Culture / Post
「フィルムに惹かれるのには理由がある」写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.2
N:実際はそういう映画って、カメラだけぽんと渡されて、フィルムも入っていなくて、撮っているふりをするということがほとんどなのですが、操上さんは毎回“ちゃんとフィルムを入れなさい、シャッターをきりなさい”と言ってくれたので勉強になりました。
K:永瀬さんの写真を撮る姿とか構え方とかフィルムの巻き方は、自分の好みで動作的なことはお伝えしましたけど、それだけで選んだわけではありません。永瀬さんという存在、肉体と立ち居振る舞い、存在、まわりに集まる空気。そういった背景が写っているからいいんですよね。醸し出すリアリティが、テーマにあっていたからです。そういえば、あのときに渡したのは僕が普段使っていたカメラですね。僕のカメラを使ってくれてありがとうございました。
N:こちらこそ、操上さんのカメラをお借りしたので興奮して。しかも実際にフィルムが入っているので、撮影期間中そのカメラで撮った写真がいっぱいあります。操上さんのこともたくさん撮らせて頂きました。
K:たくさん撮っていましたね(笑)。役者と言えば、先日観た映画での痩せた風貌、あれはすごかったですね。
N:なんていうんでしょうか、現場のスタッフの皆さんのおかげです。あの映画は10日間で全部撮りきったので、撮影中に体重を落とすまでの時間があまり無くて。それでもがんばってくれて4日間もいただいたので、4日間何も食べず、水もほとんど飲みませんでした。スタッフの皆さんが必死でやりくりして作ってくれた大事な4日間だったので、無駄にするわけにはいかないですし。京都だったので、ひたすら街を歩いていましたね。写真を撮りながら。暑い時期だったので汗いっぱかきながら。
K:すごいですね。そういうことができる志って言うのかな。イメージに近づける努力。
N:僕は演技がへたくそなんで、そうやって一生懸命やらないとだめなんですよね。
K:そういう時って、意外と頭は冴えているでしょ。
N:そうなんです。逆に頭はまわる。中毒で死んで行く役だったので、病気についていろいろ調べたり画像や資料を見ていく中で、ろれつがまわらなくなっている患者さんをいっぱい見ました。でもリハーサルでそれをやると本当っぽくないというか、お芝居にお芝居を塗ったような演技になってしまうと思って本番ではやらなかったんです。でもいざ本番を向かえると、気づかないうちに同じ動作を繰り返しやっていたようなんです、無意識で。ろれつがまわらなくて、何度も同じ言葉を言うのではなく、行動で何度も同じ事を繰り返していた。演技の中で突然やったことだったみたいなんですが、スタッフの人に言われて気づくようなことが他にも色々とありました。そういうことも、極限状態だったから出てきたことなんでしょうね。
Photo:IMPOSSIBLE Styling:Yasuhiro Watanabe(FEMME)Interview: Hisako Motoo Edit:Maki Saito Text:Yukiko Ito