
世界には多くの国立バレエ団があり、クラシックな演目からモダンなど幅広い演目を上演している。国立の舞踊団を名乗るだけあって、その国を代表する民族舞踊をレパートリーに入れる舞踊団も珍しくはない。そうした中でもスペイン国立バレエ団は、特にスペイン舞踊を中心に特色のあるレパートリーに力を入れてきた。日本での公演も数多く行われ、ファンの多いカンパニーだ。
そんなスペイン国立バレエ団出身のダンサーで構成されるダンスカンパニーLa VENIDERA(ラ・ベニデラ)は、スペイン舞踊の伝統を受け継ぎながら、新しい表現を模索している。

今回、カンパニーを構成するイレネ・テナとアルベルツ・エルナンデスの話題作『NO』が東京で上演される。バルセロナ出身、1990年代後半生まれの二人は、2016年にスペイン国立バレエ団へ入団。アルベルツは第一舞踊手(プリンシパルに相当)、イレネはソリストとして活躍した。マルコス・モラウが振付・演出を手がけた『Afanador』ではともにメインキャストを務め、2024年に同団を離れ、自らのカンパニーLa VENIDERAとして本格的な創作活動に入った。

La VENIDERAの話題作『NO』。二人がスペイン国立バレエ団を離れ、本格的な活動をスタートさせる作品のタイトルとしては、ネガティブなイメージもある。だが、La VENIDERAの「NO」が示すのは、単なる否定や拒絶ではない。既にあるものを一度取り払い、疑い、問い直すことで、まだ見たことのないものへ向かおうとする。スペイン舞踊やフラメンコを確かなルーツとしながら、コンテンポラリーダンスと交差する身体表現へ。伝統と現代性がぶつかり合う「摩擦」そのものが、彼らのクリエイションを生み出している。

La VENIDERAの世界を形づくるのはダンスだけではない。舞台上ではデレク・バン・デン・ブルケが電子機器による音楽をライブで生み出し、二人の身体と呼応。芸術監修には『Afanador』でもタッグを組んだマルコス・モラウ、フラメンコ音楽アドバイザーにはマルコ・フローレスが参加する。パオラ・ゴンザレスによる舞台美術、ガブリエラ・ビアンキの照明、SantaMartaの衣裳まで、視覚と音、身体がひとつの空間を構築していく。
『NO』では2026年のスペイン舞台芸術界を代表するPremios Maxで、最優秀ダンス作品賞、最優秀振付賞、最優秀女性ダンサー賞の3部門を受賞。そのほかにも、2025年にはエルメスのプロジェクト「Une nuit d’été」で振付・出演も担当するなど、舞踊の枠を越えて活動の幅を広げている。今回は、二人が出演する映画『ラ・アルヘンチーナ』も、上演される予定だ。
「NO」と言うことで、初めて見えてくるものがある。受け継いできた伝統を捨てるのではなく、問い直すことで次の時代へとつなげていく。La VENIDERAという名が意味するのは、“来たるもの”。その言葉通り、スペイン舞踊のこれからを予感させる二人の身体を目撃したい。
『NO』La VENIDERA 来日公演
日程/2026年9月18日(金)19:30、19日(土)17:00
会場/セシオン杉並ホール
振付・演出・出演/La VENIDERA(イレネ・テナ、アルベルツ・エルナンデス)
ライブ演奏・出演/デレク・バン・デン・ブルケ
芸術監修/マルコス・モラウ
料金/S席12,500円、A席9,800円、B席7,000円ほか
主催・制作/DESEADO(デセアード)
公式URL/https://deseado.tokyo
