産めるカラダは腸で決まる!妊娠力と腸の関係
“産めるカラダ”には期限がある。高齢出産、深刻な不妊問題を抱える日本人女性にとって早い段階で、食事を含めた正しい知識を持つことの大切さが、問われる時代に。「女性の幸せは腸と子宮が決定する」と断言でき、意外にも腸と妊娠力には深い関係が。予防医療コンサルタントの細川モモさんが「腸と子宮の付き合い方」を指南。まずは“母になる寿命”があることを知ることからスタート。(「ヌメロ・トウキョウ」2014年5月号掲載)
女性特有の不調や悩みは、おおむね腸と子宮に属すると言われている。不妊の原因となるPMSひとつとっても、80~90%の女性が経験したことがあり、症状はメンタルにまでネガティブに影響。それらの不調は、女性のイベントに関わるものであることが多く、さらに掘り下げるとPMSを引き起こす幸せホルモン「セロトニン」は、脳と腸で作られている。つまり、女性として毎日、キレイに若々しく幸せに生きる鍵は、「いかに腸と子宮とうまく付き合っていか?」ということにかかっているのだ。 しかしながら、日本人女性の4人に1人が少なくとも腸の働きの停滞である便秘に悩み、女性のがん死亡率の第1位は大腸がんという現状。これは、日本の食生活がすっかり欧米化してしまったことにより、いま日本女性は腸に深刻な問題を抱えることに…。クヨクヨ、イライラなどのネガティブなメンタルが、腸や婦人科系の機能から来ているということを認識することが大切になってくる。
日本に予防医療を普及させることを目指し、医療・健康・食の専門家が集って発足した「Luvtelli(ラブテリ)」を主宰する細川モモさんは、近年、世界一規模の「卵巣年齢研究プロジェクト」など、出産の高齢化が進む日本人女性の深刻な現状や、妊娠・出産という女性の一大イベントをライフスタイルの一貫として、分かりやすく伝え私たちのヘルスリテラシーを高める活動を行っている。
「加齢に応じて、“現状維持”はできません。誰もが歳をとるという自然のプロセスのなかで、加齢によって腸内環境や子宮機能は確実に悪化するのです」と細川さん。だからこそ、「医療が発達した現代、ほしいときにいつで子どもは産める」と思うのは、神話を信じるようなもの。「35歳をすぎると卵子の質が低下し、赤ちゃんに影響も出てます。30歳越えの高年齢出産がスタンダードとなった現代は、7人に1人は不妊に悩む時代に。女性の人生に出産という大きなイベントがあり、“子どもを産みたい”とう思いが少しでもあるなら、20代の若いときから知識を持つことが大切。卵子の質の低下、卵巣年齢(AMH)の高齢化は取り戻せないリスクです。結局、ツケがくるのは分の体です」
腸と子宮の健康を考えるということは、今よりもっと健に美しく、女性として幸せな人生を送る可能性を高めるいうこと。
「21世紀の医療の主流は、テーラーメイド医療つまり自分に必要な食品や栄養素を把握し、自分の体をパーソナルに理解する。一人ひとりにマッチングしたサビスが処方される時代になると思います。妊娠できる体づくりのために、自分のライフスタイルを描きながら、早い段階で自分の体と向き合い正しい知識をつけることで、後悔しない幸せな一生を送ってほしいです」。これからは自分でしっかりリスクマネージメントする時代に。
子どもがほしいなら、これだけは守って!
