとか優勝できてラッキーだったわ」
──最初は、ビリー・ホリデイも歌った「Summertime」を披露したそうですね。ステージでは自作の曲も歌いましたか?
「ええ。優勝すると1ヶ月後にステージで自分の曲を2曲歌えるというシステムだったから、優勝後にあわててギタリストと曲を仕上げたの。曲を書き始めてはいたけれど、当時はまだ準備の段階だったから」
自分をさらけ出し、多くの人が共感できる音楽を届けたい
──オリジナリティのある声はどのように身につけたのでしょう?
「技術的な面ではボーカルレッスンも受けてきたけど、いろいろな音楽を聞く中で自分に合ったジャンルを探していった感じ。王道ポップを私が歌うと曲が台無しになっちゃうし(笑)、ロックを聞くのは好きだけどシャウトはなんだか私のスタイルに合わない。ソフトでリラックスしているもののしっかり芯のあるジャズ、それからスウィングも好き」
──影響を受けたアーティストはいますか?
「エラ・フィッツジェラルド、それからビリー・ホリデイ。あと、毛色は違うかもしれないけど、やっぱりエイミー・ワインハウスも欠かせない。それぞれに歌い方や声は全然違っても、音楽に対する姿勢には通じる何かを感じるの。型にはまらない、自由なスタイルというか。生き方はエクストリームだったかもしれないけど(笑)、曲を通じて触れた彼女たちの恋愛観や思いは、他人からどう言われようと自分に正直に表現したものなのだと思うわ」
──あなた自身もそういうタイプ?
「音楽への向き合い方として、目指したいとは思っていて。ライヴを重ねるようになり、同じ曲を繰り返し歌う機会を得たことで、純粋な気持ちをそのまま曲に乗せることの難しさを感じたりもするけど、小綺麗にまとめたりせず自分をさらけ出すことで、より多くの人に共感してもらえるような人間味のある音楽を届けたい」
──作られたポップスターを演じるというより、内面からにじみ出る歌を大切にしているんですね。
「この業界にいると、周囲が良かれと思っていろいろアドバイスしてくれて、それはありがたいことなんだけど、いまは自分の考えやアイデアをどんどん形にしていきたいと思ってるの」
──まだ若いですし、経験を重ねることで、歌からその時のあなたの様子や思いが感じ取れると面白いですよね。あ、ボーイフレンドと別れたんだな、とか(笑)。
「え、みんなが楽しみにしてるのはそこなの(笑)?!」
──ファーストアルバム『A Moment Of Madness』の制作にあたって意識したことは?
「アルバムを作っていた当時の恋愛から、恋に落ちること、自分自身を見つめるためにあえて距離を置いたりすること、他にも自分が当時感じていたことを素直に表現しようと思った。歌詞については、イメージを言葉で表すこと、比喩や暗喩、それから韻をすごく意識したわ」
──収録曲であるシングル「White Tiger(ホワイト・タイガー)」は大ヒットし、東京でもよく耳にします。去年のデビューから周囲の環境に変化はありましたか?
「以前は本当にシンプルな生活だったのが、世界中でのライヴや取材に明け暮れる毎日で、最初はすごく戸惑った。でも年末のホリデーに目まぐるしい一年を振り返ったことで、自信を持てるようになったし、今はこうやって新たな出会いや刺激を楽しんでいるわ。日本でも私の音楽を聴いてくれている人がたくさんいるというのはすごくハッピーでありがたいこと。ステージでもそう思ったわ」
トイレに縄跳び、初来日で気になったもの
──最近は何カ国ぐらい回ったのでしょうか?
「ドイツ、フランス、オランダ、アメリカ、メキシコにキューバ。キューバはすごくきれいだったわ。ちなみに、ホリデーではハワイに行ったの」
──日本は初めてなんですよね? 何か気になったものはありますか?
「まだ渋谷を歩いただけなんだけど、クールで最高! さっきはみんなで、ドンキホーテでゲットした縄跳びをしていたところ。一緒に、セルライトローラーも買っちゃった。セルライトって女子ならではの悩みよね。日本に来ていちばん目を奪われたのは、ウォシュレットの温水便座ね。あれっていくらで買えるのかしら? 余裕ができたら、いつか欲しいわ(笑)。それに、マリオのコスプレをしてカートで走る人たちも見かけて、びっくりしちゃった。あと、移動中にどこかでエッフェル塔を見かけたと思うんだけど?」
──東京タワーですね(笑)。若い女の子としての飾らない、旺盛な好奇心に好感が持てます。ロンドンと東京の若者の過ごし方にはどんな違いを感じますか?
「ロンドンではお酒を飲むくらいしか楽しみがない気がするんだけど、東京にはいろいろな選択肢があるのがいいと思う。朝4時までゲームセンターで無邪気に遊べるなんて、ロンドンでは考えられないから。それに食べ物もすごくおいしいし!」
──今日のマイクロミニスカートもとても似合っていますが、PVでのヘルシーなファッションからレッドカーペットでのドレスまで、さまざまなスタイルを披露していますよね。それから、Marques AlmeidaやHouse of Hollandなど、ロンドンブランドのショーでのスナップも目にしました。ファッションへのこだわりは?
「まずは着心地がよくてかわいい服に目がないの。デニムも好きなので、もちろんMarques Almeidaも。それしか着ない、というブランドがあるわけではないんだけど。それから、新しいブランドを発見するのも好きよ」
──最近の収穫はありましたか?
「ランジェリーで知られているAgent Provocateurは、ドレスも素敵なの。あとはお手軽なところで、& Ohter Storiesもお気に入り。ロンドンのショップでは日本人の女の子もよく見かけるし、ぜひチェックしてほしいな」
『ア・モーメント・オブ・マッドネス』の情報はこちら
Photos:Gen Saito
Interview&Text:Minami Mihama
Edit:Masumi Sasaki