本日公開! ソフィア・コッポラ監督最新作『オン・ザ・ロック』にみる同時代性 | Numero TOKYO
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本日公開! ソフィア・コッポラ監督最新作『オン・ザ・ロック』にみる同時代性

ソフィア・コッポラが監督・脚本をつとめ、ビル・マーレイとラシダ・ジョーンズが主演、Apple Original FilmsとA24が製作を手掛ける映画『オン・ザ・ロック』がいよいよ10月2日(金)に全国公開です。ソフィア×ビル・マーレイというだけで胸アツな方も多いのではないでしょうか(私です。ラシダも好きです!)

舞台はニューヨーク。ある日、ライター業も子育てもこなすローラ(ラシダ・ジョーンズ)が、順風満帆に思えた人生や結婚生活に疑心暗鬼になってしまう。仕事の成功を目指し脂が乗りに乗っている夫のディーン(マーロン・ウェイアンズ)が同僚との残業や出張で不在がちになったことがきっかけで。そんな不安を抱えたタイミングで稀代のプレイボーイである実父フェリックス(ビル・マーレイ)が現れ、相談を持ちかけてみると、子どもを預けて夫を尾行することになる。父娘二人、真っ赤なオープンカーに乗って。

そんな大胆なスパイごっこをけしかけるフェリックスは、ロマンスや都会暮らしを謳歌し、自由で愉快、言ってしまえば軽薄(おまけに横柄)なのに憎めない。優しくて、ローラをとにかく褒めてくれるところも最高。でも世代の違いから生じる衝突は、一緒にキラキラとした冒険を繰り広げるうちにどんどん色濃くなっていく。家族とは、性とは、自分自身に価値を感じられなくなってしまったときに必要な処方箋とは……。

幼い子どもを抱えた母親であり、仕事ではスランプに陥っている主人公ローラは、ソフィア・コッポラ自身の経験から生まれたキャラクター。同時に、自身が感じてきた“ある違和感”を自分なりの形で表現したかったのだと語っています。

「この時代にそぐわないことを言う父親を持つことのインパクトに対して、娘を持つ母親として特に敏感になった。この脚本を書くことで、男女の役割に関わるもので私の成長過程で周りにあったすべてのものを解放することができた気がする。私たちはいわばそういうものとスパーリングするように作られた世代のように感じる」

言わずと知れたスターの娘であり、俳優、脚本家、プロデューサーとしても活躍するラシダ・ジョーンズのバックグラウンドとも重なります。そして、エレガントで緻密なソフィアと明朗闊達なラシダを掛け合わせたような、ローラのキャラクター作りに重要な役割を果たしているのは、そのスタイリング。

ボーダーやクルーネックのニット×デニム、足元はVansのスニーカー。そこにシャネルのチェーンバッグやゴールドの繊細なジュエリーをプラスしたスタイリング。書店「STRAND」のエコバッグとシャネルを合わせ持ちしたり、部屋着がビースティボーイズのTシャツだったりするのも見逃せません。そんなファッションの賛否が劇中で問われるシーンもあったりして、リアリティの宝庫。

禁酒時代のもぐり酒場を改造して高級ダイニングにした「21 Club」やセレブ御用達のビストロ「Raoul’s」などが登場したり、舞台となっているニューヨークの街(夜!)も魅力的に描かれています。また、サイ・トゥオンブリーの作品や、ウォーホルとビル・マーレイの2ショット写真、フランシス・フォード・コッポラのポートレイトなどがちらりと登場したり、もちろん音楽も、あれこれお楽しみ満載。

『オン・ザ・ロック』は10月2日(金)から全国ロードショー、10月23日(金)からはApple TV+で世界配信です。ぜひ!

『オン・ザ・ロック』

監督・脚本/ソフィア・コッポラ
出演/ビル・マーレイ、ラシダ・ジョーンズ、マーロン・ウェイアンズ
原題/On the Rocks/2020年/アメリカ/英語/97分/カラー/ビスタ/5.1ch
配給/:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
© 2020 SCIC Intl Photo Courtesy of Apple
http://ontherocks-movie.com/

Profile

井上千穂Chiho Inoue フィーチャー・ディレクター。『Numero TOKYO』創刊時よりエディターとして主に特集を担当。2011年よりウェブマガジン「honeyee.com」「.fatale」の副編集長をつとめ、19年より出戻り現職。作り手の話を聞き、ものづくりの背景を知るとお財布の紐が緩みます。夜な夜な韓国ドラマに、休日は自然の中に逃避しがち。子連れ旅もお手のものな二児の母。

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