Art / Post
『東京墓情』シリーズよりレディー・ガガ Nobuyoshi Araki, “Tombeau Tokyo”(2016年)Gelatin Silver print © Nobuyoshi Araki / Courtesy of Taka Ishii Gallery
荒木経惟、その人生の慕情に寄せて
写真家として生きること。そして死に向き合うこと。天才アラーキーが達した秘密の境地、私たちを手招きする愛と死の世界。彼は果たして、その先に何を見ているのだろうか。
『東京墓情』シリーズより Nobuyoshi Araki,“ Tombeau Tokyo”(2016年)Gelatin Silver print © Nobuyoshi Araki / Courtesy of Taka Ishii Gallery
写真家・荒木経惟を語り尽くすことは、まず不可能だ。第一線を走り続けてきた半世紀に及ぶ活動期間や、450冊以上ともいわれる写真集の数は、確かに彼の途方もないエネルギーを物語ってはいる。しかし、そのような数字は、荒木の本当のすごみを何一つ表してはくれない。
『東京墓情』シリーズより、村上春樹 Nobuyoshi Araki,“ Tombeau Tokyo”(2016年)Gelatin Silver print © Nobuyoshi Araki / Courtesy of Taka Ishii Gallery
また、 “生と死を鮮烈に写す写真家”といわれる彼だが、人間味あふれる路地や都市の雑踏、男女の肖像や子どもたち、花、食、そして過激なヌード等々、どれもが主要なモチーフであり、言うなれば森羅万象すべてが被写体となり得るほど表現の幅や深さは果てしない。しかも、写真を語らせたら右に出るものなしと思わされるほど、その語り口は鮮やかというほかない。
『東京墓情』シリーズより Nobuyoshi Araki,“ Tombeau Tokyo”(2016年)Gelatin Silver print © Nobuyoshi Araki / Courtesy of Taka Ishii Gallery
写真はすべて私写真だという信条を「写真私情主義」と称してみたり、生(エロス)と死(タナトス)を絶妙なバランスで表現するさまを「エロトス」と造語で言い表してみたり……荒木作品を最も的確に語るのは荒木自身であるという、まさに文筆家泣かせな写真家であるということも付け加えておきたい。
アラーキーの写真人生「東京慕情 荒木経惟×ギメ東洋美術館」
フランス国立ギメ東洋美術館で発表された荒木経惟の新作『東京墓情』に香り立つ、自身の写真人生、そして死──。日本初公開となる『東京墓情』と、荒木が選んだ同美術館所蔵の幕末・明治期の写真が、シャネル・ネクサス・ホールで花開く。
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作品に立ち現れる黄泉の国
Photos:Nobuyoshi Araki
Text : Akiko Tomita
Edit : Keita Fukasawa