「そこまでやるか!?」驚異の展覧会@六本木 | Numero TOKYO - Part 3
Art / Post

「そこまでやるか!?」驚異の展覧会@六本木

「すごい!」「やばい!!」「どうやって!?」……信じがたい眺めを前にして、思わず感情が露わになる。そんな “壮大なるアートプロジェクト” だらけの展覧会。百聞は一見にしかず、いざ現地へ……!

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西野達『The Merlion Hotel』(Singapore Biennale 2011) しかし、「そこまでやるか」の真髄は、順路の最後に待ち受けていた。エントランスへ戻り、反対側の入口から、この春に新しくお目見えした「ギャラリー3」へ。シンガポールのマーライオン像の周囲を建物で囲って実際に宿泊可能なホテルの部屋をつくり上げたり、ニューヨークに立つ約20メートルの高さのコロンブス像を囲い、観客が体験可能なリビングルームをつくり出したりするなど、公共の場にプライベート空間を出現させる作風で知られる西野達の作品がお目当てだ。 しかし、そこにはカプセルホテルのように仮設で組み上げられた1〜3段のベッドと、思い思いにくつろぐ人々の姿。これのどこが作品? そう考えた瞬間、思わずハッとさせられた。これこそずばり、「六本木のど真ん中に突如として出現したアートホテル」こと、西野達の作品『カプセルホテル21』だったのだ……!
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展示風景より、西野達『カプセルホテル21』(撮影:木奥恵三) まさに『そこまでやるか展』に寄せた、「そこまでやるか……!」な体験型展示。ベッドに寝転び、窓外のミッドタウン・ガーデンを行き交う人々の姿を眺めるうち、この建物自体もまた、「そこまでやるか!」の産物であることを痛感した。21_21 DESIGN SIGHTの設計を手がけたのは、日本にデザイン文化の拠点をつくろうという三宅一生の呼びかけに共感した安藤忠雄。三宅の服づくりのコンセプト「1枚の布」に由来する、“1枚の鉄板を折り曲げたような屋根を持った建築” というアイデアを実現すべく、景観を損なわないよう空間の大部分を地下に設けた構成に加え、太陽の熱で膨張する素材である鉄板の屋根をどう実現するかなどの難題に真っ向勝負。常識を超えた挑戦を、世界最高と呼ぶべき日本の技術でついに現実のものにしてみせたのだ。 こうした技術や安全性などの側面はもちろんのこと、物理的なスケールの問題、資金の調達、法との調整、人々との度重なる折衝など、時には数十年もの歳月をかけて熱意と信念を貫き通し、ようやく現実化を許された、「そこまでやるか」な作品群。そもそもなぜ、アーティストたちはなぜ「そこまでやる」のか。それ自体が「そこまでやるか!」の結晶である21_21 DESIGN SIGHTの空間に集結した気宇壮大なる創造力の行方に、思いがけずぶっ飛ばされることは間違いない……!
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展覧会メインヴィジュアル 『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展 会期/開催中〜2017年10月1日(日) 会場/21_21 DESIGN SIGHT 住所/東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン 時間/10:00〜19:00(入場は18:30まで) 休館/火 TEL/03-3475-2121 入場料/一般¥1,100、大学生¥800、高校生¥500 、中学生以下無料 URL/www.2121designsight.jp ※9月30日(土)『六本木アートナイト』の特別開館 10:00〜24:00(入場は23:30まで)

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太Keita Fukasawa コントリビューティング・エディターほか、フリー編集者、ライターとしても活躍。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numero TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集やインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)などがある。『Numéro TOKYO』では、アート/デザイン/カルチャー分野の記事を担当。

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