Art / Editor’s Post

「《夢路》DREAM ROAD」展にてジャン=ミシェル・オトニエルにリモートインタビュー

9月16日(水)よりペロタン東京で開催中のジャン=ミシェル・オトニエル個展「《夢路》DREAM ROAD」にて、リモートインタビュー&内覧会に参加してきました。2012年の原美術館での回顧展以来初の個展で、日本でのギャラリー展は初めてという今回の展覧会では、日本の“菊の花”にインスピレーションを得た新シリーズがお披露目となります。

ペロタン東京での「《夢路》DREAM ROAD」展示風景
ペロタン東京での「《夢路》DREAM ROAD」展示風景

なぜ菊の花をモチーフに選んだのか、オトニエルさんはこう語られました。

「私にとって花は非常に重要なモチーフです。昨年『ルーブルのバラ』を制作しましたが、バラはフランスでとても大切なシンボルです。私は1992年に初めて日本を訪れて以来、日本の庭園や、日本で植物がどんなふうに育てられているかということにずっと興味を持っていました。中でも(湯島天神で毎年11月に開催されている)『文京菊まつり』には何度も通い、日本人の庭師の技術の高さや菊の花の造形美に非常に感銘を受けました。色や形状がまったく同じように揃えられてた菊の花々はまるで、ミニマリズムのインスタレーションのようでした。また、それぞれの花に詩的な名前が付いていることにも驚きました。展覧会のタイトルになった《夢路》も菊まつりで見つけた実際の花の名前です。

菊は忍び寄る冬もよそに秋に咲く花であり、日本では古来から長寿を祝う花。この作品の構想自体は6〜7年前から始めていましたが、世界的なコロナ禍と時を同じくして発表することになったことで、より、この作品が希望へのメッセージとなることを願っています」

「今回の作品の中で最も優しい」とオトニエルさんがおっしゃっていた“若竹色”の《Kiku》。
「今回の作品の中で最も優しい」とオトニエルさんがおっしゃっていた“若竹色”の《Kiku》。

作品は始めに水彩でドローイングを描き、色を決めてからガラス職人の方と制作していったそうです。日本の色彩感覚や色の名前に惹かれたともお話しされていて、例えば、濃いピンクのような赤紫のような作品は「アヤメ」、薄いグリーンは「若竹」といった色の名前。

これらの展示作品は室内にも置けるような、小さめな立体作品です。有機的で美しく、じっと眺めているうちに抜け出せなくなるような不思議な没入感のあるガラス作品で、自宅にあったらなぁなどと妄想するのも自由……。「反射するガラスの作品であり、作品そのものも鑑賞者も作品の中に映り込むので、作品に包まれるような感覚になると思います。DNAのようなシェイプで、終わりも始まりもなく(作品は一筆書きのようにつながっています)、エネルギーが永遠に続いていくことを表している」とオトニエルさんご本人は解説してくださいました。

こちらはペインティングの展示作品のうちの1点。サイズは164×124×5cm。
こちらはペインティングの展示作品のうちの1点。サイズは164×124×5cm。

また、ギャラリーの奥の部屋には10年ほど前から取り組んでいるペインティング作品も。展示される3点はいずれも菊をモチーフにした、今回の展覧会のための新作で、オトニエルさんご自身は「花の持つ強いエネルギーをペインティングで表現した作品で、花を入り口にしながら、宇宙や広い視野を感じられると思います。日本の伝統工芸でも馴染みの深い金箔の技術を用いたり、書道を参照したりもしていて、ちょっとスピリチュアルな印象もありますよね」と述べられました。

ちなみに。今回の展示以外に、現在日本で鑑賞することができるオトニエルさんの作品は、ハラ ミュージアム アーク(群馬)、シャネル銀座、毛利庭園(東京)、軽井沢ニューアートミュージアム(長野)、そして今年オープンしたばかりの弘前れんが倉庫美術館(青森)にあり(注:倉庫美術館で展示予定だった新作3点のうち1点はコロナの影響で設置が遅れています)、屋外でも室内でも、大型のガラスの彫刻作品は鮮やかに空間を彩っています。こうして私たちにインスピレーションを与え、新しい価値観を示してくれるアーティスト自身は、どんな作品に力づけられるのでしょう。その問いには、こんなふうに答えられていました。

「パンデミック中はとても変な気持ちで、当初は2週間もずっと寝てばかりいました。自宅に飾っているアート作品を鑑賞しながら過ごす中で、アートとともに生活をする感覚が芽生えたのです。例えば、加藤泉さんの作品と、新しい対話が生まれたりもしました。アートは生きていくための一種のエスケープになる。その糸口を届けるための表現が、誰にとっても必要だとあらためて認識しました。いつの日か今作《Kiku》が、日本でどなたかのご自宅の床の間に飾ってあったりすると非常に素敵だなと思います」

そういえば、加藤泉さんの作品は、オトニエルさんとも関わりの深い原美術館(品川)の庭にひっそり……。残念ながら原美術館は来年1月に建物の老朽化のため閉館予定ですが、まだ観られますね! ペロタン東京ともども、ぜひ実物を観に出かけてみてはいかがでしょうか。

ジャン=ミシェル・オトニエル「夢路」

会期/2020年9月16日(水)~10月24日(土)
会場/ペロタン東京
住所/東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1階
入場料/無料
時間/12:00~18:00(要予約)
休館/日・月曜日、祝日
TEL/03-6721-0687

Profile

井上千穂Chiho Inoue ウェブ・コンテンツ・ディレクター。『Numero TOKYO』創刊に参加し、エディターとして主に特集を担当。2011年に卒業後、ウェブマガジン「honeyee.com」「.fatale」の副編集長をつとめ、19年よりNumero TOKYOへ出戻り。外出自粛生活を機に念願のクラシックギターを購入。映画『ビフォア』シリーズのセリーヌ(ジュリー・デルピー)と『はじまりのうた』のグレタ(キーラ・ナイトレイ)のような弾き語りを理想に掲げ、イメトレには余念がない、二児の母。

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