藤田貴大×丸山隆平 対談 「同じクラスだったら、実は仲が良いという関係になっていたはず」

演劇団体マームとジプシーの主宰で、近年はイタリアや韓国など、海外にも活躍の場を広げている演劇作家、藤田貴大。彼の新作舞台『water』に、映画『金子差入店』や舞台『oasis』など、特に繊細な役どころを演じて俳優としての評価が高まっているSUPER EIGHTの丸山隆平が主演。丸山が出身地、京都での記憶や思い出を振り返りながら“自分”を演じるという今回の作品について、そして同世代ならではの共通点について語ってもらった。

偶然がつないでくれた二人の縁
──お二人は約4年前から交流があるそうですね。
藤田「はい。丸山さんが初めてマームを観てくださったときはコロナ禍でごあいさつができず、次に観に来てくれた京都公演のロビーで初めてお会いしました」
丸山「そうだった! 緊張してあまり覚えていないです」
──丸山さん、なぜマームとジプシーをご覧になろうと?
丸山「友人が『きっと好きだよ』と、連れて行ってくれました。観ている最中から、自分の実体験とリンクして、感情がうわーっと高ぶりました。それも残酷なまでにシーンが繰り返されるという、観たことのない演出手法。『面白い! すごいものを観た!』と事務所のスタッフに話したら、なんと出演の話が進んでいたという」
藤田「いろんな偶然が重なりましたね。以前から、丸山さんの事務所の方に『何かやりませんか?』とお話をいただいていて。同時期に、偶然丸山さんが観に来てくれたんです。また僕は以前から京都をリサーチしていたのですが、丸山さんにお会いするとなって、丸山さんが京都のご出身と知り、本当に!?と」
──藤田さんはなぜ京都をリサーチしていたのですか。
藤田「僕が大学生だったとき、舞台美術の授業で京都での集中講義がありました。寺社仏閣や庭園を建築や舞台美術の観点から見て、それ以来好きな街でした。マームの初期の公演も無理やり京都をツアー先に入れたり(笑)。それがつながって、京都での仕事は多かったです。京都でワークショップをやって、そこで出会ったおじいさん、おばあさんに話を聞くリサーチをしていた頃に、京都出身の丸山さんが現れたんです」
丸山「へえ! 僕は藤田さんに引き寄せられたんや! 不思議ですね。一度藤田さんの事務所にお邪魔したこともあって」
藤田「朝まで一緒に飲んだときですね。食事を作って飲んで、楽しく話して、気づけば朝」
丸山「ずっと話し続けたくて、トイレにも行きたくなかった(笑)」
藤田「そのときも京都の話をしてくれました。会うたびに思うけど、丸山さんにはいろんな顔があるんです。僕、アイドルという立場の人と初めて話したのが丸山さんで。でも丸山さんにはアイドルとしてだけでなく、ベースを弾く人、ダンスをする人、俳優などいろんな表情があって。翌日の仕事が違うと、微妙に表情が変わるんです」
丸山「ほんと?」
藤田「はい。それが僕には刺激的で。ホテルのロビーで会っても、前後の仕事でちょっと表情が違っている。こんなにいろんな顔を持ち合わせていないとできない仕事って大変だなと。この作品では、そんなところも率直に描きたいと思っています」
丸山「確かに俳優として演じるときは、意図して役の人物像を落とし込んでいくことはあります。何かしらの症状を抱えている人間を演じるときには、自分を良くないほうに持っていこうとしたり。そのときで自分が変化しているのかもしれない。でも音楽活動やバラエティ番組は自分自身から発するものなので、また違うんですよね。でも、そんなふうに俯瞰してみてもらえることが、うれしいです。自分では見られない角度から見てもらい、こう見えてるよと教えてもらうことはとても好き。だからいろんな演出家の方とご一緒して、自分では知り得ない部分にスポットライトを当てていただくんです。特に今回の役は僕自身なので、未踏の世界」
藤田「こういった作品の創作って誰とでもやれることではなく、丸山さんがさらけ出してくれるからできること。少しでも紗がかかるとできない作業なんです。二人で京都の街を歩き、いろいろなお話を聞かせてもらって。丸山さんはそれが人生だからと包み隠さず話してくれました。さらに印象的だったのが、お店に連れて行ってもらうと、『丸ちゃん』『隆平』『隆ちゃん』といろんな呼び方で呼ばれていること。それに対して、『ただいま!』と答える丸山さん。そして帰り際には『いってきます!』。京都の人たちの頭の中にはそれぞれの丸ちゃんや隆平がいて、関わっている。自分にはない感覚で驚きましたし、グッときました。きっと丸山さんはお仕事のある東京と大阪の狭間で自分を整えているんだろうな、と」
丸山「その通りです。ある時期から意図的にそうしています。僕が『ただいま』『いってきます』と言うのは、ここに絶対戻ってくると決めているから」