リスクマネージメントの6カ条
1. ストレスを溜めない
2. 腸内環境を整える
3. 寝不足をしない
4. 食物繊維を意識してたっぷり摂取する
5. アルコール、カフェイン、喫煙は避ける
6. 添加物に注意する
7. とにかくしっかり栄養を摂る
日本女性の低すぎる“妊娠リテラシー”
妊娠に準備を、高齢出産と妊娠リテラシー
英カーディフ大学の調査によると、日本人の妊娠に対する知識レベルは国際的に見ても低く、先進国のなかでは最低水準であることがわかっています。また、女性の肥満や加齢などが妊娠・生殖機能を低下させることなどへの認識も低かったそうです。世界的に見ても教育レベルが高いとされている日本人の、妊娠および女性の加齢に伴う体の変化についての知識の低さが露呈したこの驚くべき結果が、出生率の低さにつながっていることも専門家は指摘しています。
確かに私たち日本の女性は、学校教育のなかで加齢に伴う女性の体の変化や妊娠にまつわる十分な知識について教わる機会がありません。多くの日本女性は、お腹に子どもが宿ってから「妊娠中にどんなことをすればよいのかな?」と勉強し始めます。しかし、それでは流産や早産、低出生体重児、奇形児や障害児を予防するには遅い可能性があり、母体も妊娠糖尿病などを発症するリスクがあるのです。
私が主宰するラブテリでは、“妊娠に準備を”という新たな価値観を提唱すべく多くの専門家とともに活動しています。早めのリスクマネージメントによって皆さんが安心して妊娠、出産を迎えられるようサポートしていくなかで、基本となるのはBMIや体脂肪、食事やサプリメントに関する相談です。そのなかでも「どうすれば精子や卵子の質(数や運動率)を食事で高めていけるのか?」という質問が最多です。
日本人女性全体の妊娠リテラシーの低さを考えた時、これはもはや不妊治療対象者のみに限ったことではなくなっています。韓国では、女の子はいつか子どもを授かるものとして、体を冷やさないように大切に育てられるのだそうです。日本人の私たちも、10代や20代から準備をしておいて早過ぎるということはありません。そして増加の一途である30歳を過ぎての妊娠においては、よりいっそう正しい知識を把握し、日常におけるヘルスリテラシーの向上に心がけて、精子、卵子ともに質を高めていきましょう。
妊娠に関する知識の国別順位
1位 ニュージーランド
2位 オーストラリア
3位 英国
4位 ポルトガル
5位 デンマーク
6位 カナダ
7位 米国
8位 フランス
9位 スペイン
10位 ドイツ
11位 メキシコ
12位 イタリア
13位 ブラジル
14位 ロシア
15位 インド
16位 中国
17位 日本
18位 トルコ
英カーディフ大学・製薬会社メルクセローノ共同研究
18カ国1万人(平均年齢31.8歳)の調査結果
母になれる寿命、卵巣年齢を知る大切さ
女性は生まれた時点で一生の卵子の数が決まっています。驚くべきことにまず、出生時の段階で700万個から200万個に大幅に減り、初経を迎える12、13歳頃に30万個になり、35歳になると残っているのは約2~3万個と言われています。現在は卵巣にいくつ卵子が残っているのかを示す“卵巣年齢” を調べることができる時代。“卵巣年齢”は卵巣予備能力、妊娠予備能力、生殖予備能力とも呼ばれ、卵子の在庫を調べられる。これがゼロになると、約5年以内に閉経を迎えるといわれています。
しかし、卵巣年齢は血管年齢や骨年齢と同様に、必ずしも実年齢に比例するものではなく非常に個人差があります。卵巣年齢を調べるときには、血液中のAMH(抗ミュラー管ホルモン)の濃度を調べます。主宰するラブテリでは、3桁以上の女性の血液検査のデータを保有していますが、20代女性であってもAMHが低く40代並みの卵巣年齢ということもあります。卵巣に残っている卵子が少ないということは、妊娠したい時期を先延ばしにしていると妊娠の確率がどんどん低くなってしまうわけです。年齢が若くても自分の卵巣年齢が高いことがわかり、子どもを授かりたいと思っている場合には、できるだけ早く妊娠に向けての次のステップを考えたほうが良いといえます。
また、卵巣年齢と卵子の老化(加齢)は別問題。卵巣年齢と違って、卵子の質は実年齢に比例して低下します。卵巣に残っている卵子の数が多くても少なくても、20代をピークとして卵子の質は低下していく傾向にあるのです。卵子は老いてしまうと若返らせることは不可能なため、35歳を境にガクッと妊娠力が落ちるといわれています。
特に病気などをしていない、健康な日常生活が送れているから「子どもは授かりたい時に生める」というのは、大きな勘違いです。ラブテリでは“体から見たキャリアプラン設計”を推奨しています。その第一歩が、自分の卵巣年齢を知っておくこと。卵巣年齢のみであれば、産婦人科で調べることが可能です。卵巣年齢に付随して、卵子の質を低下させないために必要な、血液中の栄養素の状況なども調べることができます。
Supervision : Momo Hosokawa Illustration : Izuru Aminaka Text : Kumiko Ishizuka, Hisako Yamazaki Edit : Hisako Yamazaki