世界的建築家が語るメイプルソープの世界@シャネル・ネクサス・ホール | Numero TOKYO - Part 3
Interview / Post

世界的建築家が語るメイプルソープの世界@シャネル・ネクサス・ホール

東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールにて、伝説の写真家ロバート・メイプルソープの展覧会がついに開幕した。日本ではじつに15年ぶりとなる大規模展示。プライベートコレクションを公開した世界的建築家ピーター・マリーノに、その意義と思いを聞いた。

07_Tulip,1984 Gelatin Silver Print 70年代ニューヨーク、アートシーンの輝き ──ご自身はアンディ・ウォーホルともお知り合いで、建築家としてファクトリーのリニューアルも手がけられました。自ら70年代ニューヨークのアートシーンに身を置いていらしたわけですが、当時の状況についてお教えいただけますか? 「当時のニューヨークは、20世紀で最も開放的な場でした。あの時代を生きることができて本当によかったと思っています。 そして、ぜひ思い出していただきたいのは、芸術において非常に特別な状況にあったということです。まず、ウォーホルに代表されるようなポップアートが台頭していましたが、その一方で、マーク・ロスコやウィレム・デ・クーニングといった抽象表現主義の作家たちが、自分たちが行っていることこそが真の芸術であると主張していました。今思えば、なぜ彼らはあれほど対立していたのかと不思議に思いますが、とにかく、傑出したアートが同時期に存在した、とても特異な時代であったことは確かなのです」 08_1739_Thomas_1987_300dpi 至高の写真家、メイプルソープに敬意を表して ──メイプルソープはそんな中から登場してきたわけですね? 「あの時代こそが、20世紀芸術における最高の高みだったと言えるのではないでしょうか。なぜなら、あれからおよそ50年が経つわけですが、60年代、70年代に達成されたのと同じ高みに到達した作家は、その後、現れていないからです。そして驚くべきことに、メイプルソープを超える写真家も、いまだに存在していないのです」 ──偉大な作家とはどのようなものであると考えていらっしゃいますか? 「優れたアーティストであるための条件は、時代を超えてその先に進んでいける人であるかどうかだと思っています。そして、優れた作品であるかどうかは、そこに普遍的な真実があるかどうかによって決まるのです。言うまでもなく、メイプルソープはそんな作品を作ることができる偉大な芸術家でした。 彼の作品をご覧になるときには、それが半世紀近く前の作品であるということをぜひ念頭において見ていただきたいのです。それほど前の作品であるにもかかわらず、昨日撮った写真だと言ってもおかしくないほどモダンな魅力をもった作品であることに、きっと驚かれることでしょう」 09_029_DSC2090 「MEMENTO MORI ロバート メイプルソープ写真展 ピーター マリーノコレクション」 会期/開催中〜2017年4月9日(日) 会場/シャネル・ネクサス・ホール 住所/東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F 開館時間/12:00〜20:00 休館日/なし 入場料/無料 URL/chanelnexushall.jp/program/2017/rm_peter_marino/ ※巡回展情報 …会期終了後、「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」のプログラムとして京都へ巡回。 会期/2017年4月15日(土)〜5月14日(日) 会場/誉田屋源兵衛 竹院の間 住所/京都府京都市中京区室町通三条下ル西側 開館時間/10:00〜18:00 休館日/水曜休館(5月3日を除く) 入場料/無料 URL/www.kyotographie.jp (※本誌掲載情報) ※1 …『Numero TOKYO』4月号(2月28日発売)掲載記事「ロバート・メイプルソープ、再び」にて、本展覧会を6ページでフィーチャー。ピーター・マリーノからのコメントも掲載。

Interview & Text:Akiko Tomita
Edit : Keita Fukasawa

Profile

Peter Marino(ピーター・マリーノ) 建築家。ピーター・マリーノ設計事務所代表として、ニューヨークにて160名のスタッフを抱え、世界各国でラグジュアリーブランドの店舗やリゾートホテル、セレブリティの邸宅などを設計。日本においては、シャネル銀座ビルディングをはじめ、シャネル表参道店、大阪・心斎橋店などを手がける。アートコレクターとしても知られ、ロバート・メイプルソープ作品を含む自身のアートコレクションを展示した「One Way: Peter Marino」展(マイアミ・バス美術館、2014-15年)では自ら展示構成を行い、話題を集めた。フランス文化勲章をはじめ、受賞も多数。(Photo:Yuji Namba)

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