ヘアデザイナー加茂克也の偉業を目に焼き付ける@表参道ヒルズ | Numero TOKYO
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ヘアデザイナー加茂克也の偉業を目に焼き付ける@表参道ヒルズ

表参道ヒルズの本館B3Fスペース オーにて開催中の「KAMO HEAD ‐加茂克也展 KATSUYA KAMO WORKS 1996-2020‐」。ヘアデザイナー加茂克也さんの約20年にわたる創作活動を紹介する本展では、国内外のコレクションで使用したヘッドピースやプライベートな作品など400点以上を一挙公開しています。

さかのぼること4年半前、アンリアレイジなどのファッションショーのバックステージを担う金子繁孝事務所に「作品集の完成が予定されているから展覧会を開きたい」と、加茂さんから相談があったそう。ところが展覧会の開催直前に加茂さんのご病気が見つかり展覧会はやむなく延期となり、こうして今回ようやく実現に至ったとのこと。生前に加茂さんご自身が企画・構想した内容をもとに、バックステージの仲間たちが受け止めた思いとともに作り上げられた本展の会場は、加茂さんの頭の中を覗くようなデザインになっています。

会場に着くとまず目に入るのは、ランウェイショーの映像や写真でも見覚えのあるヘッドピースの数々。ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソンアンダーカバーに始まり、シャネルまで国内外のコレクションで使用された261点のヘッドピースが一挙公開となっています。独創的で力強いヘッドピースたちがこれでもかと並ぶさまは圧巻です。

加茂さんのお気に入りだった、アンダーカバー2015年春夏コレクションのための作品。

シャネル2009年春夏オートクチュールのための作品。
シャネル2009年春夏オートクチュールのための作品。

こちらはドレスとヘッドピースの組み合わせ。アニメーション映画『竜とそばかすの姫』の衣装デザイン担当したアンリアレイジのもので、クリアのヘッドピースは「シャンテリア」と加茂さんが命名されたそう。ショーを担当された金子繁孝事務所の方によると、洋服が出来上がっている状態でヘッドピースが出来上がることもあれば、コレクションの制作過程でデザイナーと加茂さんが感覚を共有をしながら一緒にものをつくっていくこともあり、デザイナーさんをさらに引っ張り上げるような関わり方もあったとのこと。

ご自宅の倉庫に眠っていたプライベートワークから、卵の殻や蝶の標本などの素材を用いて作り上げた箱型アートピース222点も展示されています。一部は加茂さんの娘さんが一緒に制作されていて、今回のレイアウト作業には娘さんも参加されたのだそう。

そして、数々の作品が生まれた場所であるアトリエを再現した空間も。作業デスクやチェアに置かれた道具の配置、壁に貼られたポラロイドの複写も、亡くなられた当時のままの順番で再現されています。

Numero TOKYO2014年11月号掲載のインタビューでは、「“モノ”が大好きなので、例えばドライヤーな どプロダクト開発にも携わってみたい」とお話しされていた加茂さん(2020年6月号の追悼記事でも一部インタビューを読むことができます)。デスクの上にはダイソンのドライヤーが置かれていますが、今回の展示は加茂さんが使われていたというご縁からダイソンさんが協賛され、会場外の吹抜け大階段ではDyson Airwrap™マルチスタイラーの日本限定カラー(さくら色)の展示イベントも行われています。

他には、2019年10月5日に放送されたNHK Eテレ「デザイン あ」でのインタビュー映像の上映(加茂さんがデザインをするときに大切にされていたことをお話しされていてとても素敵です。必見!)や、過去の作品を収録した作品集の販売、デザイナーやモデルなどの関係者からのメッセージも紹介もあります。

会期は今週末、4月2日(日)まで。ぜひ展覧会に足を運んで、加茂さんのクリエイションの軌跡を目に焼き付けていただきたいです。

「KAMO HEAD ‐加茂克也展 KATSUYA KAMO WORKS 1996-2020‐」

会期/2023年3月21日(火)~4月2日(日) 11:00~21:00
※3月26日(日)・4月2日(日)は20:00まで
※入場は閉場30 分前まで ※会期中無休
場所/表参道ヒルズ 本館B3F スペース オー
入場無料
お問合せ/表参道ヒルズ 総合インフォメーション
Tel/03-3497-0310(受付時間 11:00~18:00)
URL/https://www.omotesandohills.com/events/event/2023/008265.html



Profile

井上千穂Chiho Inoue フィーチャー・ディレクター。『Numero TOKYO』創刊時よりエディターとして主に特集を担当。2011年よりウェブマガジン「honeyee.com」「.fatale」の副編集長をつとめ、19年より出戻り現職。作り手の話を聞き、ものづくりの背景を知るとお財布の紐が緩みます。夜な夜な韓国ドラマに、休日は自然の中に逃避しがち。子連れ旅もお手のものな二児の母。

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