食パン好き座談会「おいしい食パンと、その食べ方教えます」
どうして食パンブームなの? どうやって食べたらいちばんおいしいの? おいしい食パンを知り尽くす食パン好きによる座談会を決行!
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──今の食パンブームの始まりは?
池田:専門店が牽引しているところが大きいですね。「セントル ザ・ベーカリー」(※)が銀座にオープンしたのが2013年です。その後、大阪から高級生食パンの「乃が美」(※)が関東に進出して、一気に食パンへの注目度が高まりました。
※セントル ザ・ベーカリー:「ヴィロン」を経営するオーナーが始めた食パン専門店の先駆け。併設のカフェではサンドイッチも楽しめる。
※乃が美:大阪発の食パン専門店。シグネチャーの高級生食パンは、多い日には全国で一日2万本も売れるのだとか。
山野:街に「食パン専門店」が増えましたよね。
割田:「ビーバーブレッド」(※)では、食パンは毎日120斤を焼いてるんですが、売り切れる時間がどんどん早くなっています。
※ビーバーブレッド:割田さんが2017年オープン。いつも混雑している人気店。詳しくはこちら。
山野:日本のベーカリーに食パンは必ず置いてあるものなんでしょうか。
割田:お店にもよるでしょうけど、置いていない店のほうが珍しいです。
池田:東京で食パンを置いてない店は数軒です。反対にパンの本場、フランスのブーランジェリーではほとんど見かけません。食パンはスーパーで買ってフレンチトーストやクロックムッシュを作るためのものなんです。イギリスには食パン文化があるんですが、彼らは買ってから何日も置くのでパサパサのものも食べます。こんなにしっとりふわふわな食パンが愛されてるのは日本くらいでしょうね。
割田:欧米人は日本人に比べ唾液の量が多いので食感が違うから、パサパサしていても平気なんだと聞いたことがあります。
池田:2017年秋にセントル ザ・ベーカリーがパリに進出したので、日本のしっとり系食パンがパリにどう受け入れられるのか注目しましょう。
──専門店が牽引した食パンブームですが、追い風になったのは?
池田:2008年頃、食パンに向く超強力小麦粉「ゆめちから」が誕生しました。セントル ザ・ベーカリーはそのおいしさをアピールするためにオープンしたところもあります。今の食パン専門店も「キタノカオリ」や「春よ恋」などの国産小麦粉を使用している店が多いです。
山野:セントル ザ・ベーカリーの食パンを初めて食べたときにはすごく感動しました。パンにずっしり重みがあったし、紙袋や外観もこれまでの食パンのイメージとは違う。「専門店」にも新しさを感じました。
割田:最近は、食パンをプレゼントにする方がいますよね。
山野:私もよくプレゼントします。青山と代官山と伊勢丹新宿店にある「リチュエル」(※)でブルーのギフトボックスに入れてもらうと、可愛いし皆さん喜んでくださいます。
※リチュエル:こだわりの素材を使ったパンを展開。「RITUEL生食パン」と「リッチバターデニッシュ」がセットになった「ギフトアソートBOX」は¥2,000。代官山店は2018年2月にオープンしたばかり。
住所/東京都渋谷区代官山町20-23 TENOHA代官山&NEXT 1F
TEL/03-5489-7639
池田:新百合ケ丘の「nichinichi」(※)もBOXがあります。食パン自体の人気が爆発していてすぐに売り切れていますが。プレゼントとなるとそれなりのものを選ぶから、900円ぐらいの高級食パンが売れるんですよね。
※nichinichi:新百合ヶ丘の人気店。スペシャリテの「nichinichi食パン」は入りで¥420。予約がベター。
住所/神奈川県川崎市麻生区万福寺4-8-4 ペルナ101
TEL/044-819-6631
──食パンのおすすめの食べ方は?
