日米で活躍するスタンダップコメディアン、ユリエ・コリンズにインタビュー「価値観が違っても、面白いことは共通する」 | Numero TOKYO
Culture / Feature

日米で活躍するスタンダップコメディアン、ユリエ・コリンズにインタビュー「価値観が違っても、面白いことは共通する」

Photo:Alex T Thomas
Photo:Alex T Thomas

関西弁と英語を自在に操るコメディアン、ユリエ・コリンズ。日米のハーフとして日本でも米国でも馴染めなさを感じてきた彼女は、日常の違和感を鋭くすくい上げ、観客を笑いの渦に巻き込む。全国ツアーをソールドアウトさせ、北米ツアーも成功させた彼女に、同じく日米で活動する文筆家の佐久間裕美子がインタビュー。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年7・8月合併号掲載)

Photo:Yeau
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──アメリカ流のスタンドアップコメディーと日本文化の融合という新たな潮流を、リアルタイムで切り開いていらっしゃいますよね。

「2022年頃から英語で(コメディーを)試し始めて、24年くらいから日本語でも始めました。その頃から日本で活動するスタンドアップコメディアンも増えたし、その分、チャンスも増えてきたと感じています」

──子ども時代から、人を楽しませるタイプでしたか?

「映画の台詞を丸暗記したり、家に来てくれた人の前で映画『タイタニック』の主題歌を歌ったりしていましたね。女優になりたかったときもあったし、歌手になりたいと言っていたときもありました。学校ではハーフが自分だけだったんですが、それだけで目立つじゃないですか? それが嫌で、ハーフであるということより、自分がやることで目立ちたかったのでしょうね。バンド活動をしてボーカルをやったりしていました」

──関西ならではのお笑い文化は吸収していましたか?

「うちの母はブティックをやっているんですが、お客さんを笑わせるところを見ながら育ちました。でも、自分は人を笑わせるのが得意だと思ったことはなくて、むしろ自信はないほうだったと思います。大学でアメリカに移って演劇を専攻したんですが、そこでインプロビゼーション(即興)の授業を受けて、そのパワーに衝撃を受けたのを覚えています」

きっかけは「ハーフあるある」

Photo:Yeau
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──日本でハーフとして育つことの難しさもありましたか?

「悪口を言われるときに、『ハーフ』とか『ガイジン』とか言われたりはしましたけど、普段からいじめられたりはなかったんです。ただ、ハーフというだけで、なんか褒められるんだけど、異質の存在として扱われる、ということが苦手でした。高校生のときに一緒にバンドをやっていたハーフの男の子がいて、彼は『自分のパワーとして使えばいいやん』という意見の人だったんです。『ガイジンだから漢字読めない』と言えば、勉強しなくてもいいやん、とかね。そういう見方もあるのか、と思いましたけど、自分は違ったんです。私がコメディーを始めたきっかけは、TikTokで動画がバズったからなんですけど、『ハーフあるある』系のネタを配信したときに、世界中のハーフの人たちからメッセージやコメントが来て、同じ経験をしている人がいるんだって気がつきました」

Photo:Yeau
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──日本とアメリカという二つの文化を内包している感覚はありますか。

「日本語のネタで話すことがあるんですが、高校卒業まで和歌山にいて、バンドとか目立つようなことをしながらも自分に自信がなかったし、目立ちすぎるのも嫌で、常に周りに合わせる癖がありました。でも、今度はアメリカに行ったら“日本から来た子”という扱いを受けるし、授業も恋愛の環境も激しい。カルチャーショックが大きくて、そこでも周りに合わせるようになっちゃった。自分という軸を見つけるのに時間がかかった気がします。今も、日本語でライブをやっているときの自分の性格と、英語でやっているとき、ちょっと違う気がしているんですよね。ちょうどアメリカツアー中で、北カリフォルニアのサンノゼというところで英語のライブをしたんですけど、日本人のお客さんが多くて、ちょっと思うようにいかなかったんです。もしかして、日本人の前で英語を話すことに戸惑ってしまったのかなって、今、話しながら考えました」

──私自身、日本のお笑いにある自虐やいじめっぽい要素が苦手だったし、日本とアメリカで笑いのツボが違うということはずっと感じてきたんですが、ユリエさんはそういう壁を超えている感じがして。

