【パリで輝く、日本の感性】vol.3 フローリスト 田浦千花子 | Numero TOKYO
Life / Feature

【パリで輝く、日本の感性】vol.3 フローリスト 田浦千花子

日常のなかにアートが息づく街、パリ。異国の空気に身を置きながら自らのルーツを探り、自分らしさを模索する日本人女性クリエーターたち。皿の上に季節を映し、土に触れ、花と対話する。そんな彼女たちの現在地を見つめる。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年7・8月合併号掲載)

田浦千花子

日常に彩りを添える花々

パリ2区のフローリスト、千花子さんの店「CHIKAKO」は、日曜日になると、まるで街の呼吸と同調するように人々が吸い込まれる。生活の中で当たり前に存在する花を求めて。「マルシェに行って食材を買って、花を買って、家でご飯を作って、そんなみんなのいつもの生活の一部になっている感覚が嬉しい」

デルフィニウムとアンスリウムを大胆にあしらったアレンジ。撮影用に作成。大型作品にもかかわらず、わずか10分足らずで完成させる技には脱帽。多くの色を配色しながらも全体的にまとまりがあるのはさすが。
デルフィニウムとアンスリウムを大胆にあしらったアレンジ。撮影用に作成。大型作品にもかかわらず、わずか10分足らずで完成させる技には脱帽。多くの色を配色しながらも全体的にまとまりがあるのはさすが。

日本では美術大学を経て空間演出の仕事に就き、その後ホテル内の花屋へ。「目の前でブーケを作るとお客さんの歓声が返ってくる。そのやりとりが面白かった」と語る。「雑誌で見るパリの花の現場を見てみたい」という思いで、フランス語もままならないまま渡仏した。やるなら憧れのフローリスト、ステファン・シャペルの下で働きたい。自筆の手紙も書き、今思えば大胆なブックを送り、ようやく研修できることに。

チューリップと水仙を使ったブーケ。黄色をポイント的に配色。
チューリップと水仙を使ったブーケ。黄色をポイント的に配色。

持ち歩き時間が長いから、水持ちの良い花を」というお客のリクエストで、ピンクッションなど南国の花を中心にしたブーケを。花以外のものはできるだけシンプルに、ラッピングは白。
持ち歩き時間が長いから、水持ちの良い花を」というお客のリクエストで、ピンクッションなど南国の花を中心にしたブーケを。花以外のものはできるだけシンプルに、ラッピングは白。

現場で経験を積み、早朝の買い出しから深夜の生け込みまで寝る間を惜しんで働いた。「まるで一年が10日で過ぎるような感覚でした」。また身体的にパリの花を学んでいく。転機となったのは、パリでは5本の指に入るほど人気のドボリューのピエールの右腕として6年勤めていたときにやってきたコロナ。

「コロナをきっかけに仕事が一段落したときに、自分で店を持ってみたいという気持ちが強くなり。今の物件に出会い、気に入ったので即決しました。自分の店を持つことで、以前よりも自分の好きなものが何か、表現したいものが何かがより明確に見えるようになりました」

話題のビストロやカフェがひしめくエリアにお店が。店先には季節の鉢植えを置いて。
話題のビストロやカフェがひしめくエリアにお店が。店先には季節の鉢植えを置いて。

オープン以来、大ぶりの枝を大胆に使ったスタイルなどが評判になり、今ではロエベアライアなど一流メゾンの仕事もこなすように。だが彼女は自らを「アーティストではなく花屋」と位置付ける。「そのブランドがより素敵に見えるように、お手伝いができる花屋でありたいと思っています」

店には常時色とりどりの花が。手前にあるアンスリウムの珍しい形に注目。ほかの店ではないような個性的な草花を扱うのも千花子さんの特徴。
店には常時色とりどりの花が。手前にあるアンスリウムの珍しい形に注目。ほかの店ではないような個性的な草花を扱うのも千花子さんの特徴。

一方で彼女の原点はあくまでも店にある。「お客さんとのやりとり、それだけのためにやっている気がします。もう一度、店売りにしっかり向き合いたい。ビジネスの基本というか、お客さんを大事にしたいです」。拡張を続けるキャリアの中で、彼女が見つめ直しているのは、世界どこでも変わらない原点だ。日曜日、ごく普通の生活を送る人々に花を手渡す。買う人の笑顔を求めて。そんなシンプルな時間こそが、彼女の表現の核であり続けている。

店の隣にはテイクアウトできるイタリアン・カフェが。忙しい仕事の合間のカフェ・ラテタイムは至福の時。
店の隣にはテイクアウトできるイタリアン・カフェが。忙しい仕事の合間のカフェ・ラテタイムは至福の時。

Photo: Yusuke Kinaka Interview & Text: Hiroyuki Morita Edit: Shiori Kajiyama

Profile

田浦千花子 Chikako Taura 大学で美術を学んだ後、デザイン系の会社に就職後、ホテル内の花屋へ。2009年ワーキングホリデービザで渡仏。ステファン・シャペルなどで経験を積んだ後、2015年「Debeaulieu」でピエール・バンシュローの右腕として活躍。2021年に念願の自らのお店、「CHIKAKO」を2区にオープン。
 

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