古市憲寿×田根剛が語る現代建築。日本に今、必要とされているものとは? | Numero TOKYO - Part 3
Culture / Post

古市憲寿×田根剛が語る現代建築。日本に今、必要とされているものとは?

最近の日本建築は無難?
T「これだけ巨大な日本のピラミッドが、実は世界ではあまり知られてないんですよ。それは単純に、古墳は文化ではなくて宮内庁の管轄なので。でもせっかく日本にある世界最大級の古代の象徴なので、もう一回現代に蘇らせようと思いました」  
F「これにすれば良かったのに。ピラミッドって民衆が見上げて王の威信を感じてありがたがらせるものだけど、古墳ってそんなに目線が高くならない。上から見れば巨大だとわかるけど、実際に行ってみるとなだらかな丘というか、そんなに見上げる感じにならないですよね。見上げるというよりも、見守るという言葉の方が近い」
T「地形の延長に起伏があるから、威圧感はないですよね」
F「王の墓を、日常世界の地続きとして置くというのは面白いですよね。でも、これが選ばれていたら、それはそれでまた、炎上していたんでしょうかね。きっと、めっちゃお金がかかりますよね(笑)」
T「そうですね(笑)。お金がなくなったら、木は全国の国民で育ててもらって、国民みんなで運んだら安く済むんじゃないかと思ったんですけど」
F「普通の人も参加できるわけですね」
T「土も全国から集めて、国民の力で作るというか」
F「なるほど。明治神宮の森っていうのも、今では太古の昔からある立派な森みたいになっているけど、明治以降に作られたものですしね」
T「民衆が自分たちの力で、東京の真ん中に森を作ろうということで作られたという歴史があるので、同じことをやりたいなと思って」
F「ほんとこれにすれば良かったのに。いや、今の案がどうこうっていうんじゃなくて。さっきも話をしていたんですが、最近の日本の建築がどんどん無難になっているような気がするんです。新しく決まった新国立競技場案も、無難じゃないですか。上海や香港とか海外に行くと新しい奇抜な建築があるけど、東京の街を歩いていてもすごいなと思う建築が最近あまりない気がする。この実感って合ってますか?」
T「最近は“スマート社会”というか管理社会が重要視されていて、そこには人であったり歴史であったり感覚であったり、情緒的なことが必要とされていない。それがこういう結果になっていると思います」

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