Interview / Post
写真史および芸術表現における最も重要な分岐点の一つ。それが、ロバート・メイプルソープ(1946〜89)の登場であったと言っても過言ではないだろう。精緻な構図と、大胆なモチーフ。ときに表現の過激さで、大きな議論を巻き起こしてきた彼の作品世界を紹介する「MEMENTO MORI ロバート メイプルソープ写真展 ピーター マリーノコレクション」が、現在、シャネル・ネクサス・ホール(東京・銀座)で開催中だ。
これほど網羅的にメイプルソープ作品を展示する展覧会としては、2002年以来初となるが、出展作はすべて世界的建築家のピーター・マリーノが所有するコレクションによるものだ。じつは、シャネル銀座ビルディングおよびこのシャネル・ネクサス・ホールの設計を手がけたのも、マリーノ自身であるという。メイプルソープ作品の最も重要なコレクターの一人としても知られる彼に、本展におけるこだわりやメイプルソープへの思いについてお話をうかがった。
メイプルソープの偉大さを伝えるために
──この展覧会が実現したきっかけはどんなものだったのでしょうか?
「2014年に、アメリカのマイアミにあるバス美術館で開催した『ワン・ウェイ ピーター マリーノ』展は、私のアートコレクションを初めて公開した展覧会でした。そこで、メイプルソープ作品をフィーチャーした展示室を設けたんですが、これを見たシャネルのリシャール・コラス社長が、ぜひ東京でも展覧会を開催したいとオファーしてくださったんです」
──今回、ご自身で作品のセレクトや会場設計も手がけられていますが、どういったことを念頭に構成なさったのでしょうか?
「私が所有するメイプルソープ作品は150点ほどになりますが、今回、展示することができたのは、そのうちの90点ほどになります。すべてをお見せすることはできないながらも、鑑賞してくださる方々にはロバート・メイプルソープがどれほど素晴らしいアーティストであったかを理解していただきたいと思っているんです」
世界的建築家が語るメイプルソープの世界@シャネル・ネクサス・ホール
東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールにて、伝説の写真家ロバート・メイプルソープの展覧会がついに開幕した。日本ではじつに15年ぶりとなる大規模展示。プライベートコレクションを公開した世界的建築家ピーター・マリーノに、その意義と思いを聞いた。
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Interview & Text:Akiko Tomita
Edit : Keita Fukasawa
Profile
Peter Marino(ピーター・マリーノ)
建築家。ピーター・マリーノ設計事務所代表として、ニューヨークにて160名のスタッフを抱え、世界各国でラグジュアリーブランドの店舗やリゾートホテル、セレブリティの邸宅などを設計。日本においては、シャネル銀座ビルディングをはじめ、シャネル表参道店、大阪・心斎橋店などを手がける。アートコレクターとしても知られ、ロバート・メイプルソープ作品を含む自身のアートコレクションを展示した「One Way: Peter Marino」展(マイアミ・バス美術館、2014-15年)では自ら展示構成を行い、話題を集めた。フランス文化勲章をはじめ、受賞も多数。(Photo:Yuji Namba)