西島隆弘が語るいまの思い「ファンがいる限り応えていきたい」 | Numero TOKYO
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西島隆弘が語るいまの思い「ファンがいる限り応えていきたい」

名だたる監督や演出家から高い評価をうける俳優、西島隆弘。2年ぶりの俳優業となった月9ドラマ「この恋を思い出してきっと泣いてしまう」では、悩み多い御曹司を熱演している。AAAにソロ音楽活動、俳優業と何事も起用にこなす天才肌でいて、実はかなり理性的に物事を考えるタチ。ターニングポイントや、俳優&アーティストとしての思いを語ってくれた。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2016年4月号掲載

──月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』では2年ぶりの俳優業ですね。

「村瀬プロデューサーから熱烈にお誘いいただき、うれしいの一言に尽きます。僕は今回の共演者の中では少し年上で、次の世代の俳優陣と共演できるうれしさ、刺激、そして俳優として遅れをとっている焦りもあります。月9初主演の(有村)架純ちゃん演じる音が輝けるように支えることが、僕のミッションの一つだと思っています」

──いま演じていらっしゃる井吹朝陽はどんな男性ですか。

「すごく純粋で我慢をしている男。父親への激しい葛藤がありつつ、心根は愛情深い。周りにもっと手を差し伸べてくれる人がいたら、彼の人生は変わっていたんじゃないかな。僕も、どうしても我慢しなくてはならないことが多く、さらにネガティブな性格ゆえに壊れそうになってしまうときもあります。でもそういうときに、スタッフさんや友人、後輩など、必ず手を引いてくれる人が周りにいて、次の可能性を信じることができたからここまで来られた。音は朝陽をホッとさせる唯一の光なのでしょう」

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──俳優の仕事はこの先も続けていきたいですか。

「はい。音楽とともに、どうにか両立できる環境をつくりたいと考えています。僕が俳優を続けている一番大きな理由は、俳優としての自分を求めてくれるファンやクリエイターの方がいてくれるから。応える側の職業の人間としては、西島隆弘がやる芝居に希望を持ってくださる方がいる限り、応えていきたいです」

──ご自分の中で、役者としての資質を感じることはありますか

「僕、いまだに全然わからないんですよ。向いていない気もずっとしています。『その色気や哀愁はどこから?』と聞かれることもあるのですが、自分ではわからない。基本的には理性的なスタンスで物事を考えることが多く、お芝居も感覚だけでやるタイプではない。でも確信を持って芝居しているわけでもないんです。毎回、何がべストなのか探しながら演じています」

──ドラマの演技は特に、ナチュラルさが求められるのでは?

「いそうでいない、いなさそうでいる、でもいてほしい、いたら嫌だな…くらいのムズムズするくらいの存在になることが、いま見やすいドラマの形かなと思います。例えば、好きな人を目の前にしたとき、自分の気持ちがバレないような顔をするとして、実際にその瞬間の自分の顔を鏡で見て確認することは絶対にない。でもそういうシーンをドラマで演じるときは『わかる!』と見る人に伝わらなければいけない。お芝居って難しいし、評価もしにくいと思います。芝居がぎこちないけど伝わることもあるし、うまくても引っかからないこともある。結局はその俳優が持つ本質が重要。それは歌も同じで、いくらうまくても、声質には勝てないんですよね」

──たぶん西島さんはマグマのような内面をお持ちだから、それが演技ににじみ出るのでしょうね。音楽との違いは?

「音楽と芝居を比べると、僕にとって音楽のほうが距離が近くて、芝居のほうがちょっと遠いんです。その距離感って、お客さんとの距離感と同じ気がするんですよね。音楽は共有する、共感することが前提で『僕の言葉を聞いてよ』という感覚。芝居だと、物語という異空間とお客さんの間にも距離がある。僕ら俳優はお客さんをその物語に引きずり込んだ上で、『どう受け止めるかは君次第』と委ねてしまう。全く違いますね」

──俳優としてのターニングポイントは、どの作品でしたか。

「映画『愛のむきだし』です。初めて映画の台本をもらって、その分厚さに驚きました。ドラマは1話ずつだから、台本も薄いでしょう? 確かに映画は2時間半あるからなぁと思いながら、台本を読んで。読み終わっても特に何とも思わなかったんです。失礼ながら、漫画本を読んでいる感覚でした。その後、園(子温)さんとお会いして、でもくだらない話しかしなかった。『お菓子好き?』『大好きです』『甘いの? しょっぱいの?』『甘いの』とか…(笑)」

──最初は気楽な感じだったと。大変な作品だと気づいたのはいつ?

「撮影に入ってからです。満島(ひかり)がガンガン怒られていたり、僕も怪我をしたりして。俳優は皆こうして鍛えられるんだなって。当初、撮影は3週間の予定で、AAAのライブまでに終わらせるはずが間に合わず、結局、ライブ後の12月23日、イブの前日にやっと終わったことを覚えています。その数カ月後に『出来上がりました! 6時間半です』と聞いて、『え?』と(笑)。要は普通の映画3本分の撮影だったわけですね(笑)。『この長さでは上映する映画館がないから、もっと編集しなきゃ』と3時間57分になり、『これ以上のカットは無理。ダイジェストになっちゃう』と…。それが僕にとっての初映画でした」

──壮絶な初映画でしたね。芝居について相談する場合は誰に?

「基本、演出家さんです。俳優という仕事って、僕にとっては公開処刑されているような場面も多くて。要は『君の芝居、間違ってるよ』と大勢の前で言われますから。これ、アーティストとしては耐えられないことなんです。『君の歌は間違っている』と言われたら、たぶんブチ切れるはず(笑)。でも俳優としてやっていくには、ここはプライドを捨てなきゃと思いました」

──アーティストのときは自分が核となり、俳優のときは監督や演出家に従う。つまり切り替えが必要だと。

「そうですね。俳優としては、その作品の色に染まるのが第一。目立つことより馴染むことのほうが、僕の好みかもしれない。音楽でも芝居でも、どこかに見せ場があります。その瞬間は突出すべきだけど、それ以外は馴染むことが大事です。『愛のむきだし』では、ただ一生懸命やっていたことが、後から見たら主張しているように見えたんです。結果的にあの作品にはそれが必要だったと思っているけれど、余計なときもある。TPOと同じで、いかに自分という本体がありながら、その座組の洋服を着こなせるかなんですよね」

──ソロ活動のNissyのPVを拝見したら物語性が面白くて、俳優活動が音楽にも生かされているなと。

「確かに芝居をやらなかったらPVは作っていなかったかも。こんな撮り方がある!こんな芝居の流れで映像展開ができる!と面白くなっちゃってPVを作ったので。音楽と芝居、両方を行き来できる醍醐味です」

『ヌメロ・トウキョウ』
2016年4月号はこちら

Photos:Akihito Igarashi Styling:Masato Hishinuma Hair & Makeup:Megumi Shiizu Interview & Text:Maki Miura Edit:Saori Asaka

Profile

西島隆弘Takahiro Nishijima 歌手、俳優。1986年生まれ、北海道出身。男女7人組のパフォーマンスグループAAAのメインボーカルを務める一方、俳優としても映画、舞台、TVなどで活躍する。放送中のドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系列 毎週月曜21時~)に出演中。ソロアーティストNissyとしての初アルバム『HOCUS POCUS』がミュウモショップにて3月24日より限定発売。

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