坂本美雨&山口博之&娘・なまこちゃん「猫のサバ美がくれた宝物」 | Numero TOKYO
Interview / Post

坂本美雨&山口博之&娘・なまこちゃん「猫のサバ美がくれた宝物」

愛情によって結びついている家族。動物たちを家族の一員として迎え入れることで得たスペシャルなものとは? 写真家、篠山紀信が捉えたポートレートとインタビュー。(「ヌメロ・トウキョウ」7・8月合併号掲載)

 

──なまこちゃん(愛称/4歳)が家族に加わって、生活は変わりましたか。

山口(以下Y)「はい。すっかり子ども中心の生活になりましたね。僕は朝、保育園に送っていくため、単純に生活の時間が早まりました。また土・日に仕事ができなくなったという変化はありますね」


坂本(以下S)
「私はマネージャーに協力してもらい、平日の16時までに仕事を終えて保育園へ迎えに行きます。朝はご飯を食べさせて送り出し。その間、早く!ってキレまくってる(笑)。週末はライブで地方に行くことが多く、完全に夫に任せて2、3日留守にすることも」


Y
「ゴールデンウィークが始まって3日間は僕の担当でした。お互いに出張があるので、なまこもパパとママのどちらかがいればOK」


S
「クールというか、そういうものだと思っているので。『ママはお歌だから行ってくるね』と言うと、『大丈夫、わかってるよ』って」

──偉いですね。家族としては愛猫のサバ美ちゃんのほうが先輩かと。

Y「はい。初めのうちはなまことサバ美は距離を取り、お互いをけん制し合っていました。もともとサバ美はベタベタするタイプではなくて」

S「なまこにとって、サバ美は生まれたときからいるのが当たり前。特別に可愛がるという対象ではなく、普通に家族としている感じですね。だから本当にクール。サバ美はサバ美で、絶対になまこを傷付けない。もちろん必要以上に強く触ってきたりすると、パシンって、教育的指導は入るけど」

Y「二人の距離が縮まってきたのは、ここ半年ほどじゃないかな」

S「ようやく、なまこが撫で方、抱き方を覚えて。自分の体が大きくなってきたから抱っこもできるようになりました。最近では猫吸いも(笑)」

Y「まれにサバ美となまこがくっついて寝ていることがありますね」

S「といっても、なまこがサバ美の上に乗っかって寝てる(笑)。最初にそれを見たときは感動しました」

Y「ちょうどなまこが1歳の誕生日になる頃かな。サバ美がなまこを認めたのかなぁと」

──サバ美ちゃんが家族になって何年ですか。

S「今年で9年目です。私が愛護団体のボランティアや啓蒙活動をするようになった頃に、里親募集のサイトで本当にちっちゃい写真を見つけて、はっ!と一目惚れ。保護団体から譲渡してもらったんです。膨大な数の写真の中でぱっと目が合った」

Y「タビちゃんに似ていたからなんでしょ?」

S「そうかも。タビちゃんは私がまだ子どもの頃に最初に拾った猫。引っ越し先のニューヨークまで連れていきました。ニューヨークではマイケル、チーズ、プーとどんどん増えて、猫4匹に」

Y「その前の高円寺に住んでいた頃も、野良を含めて、美雨の周りには猫がたくさんいたんでしょう?」

S「高円寺に住み出したのは私が3歳頃。野良猫がとにかく多い町で、庭にたくさん来ていました。幼い私がモドキに絵本を読んでいる写真が残っています。高円寺のボスのアシュラとヤナヤツもよく来てた」

Y「教授(坂本龍一)の曲『M.A.Y.in the Backyard』のM.A.Y.は、その3匹の名前の頭文字なんですよ」

S「野良猫は汚くて病気を持っていたりもするけど、家族はみんな可愛がっていて、汚いなんて一度も言われたことなかった。そういう教育が良かったと思います」

──サバ美ちゃんはどんな性格?

Y「彼女は拾われる前に虐待を受けていたんです。それなのに、人に寄っていくタイプの猫」

S「私はサバ美が人間に対して、ずっと心を開き続ける、疑わないところを心から尊敬しています。本当に寛大な子!」

Y「なまこもサバ美がそばにいることで、何かにとらわれずに自分のペースで生きていいんだって思ってくれたらいいなぁ」

S「私がサバ美を飼い始めたのは独身のとき。留守をする間はお世話してあげると友人が言ってくれて、踏み切れたところがありました。それから猫親戚ができました。留守時に猫を世話するため、いつでも家に入れるように鍵を預け合う仲間が5、6人。今はそれぞれに家族ができて、家族ぐるみの付き合いになりました」

──それは心強い仲間ですね。

S「ほんと、血のつながった家族よりも近いくらい。もはやお互いの猫を他人とは思えないし、一緒に死を乗り越えたこともあります。猫親戚は宝物、サバちゃんがもたらしてくれた素晴らしい恵みです。猫親戚付き合いから、夫とも知り合えました」

Y「僕、結婚してから猫アレルギーが発覚したんですよ。それでも、もう猫のいない人生は考えられない。同じマンション内に親しい友人が住んでいて、お互いの猫を世話し合っています。そんな仲間がいると、出張多いから飼えないと躊躇する家もサポートできる。猫の命を預かる責任感は、もしかしたら鍵よりも重たいかもしれない」

S「ペットは家族として命を全うするまで責任を持って飼わなければ。そのためにも猫親戚は大切です。こんな人間付き合いがもっと発展して、子どももみんなで育てることが当たり前になるといいかな。孤立がいちばん、児童虐待につながり、傷を残すものだから」

──確かに。家族のテンションが最も上がるのは、どんな時ですか。

Y「アイスを食べに行くときかな?」

S「そうね。アイスは正義だね」

──仲良しの秘訣ですね。なまこちゃんにどんな大人に育ってほしい?

S「多くの大人を見て、多様な価値観に触れてほしい。一つ駄目でも、他にちゃんと逃げ道がある、いじめに遭っても自分には違う世界があると思えるように」

Y「一人でいる時間を嫌な時間だと思わないでほしいです。一人は孤独、寂しい、嫌だとか思いがちだけど、一人でいる時間が意味のないことだとか、寂しくて仕方がないと捉えないでほしい」

S「あとは好きなことをたくさん見つけて、伸び伸び育ってくれたら」

Y「そうですね。幸い、伸び伸びすぎるくらいに育っています(笑)」

──なまこちゃんはサバ美ちゃんのこと、どう思ってるの?

なまこ(以下N)「何も思ってない」

S「お姉ちゃん? お友達?」

N「お友達はアヤハちゃん」

S「そうか。じゃあサバ美のことは好き?」

N「好、き、だ、よー!」

Y「…だそうです(笑)」

Photos: Kishin Shinoyama Hair : Hori Makeup : Kazuko Hayasaka Text : Atsuko Udo Edit : Yuko Aoki, Michie Mito

Profile

坂本美雨 & 山口博之Miu Sakamoto & Hiroyuki Yamaguchi ミュージシャンとして活動する坂本美雨とブックディレクター山口博之ファミリー。家族で楽しめるというお気に入りの動物園も教えてくれた。

Magazine

DECEMBER 2024 N°182

2024.10.28 発売

Gift of Giving

ギフトの悦び

オンライン書店で購入する