ココ・シャネルの秘密って?
CULTURE CHANELへ
©Benoît PEVERELLI
文学を愛し、詩を愛でたココ・シャネル。歴史に残る彼女のクリエーションには、常に文学とともに育まれていた。そんなシャネル(CHANEL)のクリエーションの秘密の鍵を解くエキシヴィション、「The Woman who reads 読む女」がヴェネチアで開催。その魅力に迫る。
詩とココ・シャネル。モード史に刻まれたシャネルも、深く詩、文学と結びついていた。そんな彼女の詩情を明らかにするエキシヴィションがヴェニスで開催されている。「The Woman who reads 読む女」と題された展示会では、現在でも保存されているパリ、カンボン通りの彼女のアパルトマンからの蔵書を一挙に展示するだけでなく、ココ、そしてメゾンとしてのシャネルがいかに文学と詩からインスピレーションを受けたのかが、垣間見られる仕組みになっている。
「私たちが辿る人生は、ちっぽけなもの。でも夢を描けば人生はすばらしくなる。なぜなら、夢は死を超えてもなお続くのだから」、そう書かれたココの自筆メモからエキシヴィションは始まる。決して恵まれているとは言い難い幼少時代から、ココは永遠の人生を夢の中に、そしてその夢を文学の世界に育んできた。そのメモの横には、ココの愛読書でもあったフロベールの傑作、『ボヴァリー夫人』の自筆原稿が置かれ、小説の主人公、エマの夢に走る人生とココの人生がリンクする。
ココ・シャネルの人生を振り返ったとき、大きなターニングポイントとなるのが、成功を手にし、与えられるひとから与えるひとに変わったときであろう。裕福なエティエンヌ・バルサンの所有するパリのアパルトマンを帽子制作のアトリエとし、実業家ボーイ・カぺルの出資で、1910年最初の帽子店「シャネル・モード」をパリ・カンボン通り21番地に出店。さらにボーイの出資で、1913年ドーヴィルに初のブティックをオープン。その後、1915年ビアリッツ、1918年パリ・カンボン通り31番地と次々に開店します。その後の快進撃は知られているところであるが、財を手にした彼女は、その後惜しみなく芸術家達に援助を送ることとなる。ディアギレフをはじめとするバレエ・リュスへ、そして文学者へ。
(左)ココと親友だったジャン・コクトーの写真「オルフェの遺言」。 ©Jerome Brierre/Rue des Archives
(右)ダダをイメージしたリチャード・バーブリッジの写真。 ©Richard Burbridge
(左)ピカソの「横たわって読む女」も置かれ、ココが生きた時代の空気を感じられる。 ©Succession Picasso 2016
(右)コクトーによるココを描いたデッサン。 ©ADAGP, Paris 2016 All rights reserved “With the kind authorization of M. Pierre Bergé, président du Comité Jean Cocteau”
ジャン・コクトーのアヘン中毒の治療費を全面的に出し、レイモン・ラディゲの葬儀費を工面したのも彼女である。その交流は金銭面だけにとどまらず、作家のポール・モランは彼女をモデルにした小説を書き、詩人のピエール・ルヴェルディは自身の本の献辞に惜しみなくシャネルへの謝意を述べている。今回のエキシヴィションでは、そんな文学者との交流を示す手紙が随所に置かれているだけでなく、中にはジャン・コクトーによるプレスリリースの下書きまでが展示されていて、いかにココが彼らと親密な関係であったのかが伺える。
そんなエキシヴィションのオープニングレセプションに華を添えたのが、シャネルのアンバサダーでもあるキーラ・ナイトレイだ。「誰かの頭の中をすべて広げて、一気に見られるというのはすごく面白い試み」と語る彼女。キーラのエキシヴィションについて聞いたインタビューが「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2017年1・2月合併号に掲載されているので、よりその魅力に触れたい方はぜひ。
ヴェネチアでのエキシヴィションは2017年1月8日まで。よりシャネルの世界を知りたいひとも、文学好きのひとも、この機会にヴェネチアまで足をのばしてみてはいかが。
CULTURE CHANEL, The woman who reads 読む女
会期/2017年1月8日まで
会場/ヴェネティア、カ ペーザロ国際現代美術館
CULTURE-CHANEL.COM
Photos:©CHANEL(Photographer : Thierry Depagne)
Text:Hiroyuki Morita
Edit:Michie Mito