Trip / Feature

美意識を磨きに出かけたい、東京近郊の隠れ名スポット

私たちは、さまざまなモノやコトとの“出合い”でつくられる。訪れるだけで私たちの美意識を高めてくれる、センスやこだわりの詰まったショップやレストランに出かけてみよう。東京からちょっと足を伸ばして訪れたい、知る人ぞ知る穴場スポットへ。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年10月号掲載)


見る/小田原

小田原文化財団 江之浦測候所

小田原から日本文化を世界へと発信する文化施設

構想から10年の歳月をかけて建設が進められ、昨年の秋に完成した小田原文化財団 江之浦測候所。国内外への日本文化芸術の発信地となってほしいという構想のもと、現代美術作家の杉本博司が設計した。鮮やかな朝日が差し込むギャラリー棟や、まるで水面に浮かんでいるように見える舞台、茶室・庭園などで構成された施設群からは、日本の美しさを象徴する四季の景観の変化を肌で感じ取れるかのよう。

近代以前の人口密度を体感できるよう完全予約・入れ替え制を採用し、3000坪もの広さを誇る当施設を静かにゆっくりと見て回ることができる。人類アートの起源に立ち返った価値観のもとに生み出された空間を、壮大なランドスケープとともにぜひ堪能してほしい。

小田原文化財団 江之浦測候所

住所/神奈川県小田原市江之浦362-1
開館日/火・水
URL/www.odawara-af.com(公式ウェブサイトより要予約)

杉本博司が「江之浦測候所」に込めた思いとは?


足場材を敷き詰めた床と土壁の空間には、坂田さんが集めた世界各地の日用の道具が年代や種類に区別なく並ぶ。

見る/千葉

museum as it is

美しさの価値をそっと刺激する小さな美術館

千葉県の山の上に佇むミュージアム・アズ・イティイズ。ここは、目白で「古道具屋坂田」を45年間営む坂田和實さんが作った小さな美術館だ。趣のある土壁の建物の中には、日常に使われていたであろう古道具が点々と置かれている。


< 左>19世紀の朝鮮で作られた紙張り書棚には、大正時代のガラスコンポートと古墳時代の埴輪台
< 右>壁に和紙を張り付けた和室。

「人それぞれに美しいと感じるものは異なります。時代が古いから、希少だからといった学術的な評価は知識で得た価値であり、美しいとは限りません」と話す坂田さんの展示には、19世紀のイタリアの瓦、朝鮮の寺院で使用されていた紙張り書棚、使い古された自転車用のサドルカバー、折り畳み式の携帯電話など、地域も年代も種類も区別なく彼が美しいと感じた日常の品々だけが並ぶ。


サロンではコーヒーまたは煎茶が振る舞われ、味わいある家具で寛げる。

人によっては不要のものと思う人がいるかもしれない。でも「その一つでも心を揺り動かせればそれでいい。ただ見て感じてほしい」と言う。名もなき古道具たちが住む静かな空間は、鑑賞者の知識による価値観をゼロにし、自分の感性を信じる大切さをそっと教えてくれる。


1994年に開館。建物の設計は中村好文さん。美術館名は「ただ、そのまま」という禅の言葉から。

museum as it is

住所/千葉県長生郡長南町岩撫41
TEL/0475-46-2108
開館時間/10:30~16:00
開館日/金・土・日・祝日
入館料/¥800
URL/asitis.sakatakazumi.com/


吹き抜けの本ラウンジ。本棚の中には自分の世界に浸れる“お籠もり空間”が隠されている。

泊まる/箱根

箱根本箱

ホテルでの本との出合いが新たな知識を紡ぐ

エントランスを入り、まず目にするのは天井高の棚に並ぶ圧倒的な本たち。今年8月にオープンした箱根本箱は、その名のとおり館内の随所でさまざまな本に出合えるホテルだ。「駅前の本屋にふらっと立ち寄り、偶然手にした一冊で興味や知識が広がった経験ってありませんか」と話し始めたのはプロデュースを手がけた岩佐十良さん。「駅前本屋が減り偶然に触れる機会が少なくなった今、あの本との出合いがホテルでできたら」、そう思いスタートしたという。


<左>各部屋には37名の著名人たちが選書した移動式の「あの人の本箱」をひとつ設置。誰の本箱かは来館してからの楽しみ。本は購入も可能。
<右>館内には地産地消の自然派イタリアンを堪能できるレストランも。

ここには「衣」「食」「住」「遊」「休」「知」をテーマに1万2千冊が蔵書され、自由に読むことができる。全室に温泉露天風呂を備えた客室には、作家や著名人たちが選んだ「あの人の本箱」も置かれ、選者の知識の源を覗くような、つい手に取りたくなる仕掛けも。小説を読みながらベッドで過ごしてもいい。テラスで写真集を眺めてもいい。温泉で体を癒やすとともに、本が新たな知識の扉を叩いてくれる、そんなホテルだ。


全室テラスと温泉露天風呂が備わり、ゆったりとした時間を過ごすことができる。


元保養所の施設をリノベーション。

箱根本箱

住所/神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-491
TEL/0460-83-8025
料金/1泊2食¥18,321~(2名利用時の1名料金)
URL/hakonehonbako.com/

箱根本箱の情報を見る

買う/栃木

pejite

古家具に新しい命を吹き込む

ものづくりの良さに触れることが随分少なくなってしまったように感じる。しかしペジテに訪れると、大量生産では作れない日本人の手仕事が感じられる品々に出合える。場所は栃木・益子町。オーナーである仁平透さんは、母体である仁平古家具店を経営しているなかで、既存の古家具・古道具店とは異なる手仕事を感じられるお店を始めたいと考えていたところ、築60年以上の大谷石造りの蔵に出合い、ペジテを立ち上げた。

天井の高い広々とした洗練された空間には、明治から大正期の家具を現代の空間にも馴染むように塗装を落とすなど、修理・再生を行い、新しい姿に形を変えた一点物の品々が並ぶ。インターネットなどでは得られない“温かみ”と“場の力”を肌で感じてほしい。

pejite

住所/栃木県芳賀郡益子町益子973−6
TEL/0285-81-5494
営業時間/11:00~18:00
定休日/木
URL/www.pejite-mashiko.com

美意識がアップする、東京のショップ空間へ

Photos:Tokyo Okabe(museum as it is、箱根本箱)Text:Akane Maekawa(museum as it is、箱根本箱) Edit:Sayaka Ito, Saki Shibata

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