驚きと躍動を生み出すビジュアルデザインスタジオ、WOW。驚異なる探求者の軌跡 | Numero TOKYO
Art / Feature

驚きと躍動を生み出すビジュアルデザインスタジオ、WOW。驚異なる探求者の軌跡

「目に映るものすべて」を対象に、驚きと躍動を生み出す精髄集団。映像から空間演出、UI/UX設計、体験型アート、文化の継承に至るまで。小誌(ヌメロ・トウキョウ)の創刊200号を記念したスペシャルムービーを手がけるビジュアルデザインスタジオ、WOW。彼らが探求するまだ見ぬ地平、その鮮烈なる手触りが、あなたの五感を刺激する。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年10月号掲載)

Expo 2025 Osaka

「大阪・関西万博」にて展示された、圧倒的スケールの体感型作品

大阪・関西万博2025 シグネチャーパビリオン「null2」(2025年)
大阪・関西万博2025 シグネチャーパビリオン「null2」(2025年)

大阪・関西万博2025 シグネチャーパビリオン「null2」(2025年)©Expo 2025
大阪・関西万博2025 シグネチャーパビリオン「null2」(2025年)©Expo 2025

大阪・関西万博2025 シグネチャーパビリオン「null2」(2025年)

万博プロデューサーの落合陽一との協働のもと、企画・映像・サウンド・演出システム全般に参画。館内外の映像や音響、ロボット制御、体験フローなどを手がけた。

大阪・関西万博2025 民間パビリオン「BLUE OCEAN DOME」(2025年) Photo:©TAIKI FUKAO
大阪・関西万博2025 民間パビリオン「BLUE OCEAN DOME」(2025年) Photo:©TAIKI FUKAO

大阪・関西万博2025 民間パビリオン「BLUE OCEAN DOME」(2025年)

海洋生態系の保護などを学ぶパビリオンにて、直径約10メートルの半球体LED装置を共同開発。水の惑星に育まれた生命の輝きと汚染が進行する海の姿を描き出した。本作は現在、日本科学未来館(東京・お台場)にて9月30日(水)まで特別上映された。

 

Spatial Works

商業施設の大型サイネージなど、空間全体の演出事例

「Shibuya Scramble Square Vision」(渋谷スクランブルスクエア株式会社/2020年)
「Shibuya Scramble Square Vision」(渋谷スクランブルスクエア株式会社/2020年)

「Shibuya Scramble Square Vision」(渋谷スクランブルスクエア株式会社/2020年)

渋谷スクランブルスクエアのシンボルとなる大型屋外ヴィジョン(北面および東面、計約800平方メートル)にて、通年放送される環境映像を制作。

『Lumière / Motion Ceiling』(佐々木興業/2019年)
『Lumière / Motion Ceiling』(佐々木興業/2019年)

『Lumière / Motion Ceiling』(佐々木興業/2019年)
『Lumière / Motion Ceiling』(佐々木興業/2019年)

『Lumière / Motion Ceiling』(佐々木興業/2019年)

大型シネマコンプレックス「グランドシネマサンシャイン 池袋」に設置された、光の万華鏡を思わせるシャンデリアと、天井を覆う巨大LEDディスプレイの映像演出。

 

Expressive Frontier

VR、AR、AIなど、新技術で広がる表現領域

「双生する音楽会」(日本フィルハーモニー交響楽団/2020年)
「双生する音楽会」(日本フィルハーモニー交響楽団/2020年)

「双生する音楽会」(日本フィルハーモニー交響楽団/2020年)

テクノロジーでオーケストラを再構築する「落合陽一×日本フィルプロジェクト」(2018年~)にて“映像の奏者”を担当。コロナ禍の2020年は東京芸術劇場(池袋)にて、AR(拡張現実)をまじえた劇場公演とオンライン配信の相乗効果による観賞体験を模索した。

『Link of Moments』(2026年)
『Link of Moments』(2026年)

『Link of Moments』(2026年)

「ミラノデザインウィーク」にてANTEPRIMA、デザインブランド130(ワンサーティ)との共同展で発表した作品。鑑賞者の顔を撮影し、AIが擬似記憶の映像を生成する体験型インスタレーション。

