全世界騒然、天才監督ポン・ジュノの最強映画『パラサイト 半地下の家族』 | Numero TOKYO
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全世界騒然、天才監督ポン・ジュノの最強映画『パラサイト 半地下の家族』

現代映画の最高峰。思わずそう断言したくなる天下無双の大傑作が新年早々(一部劇場で年末に特別先行公開)に日本上陸となる!

カンヌを堂々制覇し、オスカーでも台風の目か!?

その名は『パラサイト 半地下の家族』。監督は『殺人の追憶』(2003年)や『グエムル-漢江の怪物-』(2006年)などの韓国の天才、ポン・ジュノ。第72回カンヌ国際映画祭では審査員満場一致でパルムドールを受賞(同賞受賞は韓国映画で初)。そのあと韓国本国のみならずフランス、香港、台湾などで記録的なメガヒットを飛ばし、2020年2月に開催される第92回アカデミー賞では台風の目になるとウワサされている。まさに全世界を席巻する勢いだ。

主人公は全員失業中のキム一家。低所得者層が住む“半地下住宅”で暮らし、激安の内職でなんとか日々をしのいでいる。

そんなある日、大学受験に失敗して浪人中の長男ギウ(チェ・ウシク)が、友人の代わりに大金持ちの女子高生の家庭教師を務めることになる。ただし大学生だとウソをつき、学生証を偽造して。

こうしてIT企業を経営するパク社長一家の高台の豪邸にまんまと潜り込んだギウ。すっかり家族になじんだ彼は、今度は妹ギジョン(パク・ソダム)を美術の家庭教師として送り込む。そして父ギテク(ソン・ガンホ)、母チュンスク(チャン・ヘジン)も身分を偽り、一家ごと屋敷に“パラサイト”(寄生)を試みる……。

あえてジャンル的に区切るなら、貧富の差を背景にしたブラックコメディであり、一種の「詐欺もの」(コンゲーム映画)といえるだろうか。4人家族が結束して大富豪を騙しまくる姿は、日本の高度経済成長を背景にした川島雄三監督の『しとやかな獣』(1962年)などを連想させる。

なにより目を引くのは設計思想の素晴らしさ。IT社長の豪邸は山の手にあり、半地下のキム一家はネズミやモグラのように暮らしている。陽当たりが悪いのはもちろん、Wi-Fiもロクにつながらない。まさに「縦の階層」を一目瞭然の形で可視化しているのだ。

この映画はオープンセットを使用しているが、韓国には格安の半地下物件が実際に数多くあり、もちろん現実社会のリアリティに密着したものだ。ポン・ジュノは『スノーピアサー』(2013年)で走る列車を階層のメタファーとして横軸で表現したが、今回はその応用である。またさらに複雑なレイヤーを施しており、豪邸の中には家族さえ知らない秘密の空間が存在する……という仕掛け。

あとは観てのお楽しみ。宣伝コピーとして打ち出されている「100%予測不能」の文字はダテじゃない。世界共通の問題となっている経済格差をテーマに、タフなユーモアと鋭い風刺で奥深い悲喜劇を描き出す。爆笑と戦慄にあふれ、時代性もアート性もエンタメ度もすべてが圧倒的。必然的にここ最近の重要作──『万引き家族』『バーニング 劇場版』『アス』『ジョーカー』も、ポン・ジュノの助監督を務めていた新鋭・片山慎三監督の『岬の兄妹』ともリンクし、それらすべてを包括するような驚嘆すべきスケールの創造力。

いよいよ“真打ち”の登場だ。映画ファンならこれを観なければ新年は始まらない!

『パラサイト 半地下の家族』

監督/ポン・ジュノ
出演/ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
2020年1月10日(金)より、TOHO シネマズ日比谷ほか全国公開
parasite-mv.jp

配給/ビターズ・エンド
© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

Text:Naoto Mori Edit:Sayaka Ito

Profile

森 直人Naoto Mori 映画評論家、ライター。1971年、和歌山県生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「TV Bros.」「シネマトゥデイ」などでも定期的に執筆中。 YouTube配信番組『活弁シネマクラブ』でMC担当中。

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