ふさぎこみがちな心を軽くするいくつかの手段 | Numero TOKYO
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ふさぎこみがちな心を軽くするいくつかの手段

翻訳本において「岸本佐知子訳」への信頼感は絶大ですよね。そんな岸本さんの頭と心の中を垣間見られるエッセイも大好きです。

著書『ひみつのしつもん』に収録されている「ひみつのしつもん」は“カード会社のサイトに登録した秘密の質問の答えが思い出せない”というよくある話なのですが、いかんせん展開が愉快なので、テレワークや外出自粛でふさぎこみがちな今こそ! と再読してみたら、やはり心躍りました。おすすめです。

で、件の秘密の質問って悩ましいですよね。一番好きな飲み物やマイベスト映画はときに入れ替わりますし、ペットの名前ですら“ひらがな or カタカナ”で迷ったりもするので、大抵「父親の誕生日」とかそういった変わりようのないものを選びたい気持ちと、AIには解けない面白い秘密の答えにしてやりたいという気持ちのせめぎ合いで右往左往してしまいます。みなさんはどうでしょうか?

ところで 。この岸本さんのエッセイしかり、黄色を配したカバーの本って多くないですか? 単純に目を引くからなのか、たまたまなのか、ずっと前から気になっています、黄色の勢力。

3月8日、国際女性デーにはミモザを贈るのだということをお恥ずかしながら今年知りました。これも黄色だ! とやたらに関心したけれど、近年の自分の記憶力が信用ならないので、毎年そう思っているかもしれない。ちなみにNumero.jpでも、いくつか国際女性デーにちなんだ記事を掲載しています。

3月10日には女学校時代の同級生をたくさん失ったと、祖母から何度も何度も聞いた東京大空襲の話を思い出した昨日。そして本日、3月11日。自宅まで3時間かけて歩いて帰ったこと。信濃町のコンビニで男性ものの健康サンダルを買って、15cmヒールのブーツから履き替えたこと。夕方、寒くなりトレンチコートの襟を立てて頭にスカーフを巻いたこと。その後、コンビニの棚が空っぽになったこと。自身の体験と記憶は一切風化していないのに、コロナ騒ぎで、この9年間でもっともあの日のことを思い出さなかった3月11日。不安な日々はもうしばらく続きそうだけれど、打合せがてら久々に外でランチをして、黄色いチューリップを買って帰ると、ちょっとだけ元気が出ました。

Profile

井上千穂Chiho Inoue フィーチャー・ディレクター。『Numero TOKYO』創刊時よりエディターとして主に特集を担当。2011年よりウェブマガジン「honeyee.com」「.fatale」の副編集長をつとめ、19年より出戻り現職。作り手の話を聞き、ものづくりの背景を知るとお財布の紐が緩みます。夜な夜な韓国ドラマに、休日は自然の中に逃避しがち。子連れ旅もお手のものな二児の母。

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