『WOW AR App』(2020年)
『WOW AR App』(2020年)

『WOW AR App』(2020年)

ARとモーショングラフィックスを駆使し、あらゆる環境をアートインスタレーション化するオリジナルのiPhoneアプリ。

Social & Cultural Works

社会や地域文化を読み解き、発信・継承に貢献する

『Voyage 未踏のむこう』(日本科学未来館/2026年) Photo:Hiroshi Hosokawa 画像提供:日本科学未来館
『Voyage 未踏のむこう』(日本科学未来館/2026年) Photo:Hiroshi Hosokawa 画像提供:日本科学未来館

『Voyage 未踏のむこう』(日本科学未来館/2026年)

惑星探査をテーマに驚きをもたらす映像体験を構成。

「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」(21_21 DESIGN SIGHT/2025年) Photo:Keizo Kioku
「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」(21_21 DESIGN SIGHT/2025年) Photo:Keizo Kioku

「そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–」(21_21 DESIGN SIGHT/2025年)

防災をテーマにした21_21 DESIGN SIGHT(東京・六本木)の企画展。災害状況の可視化や防災プロダクト、地域伝承など、展覧会全体のディレクションを務めた。

『BAKERU』(2017年)
『BAKERU』(2017年)

『BAKERU』(2017年)

お面を着けて来訪神などに“化ける”ことで東北の郷土芸能に触れる体験型インスタレーション。

『ロストカムイ』(阿寒アイヌ工芸協同組合・NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構/2019年)
『ロストカムイ』(阿寒アイヌ工芸協同組合・NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構/2019年)

『ロストカムイ』(阿寒アイヌ工芸協同組合・NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構/2019年)

阿寒湖アイヌシアター「イコㇿ」上演作品。舞台映像の演出・制作を担当した。

 

Branding Works

ブランドの思想や企業理念を、新たな解釈のもとにヴィジュアライズ

TAKANAWA GATEWAY CITY 未来体験シアター『この街は、キミの羽になる』(JR東日本/2025年) 図版提供:JR東日本
TAKANAWA GATEWAY CITY 未来体験シアター『この街は、キミの羽になる』(JR東日本/2025年) 図版提供:JR東日本

TAKANAWA GATEWAY CITY 未来体験シアター『この街は、キミの羽になる』(JR東日本/2025年)

まちびらきに際して公開された、高輪の記憶と新たな街の未来を少年の視点で体験する映像作品。

「ANTEPRIMA 2024-25AW Collection」(ANTEPRIMA/2024年)©ANTEPRIMA Ltd. 2024.
「ANTEPRIMA 2024-25AW Collection」(ANTEPRIMA/2024年)©ANTEPRIMA Ltd. 2024.

「ANTEPRIMA 2024-25AW Collection」(ANTEPRIMA/2024年)©ANTEPRIMA Ltd. 2024.
「ANTEPRIMA 2024-25AW Collection」(ANTEPRIMA/2024年)©ANTEPRIMA Ltd. 2024.

「ANTEPRIMA 2024-25AW Collection」(ANTEPRIMA/2024年)

ミラノファッションウィークにて、コレクションテーマ「サイバーパンク」の近未来感とブランド理念「普遍的なエレガンス」をランウェイに設置されたモニター群で展開した。

Original Works

個々の創造欲求から立ち上がる、先鋭的なプロジェクト群

『InfoTexture』(2023年)
『InfoTexture』(2023年)

『InfoTexture』(2023年)

創造的思考を促すデータビジュアライズのデザインを試みるプロジェクト『InForms』より、世界各国のレアメタル産出量を質感とともに視覚化した作品。

『祝彩風祭』(2022年)
『祝彩風祭』(2022年)

『祝彩風祭』(2022年)

寺田倉庫E HALL(東京・天王洲)で開催された設立25周年展「Unlearning the Visuals」より、東北の祝祭行事を再構築した作品。3面スクリーンの大空間で上映された。

「I.CEBERG」より、曽根宏暢による作品『BYPRODUCT』(2026年)
「I.CEBERG」より、曽根宏暢による作品『BYPRODUCT』(2026年)

「I.CEBERG」より、曽根宏暢による作品『BYPRODUCT』(2026年)

