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他人の利を優先できる寛大な心は、自分を愛してこそ育まれる。

2021年3月27日(土)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2021年5月号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズ レター。

風の時代に突入し「これからは“利他愛”で生きましょう」とよく耳にします。“利己愛(=自己愛)”が自分の利を優先することに対して“、利他愛”は他人の利を優先させること。資本主義経済にどっぷり浸かってきた私たちにとって、自分の利を優先させないと、いつ何時してやられるかわからないような戦闘モード全開の社会だったわけですから、いまさら他人を優先だなんてとひるみそうですが、ご安心ください。風の時代には、今の形の資本主義は崩壊するそうで(簡単に言っちゃってますが)、そうなると物質ではない目に見えないものに価値が生まれ、満足を得ることになり、それが“利他愛”につながるそうです。ふむふむ。

娘が悩んでいました。人からの期待やイメージを壊さないよう必死で頑張って生きている自分に疲れたと。2年前、娘は中学受験をするも志望校に入れませんでした。結果、近くの公立中学に通学していますが、過酷な受験戦争を体験したことで、中学受験を味わわずに進学してきた生徒よりも学力が確実に上なのです。これは娘の能力が高いという話ではなく、受験勉強のハードルがいかに高いかという意味です。途端に優等生のグループに入った彼女は周囲のイメージや先生からの大きな期待を背負って、喜びを噛みしめながらそのポジションを楽しんでいました。が、ある日「本当に疲れるの。どうして人が思うイメージや期待に応えようと一生懸命生きなきゃいけないの? もうやだ。解放されたい!」。涙ながらに悩みを吐露する彼女は、自分が生み出してしまった優等生イメージを壊すわけにはいかないともがいていました。「どうして周囲が抱くイメージや期待に応えたいのか? そもそもあなた自身はどうありたいのか?」と一つ一つ絡まった糸をほぐすように話し合いが進みます。

「周囲が期待するイメージが壊れると残念に思うだろうから、失望をさせたくない」。なるほど。周りを思うがゆえに自身を犠牲にしてしまっているケースです。でもこれは、まったくもって冒頭の利他愛とは異なります。利他愛は他人軸で生きることではなく、軸はあくまでも自分自身。自分軸で生きて自分の心と素直に対話して自分を大切にするからこそ、他人を愛せるのです。「他人が抱いているそのイメージ、つらいなら壊していいと思うよ。それよりもあなたらしくいるべきだし、周りもそれを望んでいるはず」。翌日の学習発表会(この日はリハーサルでしたが、一人だけ推薦を受けて重責だったようです)で失敗したけれど、誰もとがめないし気づいてもいない現実に直面し、人が描くであろう“イメージ”に勝手にがんじがらめになっていたことに気づいたようで、清々しい気分で帰宅しました。13歳女子の、等身大の成長過程ですね。

昨年の秋、JIMMY CHOOさんからいただいた球根を植えたら、しっかりと芽吹いてきました。かわいい!! 花を飾ったり、愛猫と戯れたり、球根を育てたり・・・私がご機嫌になる時間です
昨年の秋、JIMMY CHOOさんからいただいた球根を植えたら、しっかりと芽吹いてきました。かわいい!! 花を飾ったり、愛猫と戯れたり、球根を育てたり・・・私がご機嫌になる時間です

9年ぶりにご登場いただいた小泉今日子さん(p.108)。今回の取材でも盟友YOUがスタイリングを担当してくれたのですが、私たちの無理難題に笑いながら応えてくれる“キョンキョン”がそこにいました。想像以上に私たちを楽しませ、もちろんご本人も楽しんでくれたようです。彼女に自分を愛すること(=セルフラブ)について聞いてみると、「人に何か言われて嫌な気持ちになったり、人間関係で悩んだり、恋愛で傷ついたりするたびに内省する。そうやっていろんな経験をして自分に向き合えるんじゃないかな。どこかで『私って最低』って気持ちも味わわなきゃ自分を愛せないんじゃないかと。大事なのは、嫌な気持ちになったり、悲しくなったときにいかにさぼらないで、そのことについて考えたか」。さすが、経験豊かな大人の見解です。

人気のポッドキャスト番組「OVER THE SUN」のパーソナリティを務めるジェーン・スーさんと堀井美香さんにも“自愛”についてお話を伺いました(p.120)。「自分を愛することは、自分を受け入れること。『自己受容』が何%なら自分にとって“いい湯加減”なのか?」。これを知ることが大切だと深い読みを語ってくださいました。

今号を特集して気づいたことは、人はみな、常に葛藤しながら自分を見つけて進んでいるということです。それはそれは永遠とも思われる終わりなき旅です。自分に素直に自分を愛して、時に律して見つめ直す。それが利他愛へとつながる道。そしてセルフラブへと返り咲く道なのかな。まだまだ先は長いですが、私もじっくり見つめようと思います。

セルフラブについて特集した今号を、今月、14歳になる娘にも贈りたいです!

Numéro TOKYO編集長 田中杏子

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