大友良英が導く!「札幌国際芸術祭2017」現地レポート(後編) | Numero TOKYO - Part 2
Culture / Post

大友良英が導く!
「札幌国際芸術祭2017」現地レポート(後編)

日本全国、地域発のアートイベントが花盛り。「音楽フェスもいいけどアートもね!」的な楽しみはもう常識。いま話題の『札幌国際芸術祭2017』、雄大な自然を経て札幌の歓楽街へとたどり着いた前編に続いて、現地レポートをお届けします。

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札幌大通地下ギャラリー 500m美術館『中崎透×札幌×スキー「シュプールを追いかけて」』。地下道沿い500メートルにわたって続く展示のうち、1972年の札幌オリンピック関連の展示風景 市内各所、 “アートとそれ以外”の狭間に輝くもの このように、各会場を巡る道筋は、いつしか現代アートとそれ以外の間にある、自分たちが見過ごしてきたものたちに光を当てる経験を紡いでいく。 例えば、市街の西に位置する札幌市円山動物園の敷地内、閉館したクルーズ型アトラクション『魔境の伝説』施設跡に展示されたクワクボリョウタの作品。そこからほど近い札幌宮の森美術館には、写真家・石川直樹による道東〜サハリンへと至る北方文化圏の写真に加え、白老・登別地域を拠点に活動する「アヨロラボラトリー」と共同でフィールドワークを行った成果が。札幌大通地下ギャラリー 500m美術館の展示『中崎透×札幌×スキー「シュプールを追いかけて」』では、廃業した地元メーカーを含む歴史的なスキー板の変遷をはじめ、1972年の札幌オリンピック冬季大会の資料や関係者のインタビューなどから、冬の寒さや雪と共存しながら発展してきた都市の軌跡が浮かび上がる。
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『北海道の三至宝:アートはこれを超えられるか!』より、『北海道の木彫り熊〜山里稔コレクションを中心に』(札幌市資料館) また、1926年に札幌控訴院(のちの札幌高等裁判所)として建てられた札幌市資料館では、『北海道の三至宝:アートはこれを超えられるか!』企画として、全長200キロメートルにおよぶ旧住友赤平炭鉱の「坑内模式図」や、元郵便局長が昭和新山の噴火の様子を描いた火山画、かつて人気を博した“北海道の木彫り熊”の超・個性的な手彫り作品群を公開。 加えて、大友良英から「会期を通して札幌に滞在し、人々を巻き込みながらゲリラ的に活動してほしい」と依頼を受け、神出鬼没化した2人組音楽ユニットのテニスコーツの活動拠点や、80年代から札幌でクリスチャン・マークレーや大友良英ら実験的な音楽にまつわる企画を行っているNMA(NOW MUSIC ARTS)主催のライブビデオや資料のアーカイブ展示、地元市民メディアの情報発信拠点なども、この建物内に設置されている。
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テラコヤーツセンター「土砂」にて、弾き語り&書道ライブを行うテニスコーツの2人(札幌市資料館) NMAライブ・ビデオアーカイブ、『北海道の三至宝:アートはこれを超えられるか!』(赤平住友の炭鉱遺産、地球の声を聞いた男・三松正夫の昭和新山火山画、北海道の木彫り熊〜山里稔コレクションを中心に)、テラコヤーツセンター「土砂」ほか 会場/札幌市資料館

大友良英が仕掛ける 壮大&ライブな“祭り”の渦中へ

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太Keita Fukasawa コントリビューティング・エディターほか、フリー編集者、ライターとしても活躍。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numero TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集やインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)などがある。『Numéro TOKYO』では、アート/デザイン/カルチャー分野の記事を担当。

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