アーティストが改めて考える“家族” vol.3 松岡一哲
急激な変化を余儀なくされたいま、あらためて日常とはなんと愛おしいものだろう。写真で表現するアーティストたちにとっての、家族のつながりとは。妻を撮影した写真集『マリイ』が話題の、松岡一哲の場合。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年10月号より抜粋)
思っていた以上に、よっぽど大切なこと
妻マリイの日常の姿を捉えた504枚にも及ぶ写真が掲載された写真集『マリイ』を2年前に作り上げた松岡。何げないふとした瞬間を捉えた写真を眺めていると、温かみのある「愛」の波動が伝わってきて、こちらまで優しい気持ちになる。
「家族がどんな存在なのかを考えることはあまりないですが、妻とは20年以上一緒にいるので、もの凄く大切だし、お互い頼りにしています。一人で生きているんじゃないと自然に感じさせてくれるんです」。とはいえ、妻の写真を一冊にまとめようなどとは思っていなかったことから、写真集の話をもらったときは思わず固まってしまったそうだ。
「なんですが僕の場合、日常の写真が作品になることもあるので、やってみようと思ったんです。妻は最初は撮られることに戸惑っていましたけどね(笑)。『マリイ』が出版され少し時間がたって思うことは、何が自分にとって美しいことなのか、その判断はあなたの中にある、僕がマリイに対して感じているような感情があれば、その他のものもそれくらい慈しめて、愛おしく見えてくるよということを伝えたかったです」。
画面に写っているものではなく、目に見えない人の感情をどう写真で捉えていくか。松岡にとって、平和な日々を過ごす術を教えてくれる家族は、まぎれもない最高の被写体だ。
Interview & Text:Kana Yoshioka Edit:Mariko Kimbara
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