Fashion / Post

私色で生きていく。でもあなた色を理解する。すべてはここからです。

2019年11月28日(木)発売の『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年1・2月合併号に寄せて。編集長・田中杏子からのエディターズ レター。

ラグビー・ワールドカップ2019が幕を閉じました。私も、流行語大賞にノミネートまでされた“にわかファン”の一人でしたが、試合観戦は常に歓喜の時間でした。幸運にもスタジアム観戦ができたアイルランド戦は多くのサポーターに混ざって涙し、周囲の見知らぬ人と瞬間共同体化するスポーツの底力を感じました。また日本を完封した南アフリカは試合ごとに強さを増し、格上チームをばったばったと負かしトップの座に輝きました。勢いのいい試合まわしに悔しながらあっぱれ! と応援した人も多かったはずです。

南アフリカのラグビー史上に於いて、いや、南アフリカ史上に於いて、黒人主将が率いるナショナルチームの快挙は歴史に残る出来事だったでしょう。選挙権すら与えられず分離社会で卑下されてきた暗黒のアパルトヘイト時代には想像すらできなかったことです。決勝戦でノーサイドの笛を聞いた時、南アフリカで虐げられてきた黒人をはじめ非白人やカラードと呼ばれてきた人たちの暗い過去に光が差し、新時代の幕開けを感じる瞬間でした。最強チームの称号を持ち帰れて本当に良かったと、他国のことながら感極まりました。

奇遇なのが1991年のアパルトヘイト全廃へと一役買った大統領の名前がフレデリック・ウィレム・デクラーク。グラウンドを自在に走り回り、シヤ・コリシ主将率いるチームの勝利に一役買った小柄な金髪選手もまた、デクラークという名前でした。デクラーク選手の活躍は、南アフリカの自由と平等の象徴として南アフリカ全人口の願いが集まっていたのかもしれません。そのぐらい彼の活躍は神がかっていましたから。もちろんベスト8という快挙を果たした日本“ワンチーム”の大健闘にも、放映が流れるたびにありがとう! と感涙しっぱなしです。

さて今号のテーマ「Live Your Color」は、あなた色で生きていこう! というメッセージです。肌の色、宗教の違い、個性や考え方、性別の捉え方など生き方の違いや多様性はあちらこちらに存在します。「家族もコミュニティもカラフルに。多様性が未来を変える!」に登場いただいた『ぼくはホワイトでイエローで、ちょっとブルー』を上梓したブレイディみかこさんの「多様性は共感できない相手の靴を履いてみること(=エンパシー)から始まる」という言葉が印象的でした。心も体も戸籍上も女性になりパートナーと生きるアイバンと、血縁関係のない70人の人たちと意識で繋がる“拡張家族”を実践している石山アンジュさんの対談では、孤独死などの問題を抱える日本の核家族の新しい未来像が見えた気がしました。

この号では、色にあふれたファッションも紹介しています。このページのまわりにも配しましたが、来春もたくさんの色が提案されます。それは、多くの色(=個性)こそ存在すべきだとファッション界が新時代のあり方を暗示しているようです。どんな色をどんなふうにスタイリングしてもすべて正解。個性という観点から見ると不正解はないのです。

人と人の関係が希薄になっていくデジタル時代に、本当に大切なことは何なのか、そして新時代をどう生きるのか、考える一助になれば嬉しいです。

Numéro TOKYO編集長 田中杏子

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Profile

田中杏子Ako Tanaka 編集長。ミラノに渡りファッションを学んだ後、雑誌や広告に携わる。帰国後はフリーのスタイリストとして『ELLE japon』『流行通信』などで編集、スタイリングに従事し『VOGUE JAPAN』の創刊メンバーとしてプロジェクトの立ち上げに参加。紙面でのスタイリングのほか広告キャンペーンのファッション・ディレクター、TV番組への出演など活動の幅を広げる。2005年『Numéro TOKYO』編集長に就任。著書に『AKO’S FASHION BOOK』(KKベストセラーズ社)がある。

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