──その出会いによって、ご自身の生き方も変わったということですか?
「はい。職人さんたちは、10年でも100年でも使い続けられるものを、自然の恵みを生かして一つ一つ心を込めて手がけている。それは消費されてやがて消えていく消耗品とは違い、人々が生活の中で愛情を持って付き合っていけるもの。何十年、あるいは一生をかけてでも本当にそばに置いておきたいものや心地いいと感じられるものを求め、それによって得られたものと過ごしていくのは、何て幸せな人生だろうと思うようになりました。もの作りの精神を学ぶことで、私自身が携わっているもの作り、つまり、俳優としての作品への関わり方にも大きな変化がありました。世の中の流れとして、今は経済的利潤を重視しすぎて、とても短いスパンで結果を出すことを求められがちですよね。でも本物を追求するなら、それが時間を要するなら、ちゃんと時間をかけていいんだなと」