Art / Post
これらの作品は確かに、彼ら固有の表現に他ならない。そして同時に、「あの街の状況をいかに伝えるか」という問いから生まれた、あまりにリアルな “現実の光景” でもある。
それにしても、表現者であるアーティストが何故、かの地を目指すのか。
ふと、2011年6月に原発20km地点を訪れたときのことを思い返してみる。あのときに感じた現実と、何もできない自分との圧倒的な断絶。アーティストたちは、その距離感をほんの少しだけ変えてみせることで、人々が共有している景色に揺さぶりをかけ、そこに立ちこめる “何か” を浮かび上がらせようとする。
事故現場に作業員を装って潜入し、原発の屋外ライブカメラを指さした “指差し作業員”。原発周辺の帰宅困難区域内に国内外12組の作品を設置し、封鎖解除の日まで開催され続ける “見に行くことのできないアート展” 『Don’t Follow The Wind』etc.。
……今回の展覧会も、またしかり。
作品を通して、目の前に立ちこめる “何か” と向き合い、その先にある、果てしない模索へ想いを重ねること。それこそが、いま、私たちにできることなのかもしれない。
※『Numéro TOKYO』2016年7・8月合併号 掲載記事を加筆転載
『Retrace our steps — ある日人々が消えた街』
カルロス アイエスタ + ギョーム ブレッション 写真展
会期/2016年6月24日(金)〜7月24日(日)
会場/シャネル・ネクサス・ホール
住所/東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
時間/12:00〜20:00
入場料/無料
定休日/無休
TEL/03-3779-4001
URL/www.chanel-ginza.com
※彼らの共同プロジェクト『no go zone』のサイトもぜひ参照を。
人々が消えた街の現実を伝える写真展@シャネル・ネクサス・ホール
パリと東京を拠点に活動する2人の写真家。人間には見ることも感じることもできない “それ” を伝える展覧会『Retrace our steps — ある日人々が消えた街』が、シャネル銀座で開催される。
Retrace our steps
Text:Keita Fukasawa
Profile
フリー編集者/ライター/『Numéro TOKYO』コントリビューティング・エディター。『STUDIO VOICE』編集部を経てフリーに。『Numéro TOKYO』創刊より編集に参加。雑誌や書籍、Webマガジンなどの編集・執筆、企業企画のコピーライティングやブランディングにも携わる。編集を手がけた書籍に、田名網敬一、篠原有司男ほかアーティストの作品集や、編集者9人のインタビュー集『記憶に残るブック&マガジン』(BNN)など。