創作の価値を見つめ直す社内発の実験的プロジェクト「I.CEBERG」より。鑑賞者の操作で多様なロボットが生成される。

「I.CEBERG」より、「TOKYO PROTOTYPE」(2026年/東京・虎ノ門ヒルズ)出展風景
「I.CEBERG」より、「TOKYO PROTOTYPE」(2026年/東京・虎ノ門ヒルズ)出展風景

「I.CEBERG」より、「TOKYO PROTOTYPE」(2026年/東京・虎ノ門ヒルズ)出展風景

「氷塊のなかに、怪物を求める」と題し、5名の作品を発表した。

インタビュー:WOWという名の探求原理

消費スピードいや増す時代のただなかで、未知なる体験を紡ぎ続けるために、何が必要か。創業者×精鋭二人が語る、湧き上がる衝動の向かう先。

(写真)左から:クリエイティブ・ストラテジストの白石今日美、代表取締役社長/エグゼクティブプロデューサーの高橋裕士、クリエイティブディレクター/ディレクターの北畠遼。
(写真)左から:クリエイティブ・ストラテジストの白石今日美、代表取締役社長/エグゼクティブプロデューサーの高橋裕士、クリエイティブディレクター/ディレクターの北畠遼。

内なる衝動を可視化する越境者たちの集合体

──ビジュアルデザインスタジオとして「目に映るものすべて」を対象に領域を広げてきました。現在の立ち位置をどう捉えていますか。

高橋裕士(以下、高橋)「来年で創業30周年、映像制作、空間インスタレーション、刀匠である父との協働など日本文化に根差した作品まで。常に新しい技術と並走してきましたが、根本的なスタンスは変わりません。先日もAIの時代にどう向き合うかという講演に際して、表現したいという衝動こそが大切だと再確認したところです」

白石今日美(以下、白石)「前職であるビジネスコンサルタントの視点からWOWの特徴を分析したのですが、一言で表すのはとても難しい。表現領域の広さはもちろん、作風もディレクターやデザイナーごとにバラバラです。固体か液体かもわからない表現の多様性が、何よりの魅力だと考えます」

北畠遼(以下、北畠)「WOWに勤務後、外資系テック企業を経てまた戻ってきた身からすると、ここは個人の役割が明確に決められている組織とは正反対だと感じます。一人一人の個性や衝動を起点にプロジェクトが立ち上がり、それをみんなで支え合う。極めて特殊な生態系だと思いますね」

高橋「一言でいえば越境的。プロデューサーであってもクリエイティブの内容を考えるし、デザイナー同士も全体の方向を議論する。それぞれが『自分がどこから来てどこへ向かうのか』という根本的な問いと向き合うことが、古びない表現サイクルを生んでいるのかもしれません」

白石「クライアントワークの場合、要件の社会性や時代性も意識しますが、それ以上に表現するべき核を突き詰めようとする姿勢がデザイナーの一人一人にあります。この核を技法や技術にとらわれずに形にしてきたことが、時代に消費されない表現へとつながってきたのだと思います」

北畠「『いいものを作りたい』という思いがベースにあって、それを達成するためのコアを突き詰めた結果、問われるのは『自分が面白いと思えるかどうか』。何かを与えられるよりも、自ら価値を見いだすこと、自分だけの視点とは何かを考える文化が根付いている感覚があります」

──中毒性を煽るショート動画があふれるなか、即物的な消費とは逆の深度を指向してきたわけですね。

高橋「同業者からはよく不思議がられますよ。消費におもねるほうが利益につながるのに、どうやって会社を回しているのかと。特徴的なのは、広告の映像制作の比率が下がってきた一方で、今回の『Numéro TOKYO』創刊200号の記念スペシャルムービー(※1)のように、企業の周年事業などの大きな依頼が増えてきたこと。さらに昨年の『大阪・関西万博』では、ずっと伝えたいと思ってきたことがようやく世の中とつながった実感を得ました。クライアントの課題と向き合うにせよ、落合陽一さんをはじめとする才能との協働にせよ、自発的な作品にせよ、この多様性こそが武器になると感じていますね」

※1 小誌の創刊100号(2016年)に続き、200号記念のスペシャルムービーをWOWが制作。くわしくはこちらをチェック!

