古市憲寿×田根剛が語る現代建築。日本に今、必要とされているものとは?
F「あと田根さんの作品ですが、これはなんですか」
T「日本で初めて手掛けた住宅なんですが、神奈川の大磯という街の住宅です。家族が実際に暮らしていく場として作ったんですが、1階が土壁で出来ていて2階が木で出来ています。この土地を掘り返して出て来た土を作って土壁を作ったんです」
F「掘り返してみて、変なものは出てこなかったんですか」
T「縄文時代と弥生時代と古墳時代の土器が出てきました。作る前にリサーチしていたら、そこは縄文時代から人が暮らしていた場所らしいと。それも含めて、竪穴式住居のように少し掘り込むことで夏は涼しく冬は暖かい環境にしようとか、寝ると場所は弥生時代の高床式住居のように作ってみようと考えていたら、本当に土器が出て来ました」
F「その場所にある土地とか歴史を受け継ぐという発想が面白いですね。日本の都市計画にはあまりないですよね、歴史や地域性を大事にするっていうのは」
T「自分の建築の根本は、場所の記憶から始まるというテーマなんです。場所の記憶を掘り下げて、使っていたものを新しい時代に形にしていこうと考えていています」
F「“場所の記憶”というコンセプトには、どのように辿り着いたんですか?」
T「自分はエストニアのコンペに勝って、いきなり建築家になったわけですが」
F「その当時、田根さんは何をしていたんですか?」
T「建築事務所の1スタッフとして普通に働いていました。地味に図面を書いていました」
F「海外の事務所の一スタッフだったんですね。それでコンペをいきなり獲っちゃって?」