SEKAI NO OWARIのFukaseインタビュー「どの言葉で、どういう人たちが傷つくのかは勉強していかなくてはいけない」 | Numero TOKYO
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SEKAI NO OWARIのFukaseインタビュー「どの言葉で、どういう人たちが傷つくのかは勉強していかなくてはいけない」

SEKAI NO OWARI、End Of The Worldの中心人物であるFukaseが生み出した、アニメキャラクター「BAD MOOD(バッドムード)」。一見ユルカワキャラだけど、ときにさまざまな感情をむき出しにする5つのキャラクターが、Amazon Fashionが新しくローンチした衣類のオンデマンドプリントサービス「Merch by Amazon(マーチバイアマゾン)」とコラボレーションし、Tシャツ、スウェットなどアパレルグッズをリリースすることになった。

Black Logo トレーナー¥4,500/BAD MOOD(アマゾン ファッション)※商品の価格は10月21日現在。詳細はwww.amazon.co.jpにてご確認ください。
Black Logo トレーナー¥4,500/BAD MOOD(アマゾン ファッション)※商品の価格は10月21日現在。詳細はwww.amazon.co.jpにてご確認ください。

「BAD MOOD」はクリエイティブの源

──アニメーションプロジェクトBAD MOODと「Merch by Amazon」とのコラボレーションアイテムですが、どのような仕上がりになりましたか?

「『BAD MOODのキャラクターでなにか描いて欲しい』と言われて、水面下で進んでいるなと思っていてはいたんですけど、ようやく出来上がったものを目の当たりにして、こういうことだったんだなと。昨日は部屋でスウェットを着ていたんですけど、すごくかわいく仕上がっていて気に入っています。僕は、洋服にシワができるのが苦手なんですけど、生地に高級感もあってシワが出来にくく着やすいのもいいですね」

──BAD MOODはいつ頃から始まったプロジェクトなのですか?

「何かをやろうという気持ちは、最初はなかったんです。メンバーのSaoriが制作中に、よく口をへの字にしているなといつも思っていて、Saoriの似顔絵を描くときに口をへの字に描いていたんですけど、その落書きをキャラクター化したらどうだろうという話になりまして。

それを見た和田さん(End of the Worldクリエイティヴディレクター和田直希氏)が『このキャラクターを軸に何か創作してみては?』と。当初BAD MOODは、 SEKAI NO OWARIの東京ドームでのライヴのコンセプトにする話もあったんです。だけど話がだんだんと大きくなり始めて、これはバンドから引き離した方がいいんじゃないかということになり、それでBAD MOODをどうしようか考えたところ『アニメーションにして、ストーリー考えてみる?』となり、徐々にスタートしていったんです。

プロジェクトスタートのときの想いについてはこちらでもコメントしているのですが、自分にとってクリエイティブとはある種の防衛本能的なものであると同時にネガティブな状況から前へ進む為の前向きなもの。だから“BAD MOOD” とは自分にとってのクリエイティブの源を意味しています」

アニメは大胆かつ、なるべく多くの人を傷つけないように

──2020年10月21日(水)より「Amazon Prime Video」で配信されるアニメ「BAD MOOD」は、皮肉的なメッセージを発する5人の不思議なキャラクターで結成されたバンド「ピンクエレファンツ」のクレイジーで平穏な日常を描いたものとのことですが、ストーリーは誰が考えているんですか?

「ストーリーの大枠は僕が考えていますが、セリフや言い回しになどの表現に関しては海外で仕事をしているスタッフの力も借りながら、なるべく多くの人を傷つけないように考えています。だけど何かを伝えるときにあまりにも丸くしてしまうと伝わらないこともあるので、そのギリギリをやっていきたい。ちなみにエピソード1はイントロダクション的な感じですが、2話からいきなり突っ込んだ内容になっていて、どんどん大胆になっていきます(笑)」

──アニメも「Merch by Amazon」同様にワールドワイドに展開されていく企画になりますが、世界に向けて意識された部分はありますか?

「ストーリー設定ですね。世界に目を向けると、日本国内だけで観ている視点とは異なったりするので、どういう表現をするかは勉強していかなくてはいけないなと。例えば日本では面白いと思ったことも、それが海外では差別の表現だったりすることもあるだろうし、国によって感じることはそれぞれ違うこともある。だから、日本から海外へ出て行くとなったときに、すべての国に対して問題がないとは言えないですけど、できる限り問題にならないよう皆で話し合いながら作っています。分かってやっているのはいいですけど、無知で進めていくことはしたくないと思っているので」

自分がデザインをしたキャラクターがプリントされた服をファンの人たちにも着てもらいたい

──世界へ出て行く際に、今後やってみたいことなどはありますか?

