Culture / Post

ニール・サイモン×三谷幸喜『23階の笑い』

「なんて年だ!」と、お笑いコンビの決め台詞風に呟いてしまいそうな2020年。この年が演劇界にとってもそんな風だったことは間違いない。

コロナ騒ぎで不要不急の外出は…の槍玉にあげられ、緊急事態宣言解除後、公演を再開すれば劇場由来のクラスター発生が連日取り上げられ、客席を間引いての公演や、オンラインで配信での公演が続く。

そんな2020年を締めくくる公演のひとつが、ニール・サイモン原作を三谷幸喜が演出する「23階の笑い」だ。

マッカーシズムに揺れる1953年のアメリカを背景に、テレビと政治を絡めたコントで人気を博す大物コメディアン、マックス・プリンスを支える作家たちの姿を描く物語になっている。小手伸也演じるコメディアン、マックス・プリンスには、彼を支える個性豊かな放送作家陣がいた。個性的な顔ぶれが切磋琢磨しながらコントづくりに励む毎日の中、政治的な話題を絡めるマックスのコントに、大衆受けを望むテレビ局上層部が厳しい要求を突き付けてくることで、物語は新たな展開を迎える。

物語の進行役でもある新入りライター・ルーカスは瀬戸康史。そして、マンハッタンの高層ビル23階に集う個性あふれる放送作家たちに、吉原光男、山崎一、鈴木浩介、浅野和之、梶原善、松岡茉優。マックスの秘書には青木さやかを配するなど、今、日本で最も信頼できる俳優たちが名を連ねる。

原作者であるニール・サイモンは演劇とテレビ、どちらにもすぐれた作品を生み出してきた名脚本家である。ユダヤ系の中流家庭に生まれ、幼いころに親戚をたらい回しにされるなどつらい時期がありながらも、右往左往する人々のおかしさ、そしてその中から生まれる人間の愛しさや切なさといったものをテンポよく描いていく作品が多い。ここまで読んで、あれ? と思った方は鋭い。まさに、日本で三谷幸喜が体現しているものである。

三谷幸喜は2018年のニール・サイモン死去の際、演劇の世界に進むきっかけになったのはニール・サイモンの「おかしな二人」だったとコメントしている。「僕もそういう脚本家でありたい」と。三谷が学生時代に作り上げた劇団名「東京サンシャインボーイズ」が、ニール・サイモンの戯曲にちなんでいることからも、その敬愛ぶりがうかがい知れる。

アメリカの演劇界、放送界は常に政治や社会に対する批判の目を光らせ、それをユーモアの形に変えて見るものに訴えかけ、確たる文化を築いてきた。ともすれば「コロナ」の一言で目が曇ってしまいそうな日々の中で、小気味いい笑いの中から、本当に見るべきもの感じるべきことは何なのか。日本にいる私たちにも、三谷幸喜の中のニール・サイモンが教えてくれるだろう。

舞台『23階の笑い』

作/ニール・サイモン
翻訳/徐賀世子
演出・上演台本/三谷幸喜
出演/瀬戸康史 松岡茉優 吉原光夫 小手伸也
鈴木浩介 梶原善 青木さやか 山崎一 浅野和之

日時/2020年12月5日(土)~12月27日(日)
会場/世田谷パブリックシアター
一般前売開始日/2020年11月22日(日)当日券あり
問い合わせ/シス・カンパニー 03-5423-5906(平日11:00~19:00)
URL/http://www.siscompany.com/23f/

Text: Reiko Nakamura

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