「写真を撮ることの結論がでちゃいました」写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.3 | Numero TOKYO - Part 3
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「写真を撮ることの結論がでちゃいました」写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.3

K:結局そういうことで、写真ってうまく撮ろうと思って撮るものじゃないんだよね。でも何も考えていないかというとそうでもなくて、よく撮ろうとは考えています。いいねって思える場面を探る。そこでシャッターを切れば、どんなカメラを使っていても、どんなライティングでもいい写真になるんです。僕はインスタントカメラ以外にもデジタルだったり、色々なカメラを使っていて、おもちゃのカメラも愛用しています。それも、いまどきなトイカメラではなくて、本当に巻いて押すだけの簡易的なもので、光も入ってくるし、フィルムにもすぐ傷がつくし、ハレーションも起こすカメラ。だから、頭でどんなに考えようと一切コントロールできなくて、ただただシャッターを切るだけ。だから、僕が想像している映像とは違ったものが上がってきます。それをフィルムからどういう風に焼き付けるか、僕が勝負できるのはここだけなんですね。でもその想像を覆すところにワクワク感があったりします。昔、広告の撮影で海外ロケへ行って、いいカメラでフィルムもさんざん使うんだけど、最後の最後に思い出したようにポケットに入っていたそのおもちゃのカメラを取り出して何気なく撮ったら、みんながおもしろがっていい表情になったというエピソードがあります。帰国して現像したら、結局それが一番いい写真で、実際にそれを使うことにもなりました。それまでいいカメラで撮った写真は何だったのか。ここで分かるのは、自分が“いい”と思える写真まで持っていってくれるのは、カメラの問題ではなくて心の問題。そして、選ぶとき。セレクトする際に、それを“いい”と言える感覚はとても重要です。おもちゃのカメラで撮ったものはぶれていたり、きちんとは撮れていなかったりするけど、それをだめだとは決めつけない。直感でおもしろいと思ったら、ちゃんとピックアップして、それを使おうとする勇気を持つ事。心が動くものを素直に選べば、それが“いい写真”となるんです。写真をやっていくには、このポイントしかない、という先入観を持った自分を壊しながら進むしかない。だって、自分じゃ撮れないものに惹かれるから、いまの自分には撮れない面白いものを、次の自分は撮らなきゃ納得いかないんだからね。自分で壊しながら、直線じゃなくじぐざぐと時間を進めて、前に行くってことが写真ということなのかなと思っています。写真を撮ることの結論がでちゃいましたね。
写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.3
写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.3
Photo:IMPOSSIBLE Styling:Yasuhiro Watanabe(FEMME)Interview: Hisako Motoo Edit:Maki Saito Text:Yukiko Ito

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