同世代だからこそ通じ合う感覚も
──丸山さんが藤田さんに自分をさらけ出せるのは、なぜですか。
丸山「単純に、藤田さんが書こうとするものに必要なパーツだと思うから。僕は藤田さんの作品から、大きなものをもらったんです。だから、作品の軸として僕の中身を欲してもらえるなら、こんなにうれしいことはない。全部さらけ出すことで、この作家さんはどう切り取るんだろう? という興味もあります。実際に途中までの台本を読んで、オーッ! となっているところ(笑)。新しい国に降り立ったときのように、空気も匂いも歩いている人も動物も違う、全てがカルチャーショックという感覚。この作品を読み解いていくのが楽しみであり、怖くもある。自分にできるのかな? って、バンジージャンプを飛ぶ前みたいな気持ち」
藤田「丸山さんなら大丈夫!」
──丸山さんは藤田さんをどのような劇作家、演出家だと思いますか。
丸山「以前、藤田さんの本を読んだことがあって、そのときは、一緒に仕事をするなんて思ってなかったんですけど」
藤田「その時期はとにかく“おんなのこ”に焦点を当てていたんです」
丸山「それも生命体として捉えていて、そこに僕は興味を持ちました。自分の観点、感性に噓がない、真っすぐさがいいなって。もし同じ学校の同級生だったら、クラスのみんなには知られてないけど実は仲がいい、みたいな関係になりそう」
藤田「漫画を貸し合ったりしてね」
丸山「カルチャー的なところでつながっていたんじゃないかな」
──お二人は普段、どんな話で盛り上がりますか?
藤田「いろんな話で盛り上がります。まず連れて行ってもらうお店が、おいしいところばかりでびっくりしています。しかも粋! 何も言わなくても、すっと出てくる。京都だなぁと」
丸山「僕の周りの人たちを粋と言っていただけることがうれしい! 僕は周りの人たちから粋な恩恵をたくさん受けているから、自分も粋でありたいと心がけているんです」
藤田「撮影でお邪魔したお店では、スタッフ含め訪れた人全員がそうめんをごちそうになりました。すごく大きい氷をくり抜いた器で食べるそうめん。おいしかった!」
丸山「撮影というより、もはや旅行(笑)」
藤田「僕たち、年齢が2つ違いで同世代。漫画や音楽でお互いにわからないことがないのは大きいです。マームとジプシーは2007年から始まっているので、世代的にも同じ時間を並走してきた感があります。周りにも丸山さんの音楽を聴いて育ってきた人が大勢います。その意味でもつながっている気がする」
丸山「僕は最近、アンビエントなインストゥルメンタル音楽を興味深く聴くことが多くて。マームとジプシーで使われている音楽はクールで肉体的。琴線に触れますね。そのサウンドメイクにも興味津々です」
藤田「音についても相談しながらやりたいですね。すでにフィールドレコーディングが始まっていて、水の音など京都のいろんな音を使いたいと思っています」
──チラシのヴィジュアルが印象的ですね。水の流れと川に立つ丸山さん。
丸山「カメラを通すと、京都でいつも見ていた川がこんな色になるのか!と新鮮でした。肉眼で見るのとは違い、それぞれ感じる色があることが面白いなと」
藤田「撮影は楽しかったです。朝から夕方までかけて撮影したものが公演パンフレットにも掲載されます。今回、京都劇場で公演ができることにも意味を感じます。それも丸山さんが10代の頃に立っていた劇場なんですよね。そこに戻れるという」
丸山「本当にそれ以来。凱旋です」

