「フィルムに惹かれるのには理由がある」写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.2 | Numero TOKYO - Part 2
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「フィルムに惹かれるのには理由がある」写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.2

K:フィルムを知らない、デジタルカメラしか知らない時代。僕自身は悪い意味では捉えていませんが、写真家っていうのはフィルムにこだわるイメージがありますよね。仕事をするにはデジタルカメラがもう主流ですが、フィルムのよさとか、印画紙がどうだとか語ったり、作品を撮る時はフィルムでなければいけないとか、すごくこだわる姿勢がある。仕事はデジタル、けれども作品はかならずインスタントカメラやゼラチンシルバーを使う。使わないと作品になったような気がしないといった思考で。写真展の話に戻りますが、それを逆手にとったのがこの展覧会。何が作品なのかを自分自身に問いただす。デジタルがなぜ作品っぽくないのか? ゼラチンシルバーだとどうして作品として納得できるのか? それって結局、観念とか趣味でしかない。会場のみなさんも、そういうのは考えない世代ですよね? それもありです。長年やってきた自分の観念としては、やはりフィルムでしか表現できないところに惹かれる生理感になっているんですよね。惹かれる触感とかは、フィルムを知らない世代に伝えたいですね。
N:そうですね。
K:デジタルカメラで撮影したものの色を変えたり、もしくはプリントをスキャンして加工したりと自由になってきて、そちらの方が仕事には向いている場合も多いから、僕自身もインスタントカメラにはちょっと縁遠くなっていますよね。今回の展覧会でも、一部スキャンという技術を使っています。飾っている中で、大きく引き延ばしているものがそうですね。一度画像にすることで多少コントロールはできるんですけど、あまりオリジナルから離れないように止めました。はじめに話しましたが、今回撮影したフィルムだと、オリジナルは撮った後もどんどん色が変わっていく。当たり前ですが、このスキャンしたものはここからさほどの変化はしない。そこが、フィルムがフィルムらしい面白さかなと。逆に自分で色を変えてトーンを変えてオリジナルからはなして、インスタントカメラで撮ったものとは違うものにしていくことで、自分の作品を作って行くという手法も面白いとは思いますよ。
N:僕も、お仕事ではデジタルで撮影するということが多くなっていますね。お仕事を頂いて何か撮る時は、フィルムで紙焼きを入れるというのは出版社の方に嫌がられたりしますから。デジタルのデータでくださいと言われることが多いです。
K:印刷所で印刷するときの製版って今、オリジナルじゃできないそうです。オリジナルで入稿しても、一度印刷所でスキャンされてデータ化されてします。自分の思った通りにデータにしてもらえるか分からないから、こちらでデータを作って渡してしまった方がいい場合もありますね。フィルムで撮ったものを自分でスキャンして、調整したデータを使ってもらった方が印刷のコントロールはしやすい。
N:操上さんが作られている雑誌『CAMEL』は、すべてフィルムのように見えますが、どうなんですか?
K:あれはデジタルではありません。『CAMEL』は苦労して作っていますよ。大変。でも、紙焼きをきちんと作っておけばいい作品になるんです。デジタルで撮影してデータにしている場合と、フィルムで撮って入稿した場合とで全然違うというのを改めて感じる。僕はこの先も、作品をきちんと作っていきたいですね。
写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.2
写真家・操上和美×永瀬正敏 対談 vol.2
Photo:IMPOSSIBLE Styling:Yasuhiro Watanabe(FEMME)Interview: Hisako Motoo Edit:Maki Saito Text:Yukiko Ito

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