とんだ林蘭のポップ解剖「丸いものこそ“ポップ”」
鮮やかなカラーパレットにキャッチーなモチーフで魅了する、アート作品や空間、スタイル 、さらには人物まで、日常にあふれているさまざまな“ポップ ”。ポップなクリエイター、とんだ林蘭にとっての“ポップ”とは?(「ヌメロ・トウキョウ」2018年5月号掲載)
特別な意味や前置きはなくとも、人の目に残るような印象的なものを作りたいと常に思っています。そういうスピリットがイコール“ポップ”につながるのかなと。モチーフでいうと丸ですかね。年齢を問わず誰もが認識しやすいカタチであり、大衆に広まりやすいという意味で。四角や三角よりも丸ってポップだと思うんです。
作品を作る上で親しみやすさを大切にしているので、誰にとっても身近なものや日常にありふれているものを使っています。料理やフルーツ、パンなど食材からインスピレーションを受けることが多いので、何か作ろうと思ったらまず向かうのはスーパーマーケット。グレープフルーツやレモンなど、その日に手に取ったもので考えます。シュールとポップのバランスが取れているものが好きなんです。「悲壮感がない」という点は、私がものづくりをする上でのポイント。救いようがない暗さに惹かれることもあるんですけど、シュールさだけではなく、そこに笑い飛ばせるような明るさをプラスできたらいいなと。その正統派じゃない、暗さの中にある明るさを表現するためには色(カラー)が最重要。人の感情や気持ちをコントロールする力があるので、コラージュの背景などポイントになる部分は最後まで悩みます。
ポップアイコンとしてパッと浮かのぶは、やはりアンディ・ウォーホル。作品はもちろんですが、彼のスタイルや生き方が好きです。商業的になることを恐れない、その姿勢を含めてアートにしているところが“ポップ”だと思う。ただハンバーガーを食べているシーンを撮影しただけの映像とか、日常を切り取った作品のセンスも大好きです。
Photos:Takahiro Idenoshita Text&Edit:Yuko Aoki