「僕は空間をデザインするのが好きだったり、得意だったりするので、それこそ遊園地みたいにBAD MOODの世界に入れる空間みたいなのを作ってみたいですね」

──バーチャルではなく、生の世界ですね。

「生の強さはいちばんだと思っているので。そこまで大きくなくても、小さなところから世界観を伝えられたりしたらいいな」

──その感覚は現場=ライヴを大切にしてきたからこそでしょうか?

「SEKAI NO OWARIを始めたときも、もともと工場だった場所をライヴハウスに作り直したんですけど、自分がデザインをした空間で演奏をしたかったこともあり、そのデザインを考えるのが大好きだったんです。そんな感じでBAD MOODのでもその世界観の中に入れるものはやってみたいなと思いますね。あとファッション的に言えば、好きなブランドとどんどんコラボしていって、自分がデザインをしたキャラクターがプリントされた服を自分で着ることができたら嬉しいなと思うし、ファンの人たちにも着てもらいたいなと思っています」

──ここ最近のご自身のファッション観はいかがですか?

「コロナ禍になってからは買い物が減ったんですけど、それこそAmazonの使用率は増えました。僕は着心地のいいものを選ぶので、そういったものばかりを通販で買っています。最近はステージに上がることも減りましたし、こうやってBAD MOODのストーリーを作ったり、自分のバンドのレコーディングをしたりしているので、とにかく着心地重視。それと清潔感があるものを探しています」

これまでの10年とこれからの10年

──今年はSEKAI NO OWARIデビュー10周年ですが、この10年はいかがでしたか? また、10年という月日を経てご自身の中で成長したことはありますか?

「良い10年だったなと思います。たぶんですけど、ほとんど変わっていないです(笑)。変わった部分があるとしたら体力がつきました。昔は体が弱くて、体調がいつも悪かったというか、『情熱大陸』(2014年放映)を見返すと365日中360日体調が悪いって言っているんですよ。今は365日中360日調子がいいです。SEKAI NO OWARIがあって、 End of the Worldがあって、BAD MOODがあって。絵本も描いているので、いろいろなものに手を出せるくらい体力がある。たまに頭の中がゴチャゴチャ! とはしますけど、そこがいちばん変わったところですね」

──ちなみに、10年後はどのような展望を描いていますか?

「ボヤいていない44歳になりたいですね。『もう若くねえな』とか、100%言いたくない(笑)。演技指導をされている方に聞いたのですが、自分が口に出したことは、脳が嘘だと思わないようにするらしくて。いくら台詞でも、口に出すともともと自分が考えていたことかのように脳に刷り込まれていってしまう。そういう意味で役が抜けないとか、役が憑依してしまうということがあるんだと。科学的にひもといてそういうことらしいので『そんなのはできない』って10年後の自分にもボヤいてほしくはないし、10年後には30歳のときよりも体力があるって言っていたいですね」

※気になるMerch by Amazonコラボグッズの詳細は近日リリース予定!

 

Photos:Takao Iwasawa Interview & Text:Kana Yoshioka Edit:Mariko Kimbara

Profile

Fukaseフカセ 日本を代表するグループ、SEKAI NO OWARIのボーカリスト。数々の楽曲・世界観を創造し、その歌声は幅広いファン層を魅了する。彼の鋭い感性と才能はファッションにおいても発揮され、国内外のファッション誌に度々登場。その存在感は新しいトレンドを作っていく存在となっている。近年では、単独でのCM出演や、独特なタッチで描かれる絵画にも注目が集まるなど、多方面から高い評価を受けている。
BAD MOODバッドムード Fukaseがデザインと監修を手掛け、新しい価値観の誕生を期待させるアニメーションプロジェクト「BAD MOOD(バッドムード)」。皮肉的なメッセージを発する 5人の不思議なキャラクターによるストーリーを中心に、多様な手法でクリエイティブを展開する。クリエイティブディレクターには、 SEKAI NO OWARIのグローバル・プロジェクトである End of the Worldのクリエイティブディレクターも務める和田直希を起用。 今後様々な国内外のブランドとコラボレ ーションを予定しているほか、Amazon Prime Videoにて2020年10月21日(水)よりアニメーションの配信がスタート。視聴はこちら

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