割田:ビーバーブレッドでも販売してるんですが「ラ・フルティエール タケウチ」(※)さんのプルーンコンポートはおいしいですよ。プルーンの成熟具合を一つずつ確認しながら、手摘みしているんです。
※ラ・フルティエール タケウチ:長野で果樹園を営む竹内さんによるブランド。「プルーンコンポート」(税込¥880)はビーバーブレッドで購入可能。
池田:僕はプルーンが苦手だったのですが、これでイメージが変わりました。
割田:僕はバターはもちろん、オリーブオイルで食べることも多いですね。「ジャパニーズ ノマディックソルト サンショー&ユズ」(※)を合わせてもおいしい。あとは「Bocchi」のピーナッツペースト(※)も欠かせません。
※ジャパニーズ ノマディックソルト サンショー&ユズ:eatripの野村友里さんらによるプロジェクト「ノマディック キッチン」から生まれたソルト(¥950税込)。ビーバーブレッドで購入可能。
※「Bocchi」のピーナッツペースト:長年千葉県で良質な落花生を育て、ピーナッツの本当のおいしさを知っている生産者が作ったピーナッツペースト(¥900)。滑らかな舌触りにこだわっている。
URL/bocchi-peanut.jp
池田:千葉のピーナッツを使っているんですよね。ピーナッツペーストというと、口当たりがもさっとする印象があるんですが、これはとてもクリーミー。「manmanaturals」の生アーモンドバター(※)も、食べるのが止まらない危険な一品です。それから「mitsukoji」(※)という幻のジャムがありまして「金柑&キャラメルマーマレード」はイギリスのデールメイン国際マーマレードアワードで、年に職人部門金賞を受賞しています。僕は「柚子のマーマレード」を食べたんですが、味わいがとても複雑で絶品。逗子にある「南町テラス」(※)の「辺塚橙マーマレード」も年に金賞を獲得しています。このマーマレードアワードは意外と要注目ですよ。
※「manmanaturals」の生アーモンドバター:カリフォルニア産の生アーモンドを薄皮付きのまますりつぶし、海塩と黒糖を加えて仕上げたクリーミーな一品(¥730)。無添加、純植物性。
URL/manma-naturals.com
※mitsukoji:収穫時期について果樹園と話をするところからパッケージデザインまで、ジャムのすべてを手がける“ジャム作家”。代表作は金柑&キャラメルマーマレード(写真)。販売予定はやインスタグラムをチェック。
URL/mitsukoji.com
Instagram/@mitsukoji_jam
※南町テラス:神奈川・逗子にて土・日だけ営業しているカフェ。自家製酵母パンを使ったメニューが楽しめる。
山野:私は食パンには何もつけずに食べます。そのままで1回、焼いて1回食べて、1日経過した味の変化を楽しむ。食パンのタイプは、その時々のブームがあるんですけど、今は密度の高い「ぺったりしっとり系」が好き。例えば「シニフィアンシニフィエ」(※)とか。それと「ペリカン」(※)などの「さっぱりもっさり系」の間を行ったり来たり。今はいろんな食パンがあるから楽しいですよね。
※「シニフィアンシニフィエ」:長時間発酵など、独自のこだわりを貫いておいしく健康にいいパンを提供。世田谷区下馬に本店がある。URL/www.signifiantsignifie.com/
※「ペリカン」:浅草にある昭和17年創業の老舗ベーカリー。食パンとロールパンの2種のみを作っている。昨年はカフェをオープン、同年にドキュメンタリー映画『74歳のペリカンはパンを売る。』も公開された。URL/www.bakerpelican.com/
池田:食パンをチャートにすると、横軸が水分量だとしたら、縦軸は甘さかもしれません。専門店の食パンは、一口食べておいしさを感じる甘さがありますが、街のベーカリーさんは甘さ控えめで、毎日食べても飽きない味に作ってあります。
割田:ビーバーでは、昨年開店してから、すでに4回作り方を変えているんです。少しずつアップデートするのもありかなと思って。食べ方としては、店でスライスしながら味見をするんですが、オーブンで一瞬だけ焼いたり、熱々にしたフライパンで両面を秒くらいサッと焼いたりするのがおいしい。
池田:トーストのコツは、素早く高温で焼くこと。強火で表面をカリッと焼くと、内側に水分が閉じ込められてふんわりします。
山野:バルミューダなどのスチームオーブントースターは、コンビニ食パンも十分おいしくなりますよね。
池田:スチームは熱伝導が良いんです。焦げやすいので注意が必要ですが、火力の強い魚焼きグリルもおすすめ。ガスで焼くから水蒸気が出るんですよ。僕は食べ方のブームも変化し続けているんですが、今は「メガネコーヒー」みたいに格子状に切り込みを入れる方法にハマっています。4枚切りの厚みのあるパンも火通りが良くなり、短時間で焼き上がります。格子模様がオシャレだし、バターも染み込みやすくて、ちぎりやすくて食べやすい。あとは「ペタンク」みたいにスティック状に切るとか、切り方で変化をつける。
──こだわりのパングッズは?
池田:ドイツのギューデのブレッドナイフ(※)は、しっかりと重さがあるので、最近の柔らかい食パンも上手にスライスできます。自分にとって武士の刀のようなものです(笑)。
※ギューデのブレッドナイフ:ハード系から食パン、サンドイッチまでなんでもお任せ。家庭用の刃渡りが一番人気(¥17,000)。
URL/leafandmoon.com
割田:僕も使ってます!
山野:私はパンに向かう姿勢を大事にしています(笑)。おいしく食べるためにその日の服装や気持ちを整えたり。好きな友達や家族と一緒だとパンはおいしくなりますよね。
割田:実はそれが重要で、料理学会でも環境が及ぼす味の変化について話し合われています。
池田:精神状態が悪いと、パン切りも斜めになるし、焼き具合もイマイチだったりしますから。もはやそうなると、茶道ならぬパ道ですね。
いま絶対食べたい食パンBEST3発表!
Photos:Kiichi Fukuda, Kouki Hayashi Hair&Makeup:Yayoi Sasaki(Yuri Yamano) Text:Miho Matsuda