秋のアート体験に超新星現る!『岡山芸術交流 2016』レポート | Numero TOKYO - Part 5
Art / Post

秋のアート体験に超新星現る!
『岡山芸術交流 2016』レポート

岡山といえば、瀬戸内海を望む “晴れの国”、世界的なデニムの聖地、超高級フルーツ、桃太郎伝説etc.。そしていまこそ注目すべきは “最先端の現代アート”。いま岡山で何が起きているのか? その答えがここにある!

okayama art summit 2016
okayama art summit 2016

こうして巡り歩いたのは、地方芸術祭によく見られるような地元におもねった企画に走ることなく、むしろ現代アート本来の力をハードコアなまでに貫くことで、岡山の歴史&文化とのマリアージュを最大限に堪能する試み。展示を見て回るほどに、『岡山芸術交流 2016』のコンセプトと意気込みがじわじわと、瀬戸内のいりこ出汁のように心と体に染み込んできた。骨太なコンセプチュアルアートから、新旧織り交ぜた建築へのまなざし、そして食のおもてなしに至るまで。それらが多面的に融合し、ハイレベルなアート体験を織りなしている。しかし……初体験にしていったいどうやって、これだけの状況を用意したというのだろうか。

okayama art summit 2016
okayama art summit 2016

そのカギを握るのが、総合プロデューサーをつとめる石川康晴氏。地元・岡山で立ち上げたわずか4坪のセレクトショップをきっかけに、いまやearth music&ecologyなど15ブランドを擁し、グループ売上高1千億円以上を誇るストライプインターナショナルの代表取締役社長にして、トム ブラウン ニューヨークやメゾン・キツネにも出資する希代の経営者。
そのアパレル企業のトップがなぜ、総合ディレクターを務めた那須太郎氏(TARO NASU代表)やアーティスティックディレクターを務めたリアム・ギリック氏らとともに、現代アート、しかもハードコアなコンセプチュアルアートの国際展を開催するに至ったのか?

その理由は、「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2016年11月号(9月28日発売)の誌上にて、自社のオフィスや自宅に飾られた現代アートコレクションのレポートとインタビュー(以下に一部抜粋)をごらんいただくとして、その記事の担当編集として一言。もちろん、予想はしていました。でも、現場で体験した予想外のクオリティには、驚くほかありませんでした……!

okayama art summit 2016
okayama art summit 2016

「今回のテーマ『開発』は(中略)新旧の創造力の交差による価値のイノベーションを指すと僕は捉えています。(中楽)アートに加え、人々が岡山を “読み直す” 刺激的な体験を提供したい」
「8年後以降をめどに、岡山で美術館設立計画が進行中です。(中略)岡山が広島・愛媛・香川と共に『瀬戸内アートリージョン(地域)』を形づくり、その玄関&結節点になれたら本望です」(※)

悪名高きハコモノ行政に代わって、より安価に実施できる地域おこしのイベントが “芸術祭” の名のもとに乱立されるなど、 “地域アート” の問題を指摘する声も上がる昨今。そんななかで、「作家や美術の専門家にも真に必要とされる国際展を目指す」(※)という志を注ぎ込み、岡山の地についに花開いた、アートイベントの超新星。驚くほどに手加減なし、世界レベルのストロングスタイルを貫きながら、会場を巡るうちに岡山の文化風土とおもてなし精神が立ち薫る。岡山発、地方芸術祭の戦国時代に名乗りを上げた “日本一の桃太郎” は、この先どんなヴィジョンを描いていくのか? この意気込みと躍動感をぜひ、ご自身の五感で味わってみてほしい。

(※いずれも「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2016年11月号(9月28日発売)「岡山芸術交流 — アートによる日本再開発計画」 石川康晴氏インタビューより。(インタビュー&文:内田伸一))

『岡山芸術交流 2016』
会期/2016年10月9日(日)〜11月27日(日)
会場/岡山市内各所
URL/www.okayamaartsummit.jp

Text:Keita Fukasawa

Profile

深沢慶太Keita Fukasawa コントリビューティング・エディターほか、フリー編集者、ライターとしても活躍。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numero TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集やインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)などがある。『Numéro TOKYO』では、アート/デザイン/カルチャー分野の記事を担当。

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