小誌でもお馴染みの現代アーティストBUGGYの個展が東京にやってきました! | Numero TOKYO
Art / Editor’s Post

小誌でもお馴染みの現代アーティストBUGGYの個展が東京にやってきました!

「鼻血」をコンセプトに作品を作り続けるアーティスト、BUGGYの個展がスタートします。 最新作では、顔がアップサイドダウンに描かれ、鼻血が下から上へと流れているようにも見えます。 日本では、アニメ、漫画、テレビや映画などにおいてセクシャルな場面に遭遇した登場人物が鼻血を出すという描写がたびたび登場します。もちろんコメディにも多く現れるのですが、そうした物語に描かれる「鼻血」は男女にかかわらず性的な興奮を示すものでもあり、見てはいけないものに触れたときに吹き出たり流れ出たりするものでもあり、なんとなくタブーでもあります。この「鼻血」の描写そのものを特有な日本文化ととらえ、ドメスティックな感覚だと語るBUGGY。その理由を尋ねてみました。

「『鼻血』表現との出合いは少年時代に鳥山明『Dr. スランプ アラレちゃん』や新沢基栄『ハイスクール ! 奇面組』等のアニメや漫画でした。1970年代初頭に『週刊少年マガジン』に連載された谷岡ヤスジの『ヤスジのメッタメタガキ道講座』では、谷岡によって発明された『鼻血ブー』という言葉まで生まれ、50年経った今でも、わたしたちの記憶にしっかりと根付いています」と語るBUGGY。 政治家やポップスター、セレブリティのポートレートにストリート・アートさながらの鼻血を描いた本シリーズは、日本のカルチャーのなかにある「鼻血」の感覚を呼び起こすだけでなく、見るものの目を惹きつけます。トランプ前米大統領や、プーチン露大統領といった世界で最も強大なパワーを持った人に描かれた鼻血から、マドンナ、ビリー・アイリッシュやレオナルド・ディカプリオといったセレブリティが鼻血を出す様子も、彼らの持つパブリックイメージとはかけ離れ、もっともリアリティに近づいた血の通った人間であることを象徴しています。buggyの「鼻血」は、それが描かれた対象の人物によってあらゆる意味を持ち、単なる生理現象だけではなく、ローカルな文化とも結びついています。

日本のイメージ文化と世界を1枚の絵画と一筋の鼻血でつなぎ合わせることで、多層的な読み取りを誘発する深さと軽さを備え、タブーへと挑戦する作品。鑑賞者の中にあるそれぞれの経験や感覚を呼び起こす本作は、人と人の感情や思いが複雑に絡み合った現代社会へ警鐘を鳴らしているともいえます。 ぜひ、実物を見にお運びください。

会期/2021年8月13日(金)〜16日(月)
時間/12:00〜19:00
場所/elephant STUDIO(東京都渋谷区渋谷 2-7-4 1,2F)
予約システムARTSTICKERより予約してください
料金/観覧料 ¥500(税込)*自身で金額を決定するドネーションシステム(ミニマム500円から入場料を自身で決定し、それが若手アーティスト支援のためのドネーションとなるシステム。アーティスト支援と国内アートシーンの活性化を目的としたアートアワード WATOWA ART AWARD 2021 EXHIBITION に寄付されます)

*8月16日(月)は観覧無料。
主催/WATOWA GALLERY IG. @watowagallery
問合せ先/info@watowa.jp *メールのみ
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buggy バギー
雑誌広告を中心に2006年より始動。大阪、渋谷で展開するショップ「ASOKO」のファサードやコンセプチュアルホテル「Rock Star Hotel」の全ヴィジュアルを手掛けるほか、国内外のグループ展や個展などでも活躍する。その他、ブランドやメーカーとのコラボレーションでオリジナル商品なども多数リリースするなど、多岐に渡って活動を続ける。
HP/http://buggylabo.com
Instagram/@buggylab
Twitter/@buggylabo

Profile

田中杏子Ako Tanaka 編集長。ミラノに渡りファッションを学んだ後、雑誌や広告に携わる。帰国後はフリーのスタイリストとして『ELLE japon』『流行通信』などで編集、スタイリングに従事し『VOGUE JAPAN』の創刊メンバーとしてプロジェクトの立ち上げに参加。紙面でのスタイリングのほか広告キャンペーンのファッション・ディレクター、TV番組への出演など活動の幅を広げる。2005年『Numéro TOKYO』編集長に就任。著書に『AKO’S FASHION BOOK』(KKベストセラーズ社)がある。
Twitter: @akotanaka Instagram: @akoakotanaka

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