古市憲寿×鈴木康広が読み解く「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」アートの定義とは?
F「もう80代ですもんね。建築界で難しいのは、国立競技場とかもそうですが、建物の規模が大きくなればなるほど、キャリアのある人にしか頼めないというところ。」
S「10代でも出来る人が実はいたりするかもしれないですよね。キャリアがなくても、アイデアベースでテクノロジーがアシストしたり、技術者がサポートして実現できるようになったら面白いですよね。建築家という役割が、実際に建てる人なのだろうかというのは、分からない時代になってきていますから」
F「鈴木さんは、アーティストとしてのデビューはおいくつのときですか?」
S「僕は22か3ですね」
F「早い。創作の仕方とかで、フランク・ゲーリーと共感するところってありますか?」
S「建築というとかけ離れたものに思えますが、模型やスケッチを見ると、僕なりにすごく“分かる”ことはあります。イメージを物体や空間に置き換えて、人々に体験として感覚的に再現していくところなどは共感します」
F「鈴木さんの作品を見てみましょうか。いつもお願いすると2000枚くらい届くんですけど、今日も2000枚ですか?(笑)」
S「今日は時間もそんなにないので、100枚に絞って来ました。建築についてのトークショウなので、主に屋外のアートをいくつか」
F「現代アートってずっと、訳の分からないものか、もしくは説明されれば訳は分かるけどしょぼいもののどちらかなんだと誤解していました。そんな中で、鈴木さんの作品は、どちらでもないから好きです。説明されて理解した上で、すごいなと思える。褒めていますよ(笑)。これは代表作『空気の人』ですね。これは、どういうコンセプトがあるんですか?」
S「コンセプトはなくて、その都度、見えてしまうものを観察しています」
F「これは、周りの人達が寝転がってますね」
S「金沢21世紀美術館の人に“昼寝の会”をやりましょうって言われてやることになったんです。僕はそんなことやろうなんて思っていなくて、でも『あ、これを作ったことで昼寝の会が開かれるんだ』って思う訳ですよ。嫌だなとか、ちょっとやりたくないなと思っても、やってみると意外なことが起こったりするじゃないですか」
F「絵としてすごく不思議ですよね。昼寝していない人もいる」
S「そういう事象も面白い。例えばみんな寝ているのに寝ていない人たちがいると、そこにアンチ空気ができて、内部と外部みたいなことが生まれるんですよね。あとこの時の発見は、『空気の人』がそれまでで一番大きく見えたんですね。なぜなら金沢21世紀美術館は建物として平たく作られていて、芝生の中庭は下り坂になっていたから。僕はこの作品を“昼寝の会”と称してここに展示したことで、この芝生広場が坂になっているとか、建築が低いとかを知る訳です。新しい建築ができて新しい空間が生まれたときに、その事実をどうやって自分でキャッチしたり把握したり考えるのってすごく難しいテーマだと思います。僕はこういう作品を作って場所の意味を考える機会があるから、他の何も作っていない人よりは建築と近しいところにいるかもしれない」