北畠「印象的だったのは、白石がディレクターの一人として携わった21_21 DESIGN SIGHTの企画展『そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–』。ヴィジュアルを主要言語にして枝葉が広がった先に、展覧会全体をディレクションする機会が訪れた。日々の積み重ねが予想もしない出力先につながるという意味で、驚かされました」

白石「展覧会の依頼のきっかけの一つは、データヴィジュアライズの新たなアプローチを試みたオリジナル作品『InForms』でした。創業地の仙台がある東北はWOWのルーツともいえる土地であり、災害というテーマへの使命感もありました。もともと社会課題に目を向けているメンバーも多く、それがWOW25周年の展示などで培ってきた映像による空間インスタレーションや体験デザインなどの手法と結び付き、日の目を見た形です」

高橋「社内発の企画でいえば、北畠が牽引する社内実験プロジェクト『I.CEBERG』の展開も印象的。『こういうことをやりたい』という自由な目的意識を発端に個人的な衝動や先鋭的な部分が凝縮され、社内へ波及していく流れですね」

北畠「仙台で認知科学の研究に携わっているメンバーの言葉ですが『個人の衝動を掘り進んでいった先に、人間共通の普遍的な価値にたどり着く』。その究極のところを突き詰めて、クライアントワークとオリジナルワークの境界線を溶かしていけたらと考えています」

 

AI時代にも揺るがぬ意思で躍動する表現を描き出す

──個々の探求の一方で、ソリッドな表現など、WOWらしい世界観をどのように保っているのでしょう。

白石「それが……統一感のチェックはほとんどありません。にもかかわらず一貫性を感じるのは、求められる自発性と表現の精度が暗黙のうちに共有されているからと感じます」

高橋「東京と仙台に拠点を置いているのも、異なる考え方や時間軸が創造的に昇華されていくからです。要は、個々の自由な感覚をどう伸ばしていくか。つい先日も、郷土芸能をモチーフにした『BAKERU』から生まれた『バケルの学校』の巡回公演をとおして、東北と北海道の郷土芸能の交流を描いたドキュメンタリー『踊る 唄う つながる』が完成したばかり(※2)。長く続けるなかで学びやつながりが積み重なり、作品が成長していくこともありますね」

※2 2025年、子どもたちに「BAKERU」の体験を届ける「バケルの学校」が東北から北海道へ巡回。北海道の平取アイヌと秋田の「根子番楽」との交流の様子を、ドキュメンタリー作品『踊る 唄う つながる』として記録した。

──本格的にAIの時代を迎えるなかで、ヴィジュアルデザインの今後をどう見据えていますか。

北畠「AIは表現だけに限っていえば、今までの延長線上にある選択肢の一つにすぎません。ただ、人とコンテンツの関係は変えるかもしれない。心を躍動させるには、よりさまざまな試行錯誤が必要だと考えています」

白石「大切なのは表現や解釈に奥行きが生まれるかどうか。AIが人間の心を震わせる表現に結び付くかどうかは、これから突き詰めていくべき問題ではないでしょうか」

高橋「15年ほど前に『これからはプロジェクションマッピングだ』という時期がありましたが、AIも同じことでしょう。今年の『ミラノデザインウィーク』で発表した『Link of Moments』は、AI生成の映像と人間の記憶を呼応させる試みでしたが、AIを使うかどうかはアウトプットが高まるかどうか次第です。同じツールによる同じような表現が作られていくなかで、重要なのは『いま自分が何をやりたいか』。この二人にも、ぜひ新しい景色を切り開いてもらいたいと期待しています」

Portrait : Ayako Masunaga Edit & Text : Keita Fukasawa

Profile

WOW inc. ワウ 東京と仙台、ロンドンに拠点を置くビジュアルデザインスタジオ。3DCGを軸に、グローバルブランドをはじめとする映像制作、インスタレーションや空間演出、アプリケーションなどのUI/UXに始まり、社内発の実験的なオリジナルワーク、体験型アート作品まで、さまざまな領域を縦横断しながら活動。人々の心を躍動させる視覚表現を追求し続けている。来年には設立30周年を記念した展覧会を開催予定。
www.w0w.co.jp/
 

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