古市憲寿×田根剛が語る現代建築。日本に今、必要とされているものとは?
T「独立することになったときに、自分がどんなふうに建築を考えていくか、自分は何ができるのか、ということを考えていたんですが、エストニアのコンペでは滑走路を1つのモチーフにしたので、“場所の記憶を建築にする”のを自分のテーマにしようかと。コンクリートとか木を使うのが自分のスタイルだというよりは、その場所の記憶を掘り下げて行くと、世界のどんな土地でもその土地らしい建築が作れるんじゃないかと思いまして」
F「場所の記憶というと、日本ではそういうのが弱いというか、そういうのが少ない気がしちゃうんですけど」
T「もともとは古来からのものがあったんですけど、それこそ明治の近代思想のなかで失われたものの一つなんじゃないでしょうか。そろそろ戻って来てもいいんじゃないかと思っています」
F「明治以降だけでも150年の歴史があるのに、なんか色々すっ飛ばして新しいことをやろうとして失敗している気がします。誰とは言いませんけど、なんでそうなっているんだろうなっていうことが色々あるような。それからこの作品(「LIGHT is TIME」2014年)、きれいですよね」
T「日本の時計メーカー、シチズンがミラノ・サローネというデザインの祭典で展示したインスタレーションです」
F「これは機械で、一個一個が時計の基盤?」
T「文字盤の中に、基盤装置があるんですけど、その文字盤を光で表現して。今年の4月にもう一度、ミラノ・サローネで新しいコンセプトの下、コンピュータを使ったインスタレーションをします。1週間くらいやります」
F「行ってみたいですね。1週間ピンポイントでミラノに行ける人はいるかなあ。まあ、僕は行けますけどね。次の作品が日本に来る予定は?」
T「もしかしたら、前回のように機会があるかもしれないし、ちょっとわかりません」
F「田根さんは建築だけでなく、インスタレーションもやるんですね」
T「インスタレーションだったり、それこそ展覧会の構成だったり。建築を設計すること以上に他のお仕事もやらせてもらっています」
F「DESIGN SIGHT 21_21で開催しているフランク・ゲーリー展のディレクションもされてますが、建築家が誰かのテーマの建築物の展覧会のディレクションをやるっていうのは珍しいですよね」
T「僕が知っている限りではないですね」