【バスキア展 メイド・イン・ジャパン】NYに点在する「バスキア所縁の地」をめぐる
11月17日まで開催中のジャン=ミシェル・バスキア日本初の大規模個展「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」。これまで多くの人に愛されながらも、日本では直接見る機会がほとんどなかった約130点の作品が、森アーツセンターギャラリーに集合している。わずか27年という短い生涯の中で、バスキアは作品の中に何を残したのか、そしてバスキアは日本とどのように関わっていたのか、自分の目で確かめることのできる貴重な機会となっている。
今回はNYのさまざまな場所に点在する「バスキア所縁の地」を訪れたフォト・リポートをお届け。80年代にバスキア本人が通っていたクラブやレストランはほとんど残っていないけれど、NYの街に確かに息づいているジャン=ミシェル・バスキアの残り香を感じてみてほしい。
アメリカン・アート専門のミュージアム
ホイットニー美術館
2015年にアッパーイーストサイドからハドソン川沿いのミートパッキング・ディストリクトに移転リニューアルオープンしたホイットニー美術館は、アメリカンアートを専門に扱う歴史ある美術館。1931年の設立以来、近代・現代アメリカンアートを中心に愛されつづけているミュージアムだ。移転後はぐんと広くなった展示スペースとモダンな建築、開放感のある川沿いの立地でさらに人気を高めている。昨年11月から今年3月まではアンディ・ウォーホルの回顧展が行われており、約350点の作品の中には、バスキアとのコラボレーション作品も2点展示されていた。
このふたつの作品は、1985年にトニー・シャフラジのギャラリーで行われたウォーホルとバスキアの二度目のコラボレーション展覧会で発表された『Paramount』(左)と『Third Eye』(右)。ウォーホルによるパラマウントのロゴやプライスタグのシルクスクリーンの上に、バスキアが数字や文字、頭蓋骨や顔のモチーフを散りばめている。『Paramount』には「な」や「の」などの平仮名も描かれており、バスキアがさまざまな言語を絵のツールにしていたことが伺える。
アメリカの近代・現代アートを中心に展示を行っているホイットニー美術館では、直接バスキアの作品が見れなくても、同時代の作品やその後のアーティストへの影響など、間接的にバスキアに触れることができる場所。NYを訪れる際はぜひ足を運んでみて。
ホイットニー美術館
住所/99 Gansevoort St, New York, NY 10014
TEL/212-570-3600
営業時間/月・水・木・土・日10:30〜18:00、金10:30〜22:00
定休日/火
whitney.org
バスキアが亡くなるまでの5年間を過ごした
ウォーホル所有のスタジオ跡地
マンハッタンのダウンタウンにあるグレート・ジョーンズ・ストリート57番地には、バスキアが1983年から1988年8月に亡くなるまでの約5年間を暮らしていたアトリエがある。当時ウォーホルからこのスタジオを借りたバスキアは、ここで暮らしながら多くの作品を描いた。亡くなったときに発見された場所も、このスタジオのロフトだったという。ここでは現在もメモリアル・プレートを確認することができるほか、訪れた人々によるペインティングやステッカーに埋め尽くされた賑やかな壁に出合うことができる。バスキアの死後、88年の11月にはロウアー・マンハッタンにあるセント・ピーターズ教会でバスキアの追悼式が行われ、300人もの人々が参列した。
ジャン=ミシェル・バスキア スタジオ跡地
住所/57 Great Jones St, New York, NY 10012
バスキアが埋葬されている
ブルックリンのグリーンウッド墓地
1988年、8月12日にグレート・ジョーンズ・ストリートのスタジオで急性混合薬物中毒により亡くなったバスキアは、5日後の17日にブルックリンのグリーンウッド墓地に埋葬された。1838年に作られたグリーンウッド墓地の広大な土地には、マイルス・デイビスやジョゼフ・ピューリツァーなどニューヨークで活躍した多くのアーティストや著名人が眠っており、ブルックリンの観光名所のひとつにもなっている。日本では野口英世の墓石があることでも有名。ナショナル・ヒストリック・ランドマークにも指定されている美しい場所なので、ここでゆっくりと歩きながら、アメリカの歴史を眺めてみては。また、トロリーバスで敷地内を回るツアーもおすすめ。
グリーンウッド墓地
住所/500 25th St, Brooklyn, NY 11232
TEL/718-768-7300
営業時間/8:30〜16:30
www.thewoodlawncemetery.org
バスキアと同じ時代を生きた
アーティスト、Dazeのグラフィティ
最後にご紹介するのは、ブルックリンの南端・コニーアイランドにあるコニー・アート・ウォールズ。コニーアイランドはビーチ沿いに100年以上の歴史を持つアメリカ最大の遊園地ルナ・パークがあり、さまざまな映像作品のロケ地にもなったノスタルジックな場所だ。毎年夏には多くの観光客が訪れるこの場所に、ジョセフ・シットとジェフリー・ダイチがキュレーションするコニー・アート・ウォールズがある。そしてここには、バスキアと同時期に活動したグラフィティアート出身のアーティスト、Dazeの作品が残されている。
アートとデザインを学びながら、地下鉄の車両に多彩なペインティングを残していたDaze。彼の最初のグループショーは1981年にマッドクラブで開催された「Beyond Words」で、ここにはバスキアやキース・ヘリングも参加していた。翌年にブロンクスのギャラリーで個展を開催したDazeは、その後、現在に至るまで世界中の美術館で作品を発表。バスキアのように、ストリートからミュージアムまでを広く自分のキャンバスにした作家だった。彼は今もNYに暮らしている。
コニー・アート・ウォールズ
住所/3050 Stillwell Ave, Brooklyn, NY 11224
営業時間/12:00〜20:00
www.coneyartwalls.com
ここで紹介した以外の場所にも、80年代そのままに残っているショップやストリートには、きっとバスキアが触れた“何か”が残っているはず。もしNYを訪れることがあれば、バスキアの足跡を探しに、ゆっくりと街を歩いてみよう。
「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」
会期/2019年9月21日(土)〜11月17日(日)
開館時間/10:00〜20:00(最終入館19:30)
※10月21日(月)は17:00まで(最終入館16:30)
会場/森アーツセンターギャラリー
住所/東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52階
www.basquiat.tokyo
Photos & Text:Mayu Sakazaki