注目作家キム・ジュンスに聞いた、オブジェと日常のこと【#私の土曜日16:00】 | Numero TOKYO
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注目作家キム・ジュンスに聞いた、オブジェと日常のこと【#私の土曜日16:00】

ロエベ ファンデーション クラフト ブライズ 2022のファイナリストに選出されたことでも注目を集めている韓国のアーティスト、キム・ジュンス(@junsumartino)。日本で初めての個展「Sense of Forest」を開催中とのことでギャラリーを訪ねてみました。

緩やかなカーブを描く有機的なフォルムに形作られたオブジェ。佇まいがあまりに美しく「あちこちいろんな角度からずっと眺めていたい」そんな気にさせられる作品なのですが、そもそもそれは木なのか革なのか、軽いのか重たいのか、柔らかいのか固いのかパッと見ただけではわかりません。

「ぜひ触ってみてください」と、在廊中だったキム・ジュンスさんご本人。すすめられるままに手に取ってみると、なめらかさと軽さの奥に力強いリズムを感じます。その正体はレザー。樹木の年輪のようにぐるぐると、薄い糸状のレザーをコイル状につなげて形を作るのだそうです。花瓶? 壺? ボウル? といった親しみのある形状のオブジェなのですが(※水を入れることはできません)、レザーだけで作られていると考えると、しっかり自立しているのが不思議です。

キム・ジュンスさん
キム・ジュンスさん

「もともとは革の端材をなんとか使うことができないかと考えて生まれたのがこの作品です。いろんな場所で受けたインスピレーションをもとに、自分の頭の中にイメージを描き、大きさや色みを決めたら、そこに向けて作り上げていきます。作っている途中で、頭の中のイメージと合わないな、と感じたときは、視点を変えてみたり、違う作品を作り始めてみたりします」と説明してくれました。

ご本人のお気に入りは「Sense of Forest」シリーズの代表的なオブジェで少し大きなもの(写真左)。この大きさの作品が仕上がるまでの制作過程を想像すると気が遠くなりました……。穏やかな人にしかできない神業だと思います。

少し大きめのお茶碗ぐらいのサイズの作品も。
少し大きめのお茶碗ぐらいのサイズの作品も。

また、今回展示・販売されていた作品の中には、ところどころ緑色が取り入れられた作品があるのですが、これは、もともと染められているものを使うこともあれば、革専用の染め材を使って自身で色をつけることもあるそうです。また、素材の特性上、経年変化が早いことも特徴です。

「色の違いは塗料によるものではなく経年変化。革は太陽の光に当たっているだけで深みが出ますし、逆に、漆を塗ったものは時間とともに明るく透明感が増していきます。絶えてしまった命も、もともとは生きていたわけで、この作品は新たにその生命力が漲ったものになると考えています。私たち自身が日焼けをしたり傷ができたり、それぞれの日常の中で変化が起きていくように、作品も暮らしの中で一緒に変化していくことを楽しめると思います」

どうしたって値段が気になってしまう私ですが、作品は小さいもので39,000円+税から、一番大きなものでも600,000円台(真鍮と組み合わせたパーテーションは749,000円+税)。お話を伺っているうちにますます欲しくなり、イッタラのお皿でさえ割ってしまう(!)破壊神と小さな猛獣たちと暮らす私も心穏やかに家に迎え入れられそうだとお伝えすると、キム・ジュンスさんは「それならぴったりです。もしも壊れても接着剤ですぐに直せますよ」とニッコリ。

頭の中で電卓をはじき、後ろ髪を引かれながらこの日は帰路につきました(帰宅してもやっぱり欲しい……)。個展は明日9月18日まで。あと1日になってしまいましたが、空間と調和するたくさんの作品に触れられる貴重な機会なので、ご興味のある方はぜひ!

キム・ジュンス「Sense of Forest」
日程/〜9月18日(日)
会場/CURATOR’S CUBE
住所/東京都港区西新橋2-17-1 八雲ビル 3F
時間/12:00〜17:00 月休・無料
TEL/03-6721-5255

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Profile

井上千穂Chiho Inoue フィーチャー・ディレクター。『Numero TOKYO』創刊時よりエディターとして主に特集を担当。2011年よりウェブマガジン「honeyee.com」「.fatale」の副編集長をつとめ、19年より出戻り現職。作り手の話を聞き、ものづくりの背景を知るとお財布の紐が緩みます。夜な夜な韓国ドラマに、休日は自然の中に逃避しがち。子連れ旅もお手のものな二児の母。

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