「私は日本のお笑いのことはそこまでわからないんですが、アメリカのコメディーで響くのは、パンチアップ(自分より上の人をいじる)ですよね。自分は、英語から始めましたが、日本語でやり始めたときに、ネタをどう書いていいかわからなくて、自分の声を見つけるのには苦労しました。『こういうことを言ってほしいんだろうな』って、自分の脳から来た言葉ではなく、お客さんの期待を計算しすぎて詰まってしまって。それで、日本語と英語で対応してくれるバイリンガルのカウンセラーと話した結果、小さい頃から持っていた、周りに認められたいという気持ちがまだ残ってるということに気がついて、それでようやく、そういうことを忘れて自分が言いたいことを自分らしく言えばいいんだってしっくりきました。日米の笑いのツボの違いを考えすぎてたんだと思うんです。もちろんテクニックの違いとかはあると思うんですが、うまく伝えれば、誰でも面白く感じることがあると思うんですよ」

面白い、でつながれる

──分断の時代といわれていますが、自分と価値観が違うかもしれない人たちの前で、コメディーをやることはどう感じていますか?

「私がお笑いを好きなのは、価値観が違っても、面白いことは共通するってことなんです。だから、みんなが共感できる面白さをなんとか見つけられれば、それをかっこよく言いたい。最初は噛み合わなかったお客さんでも、そうやって笑いを勝ち取れたらうれしいし、気持ちがいい。トピック自体がシリアスじゃなかったとしても、違う場所から来た人でも、自分の真実を語っていれば、伝わると思っています」

──ポルノサイトでいちばん検索されるワードが「ジャパニーズ」だとか、アジア人女性に対するフェティシズムとか、センシティブに思えることに突っ込んでいくのを見ると、勇気があるなあと感動します。

「『白人男性とアジア人女性のカップルが…』って言っただけで、会場中がクスクスって、その後の展開をわかってくれるんですよね。皆が同じことに気がついてる、みたいな瞬間がいいんです。もちろん、最初から私のことが好きで温かく笑ってくれるお客さんも好きなんですけど、誰かに嫌々連れてこられた、みたいな人が、思わず笑っちゃったって表情をするのが大好きなんです」

──英語と日本語の両方で発信していて、字幕もつけていますよね?

「字幕は自分でつけています。私のユーモアだから、英語のネタを日本の人にもニュアンスをつかめるようにって、考えて書いてるんですよ。自動翻訳もあるけどなんか違うし、自分でOKと思えるレベルの字幕を作れる人がいなくて。英語は英語だけ、日本語は日本語だけでやってたときもあるんですけど、やっぱり見てくれる人に申し訳なくて」

Photo:Kay Ikegami
Photo:Kay Ikegami

──今回の北米ツアーのポスターですが、ユリエさんが男たちを従えている感じのデザインがクールでした。

「高校生のとき、アヴリル・ラヴィーンが男どもを従えて世界ツアーをする感じに憧れていたので、夢がかないました」

──海外在住の日本人にも夢を与えてくれています。

「アメリカで日本人のお客さんがアップしてくれるSNSとかを見ると、応援してくれているんだなって思います。同時に、アメリカ人が持つ日本人に対する固定観念も明かされますよね。コメディーって真実を見せてくれるんだけど、それが、笑いを通しているから吸収しやすい。アジア人女性がセックスの対象として客体化される傾向とか、弱い存在に見られたり、白人のパートナーのアクセサリーのように扱われたり。そういうことをおかしいって感じたら、何か言いたくなるんですよ。女性に対して、皆いちいちうるさいですよね。例えば、私は洋服が好きなので、気分によってガーリーな日もあれば、パンツスタイルの日もあるんですけど、男性が『今日の衣装は良かった』とか言ってくるんです。でもありがたいことに、私、女性のファンが多いんです。自分が面白いと思う人も女性が多いし、女性のまま、素のまま、自分を違うキャラにするとかじゃなくて、面白くしたい」

──軸を見つけるのに時間がかかったとおっしゃっていましたが、今はしっくりきていますか?

「今は自分を信じて、感謝の気持ちを忘れずに楽しく頑張ればうまくいく、って思えるようになりましたね。コメディーを通して自由に表現できるようになったのはうれしいです」

 

Interview & Text:Yumiko Sakuma Edit: Mariko Kimbara

Profile

ユリエ・コリンズ Yurié Collins 和歌山県生まれ。18歳で渡米し、エマーソン大学で演技を専攻。卒業後は俳優として『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』などのTVシリーズに出演。2021年よりコメディーの発信を始め、23年より東京を拠点にスタンドアップコメディアンとして活動開始。25年、「ニューヨーク・コメディー・フェスティバル」で「今注目すべきコメディアン」に選出された。今年2~3月に全国ツアーを、4~5月に東京のコメディアン仲間とともに北米ツアーを敢行し話題に。Instagram: @babypinkhaus TikTok: @babypinkhaus YouTube: @YurieCollins
 

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