自身も知らない丸山の一面を模索する
──丸山さん、楽しみにしていることは?
丸山「舞台上で何が起きるか。創作過程でどれだけ皆さんとコミュニケーションをとれるか。また今の台本から派生していくものと削られていくもの、作品が生き物のように変わっていく過程も楽しみです」
藤田「キャストのみんなも丸山さんと会って話したいと思っているんじゃないかな。台本に書かれていることはわかるけど、リアルではどういう人なのか、答え合わせがしたいと」
丸山「みんなでモデルとなった場所に行けるといいのにね」
藤田「京都公演のとき、きっと聖地巡礼できますよ」
──丸山さんは“わたし”という役、ご自身を演じることについてはどう考えていますか。
丸山「たぶん、マームでは他のカンパニーとは違うリアルさを求められると思います。『わたし』を演じてはいるけれど、現実と非現実を行き来する場面もあるので、その塩梅を稽古場で探っていけたら」
藤田「丸山さんが『丸ちゃん』『隆平』と呼ばれる人として登場するように、他のキャストも実名でやろうと思っています。最近、演劇で現実をどう描くかが試されていると思うんですね。演劇は映画やドラマに比べて、厳密にフィクションを描くのが難しい部分があります。例えば現実の世界で今朝大きな地震が起きたとして、キャストも観客もそのニュースを知った状態で、演劇をスタートせざるを得ません。そういった意味で、演劇であまりにも虚構を見せられると僕自身がうさんくさく感じるようになって。だから、この作品もはじめは本当っぽくやりたい。だけどどこかで、丸山さんは僕が作った丸山さんを演じなければいけなくなってくるでしょう。自分だと思って演じていたら、藤田が描いた自分になっていた、その微妙なズレをどう埋めるか。それも楽しみにしています」
丸山「僕も普段、自分がこんな人間だとわかって行動しているわけではなくて。それを今回は藤田さんの解析のもとで演出していただく。こんな面白いことはないです」
藤田「コンサートや舞台、テレビ番組…この4年間丸山さんを見てきて、いろんな顔を持つってこういうことだと実感しています。今まで関わってきた俳優さんたちともやっていることの種類や数が違う。逆に言えば、どこをどう切り取っても丸山さん。それが水のイメージにハマると思います。無形で色もない水と丸山さんがリンクすると、すごく面白い作品になるはず」
丸山「僕は藤田さんの話によって、京都の下に流れている水のことを初めて知りました。怖くて神秘的だし、特別な土地なんだなとあらためて。こうして僕の知らない京都と出会えた。藤田さんと一緒に歩いたことで、違う視点を持てたことは大きいです」
藤田「丸山さんが過ごしてきた街は桂川沿い。京都では、賀茂川と高野川が合流して鴨川になり、その鴨川が桂川、宇治川、木津川などとつながって、淀川になる。その淀川が大阪湾に流れ着くんです」
丸山「僕が桂川を見て育ったように、横山(裕)は淀川を見て育ったんですよ」
藤田「それ、面白いですね! この川の流れを地図で見たとき、これは丸山さんの人生だと思いました。10代の頃、桂川の岸辺で佇み、誰にも知られずにギターを弾き、桂川のマラソン大会に出ていた丸山さん。そこから海までたどり着いて、その後、東京やさらに大きな世界へと流れていく。最後は鴨川を眺めながら、丸山さんに語ってほしいと思っています」
丸山「グッとくるなぁ。でも、どれくらいの長台詞? 怖いんだけど(笑)」
藤田「僕は稽古をしつこくするタイプなので大丈夫(笑)」

舞台『water』
作・演出/藤田貴大(マームとジプシー)
出演/丸山隆平/
青柳いづみ、伊藤万理華、植木祥平、内田健司、平井まさあき(男性ブランコ)、山本直寛/持田将史(s**t kingz)
https://water-stage.jp
【東京公演】
公演期間/2026年9月27日(日)~10月25日(日)
会場/東京グローブ座
【京都公演】
公演期間/2026年11月7日(土)~10日(火)
会場/京都劇場
Photos:Takao Iwasawa Hair & Make-up: Miyuki Ohtakara (Takahiro Fujita) , Ryuji Nakashima (HAPP'S / Ryuhei Maruyama). Styling: suzuki takayuki (Takahiro Fujita) , Yoshio Hakamada (juice / Ryuhei Maruyama) Interview & Text: Maki Miura Edit : Sayaka Ito
衣装協力/suzuki takayuki(藤田貴大)
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