大友良英が導く!「札幌国際芸術祭2017」現地レポート(後編) | Numero TOKYO
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大友良英が導く!
「札幌国際芸術祭2017」現地レポート(後編)

日本全国、地域発のアートイベントが花盛り。「音楽フェスもいいけどアートもね!」的な楽しみはもう常識。いま話題の『札幌国際芸術祭2017』、雄大な自然を経て札幌の歓楽街へとたどり着いた前編に続いて、現地レポートをお届けします。

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端聡『液体は熱エネルギーにより気体となり、冷えて液体に戻る。そうあるべきだ 2017』(北専プラザ佐野ビル 5階)

「すすきの」の中心で
「でもやるんだよ!」の沼にはまる

ゲストディレクター大友良英の言葉に導かれ、『札幌国際芸術祭2017』を巡る旅の後編。次なる目的地は、札幌の一大歓楽街「すすきの」にそびえ立つ「北専プラザ佐野ビル」。フロア案内にスナックやラウンジなどの名前がずらりと並び、「こんなところにアート作品が?」と戸惑うような雑居ビルの中で、5つの展示が待ち受けている。まずは5階、札幌を拠点に活動するアーティスト、端聡(はた・さとし)の展示フロアへ。いくつかの作品のうち、『液体は熱エネルギーにより気体となり、冷えて液体に戻る。そうあるべきだ』は、『あいちトリエンナーレ2016』でも発表された、巨大なハロゲン投光器の熱で水を気化させ、それを再び液体化することで水の循環を作り出す作品の札幌バージョン。広大な自然を切り拓いて構築された欲望渦巻く歓楽街の中心で、息を飲むような美しさとともに自然の水循環を再現しながら、大量の電力を消費し続けるという、シニカルな自己矛盾を体現した装置を目の当たりにする。都市と人間、そして自然を巡る痛烈なメッセージが、そこにはあった。

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『レトロスペース坂会館別館』(北専プラザ佐野ビル 地下1階/撮影:藤倉翼)

エレベーターに乗り、ビルの地下へ。そこでは一転、異次元の世界が繰り広げられていた。題して『札幌の三至宝 アートはこれを超えられるか!』。
展示の一つ、『レトロスペース坂会館別館』では、元スナックの店内に隙間なく陳列された剥製や人形、置き時計にランプ、扇風機、酒瓶、タバコのパッケージなどが渾然一体となって充満し、その濃密な存在感に圧倒される。これらは北海道ローカルを代表するお菓子「坂ビスケット」の製造元社長の坂一敬(さか・かずたか)氏が蒐集した、数万点におよぶ秘蔵コレクションのほんの一部だという。

市内各所、本来は美術展示の場所ではないはずの至るところを芸術祭の舞台にしよう。そう考えた大友良英は、坂氏の私設博物館『レトロスペース坂会館』(本館)との出合いをきっかけに、「テレビに市電、妖怪に食、(中略)ありとあらゆる広大な領域を相手にした作品たちに出てきてもらうことにしました」と、芸術祭のサブテーマ「ガラクタの星座たち」の解説文に記している。
その言葉どおり、北専プラザ佐野ビルの地下では、「大漁居酒屋てっちゃん」の雑貨で埋め尽くされたコラージュ空間や、閉館した地元秘宝館のコレクションを撮影した都築響一の写真を展示する『北海道秘宝館「春子」』、宇川直宏によるインターネットストリーミング放送局「DOMMUNE」との連携企画による篠原有司男や山川冬樹らの作品展示など、コク深く味わい深くぬかるみ深い人間たちの所業、「でもやるんだよ!」な息吹との出合いが待ち受けていたのだった。

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『大漁居酒屋てっちゃん サテライト』。同店のコラージュ空間を撮影した写真と、店主が家族をモチーフに描いた素描や油絵を展示

端聡『Intention and substance』、『札幌の三至宝 アートはこれを超えられるか!』(レトロスペース坂会館別館、大漁居酒屋てっちゃんサテライト、北海道秘宝館「春子」、DOMMUNE SAPPORO)
会場/北専プラザ佐野ビル

木彫り熊、ゲリラライブ……
現代アートとそれ以外の狭間で

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太Keita Fukasawa コントリビューティング・エディターほか、フリー編集者、ライターとしても活躍。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numero TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集やインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)などがある。『Numéro TOKYO』では、アート/デザイン/カルチャー分野の記事を担当。

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